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半袖シャツ派の代表格は羽生善治九段 夏場の棋士の姿

松本博文将棋ライター
(2005年、対局終了後の羽生善治現九段:撮影筆者)

 8月11日。日本シリーズJTプロ公式戦(JT杯)の1回戦で、三浦弘行九段と藤井聡太七段が対戦しました。JT杯は対局者が和服を着ることが恒例です。藤井七段は公式戦で初めて和服で対局に臨み、暑さのためか、何度も汗を拭いていました。

 将棋界では現在でも、大きな舞台では対局者は和服を着ることが多い。また将棋会館での普段の対局であっても、クールビズはあまり流行らず、ほとんどの棋士はネクタイにスーツ姿です。

 スーツの下のワイシャツが半袖という棋士は少数派です。その半袖派の代表格は羽生善治九段です。

2005年夏、羽生善治現九段(撮影筆者)
2005年夏、羽生善治現九段(撮影筆者)

 対局開始時にはジャケットを着ていても、終局時には脱いでいる、という場合もあります。

2005年夏、羽生善治現九段、対局開始時(撮影筆者)
2005年夏、羽生善治現九段、対局開始時(撮影筆者)
2005年夏、羽生善治現九段、終局時(撮影筆者)
2005年夏、羽生善治現九段、終局時(撮影筆者)

 こちらは若き日の渡辺明現三冠。

2005年、渡辺明現三冠(撮影筆者)
2005年、渡辺明現三冠(撮影筆者)

 2006年夏、四段になったばかりの中村太地現七段。

2006年、終局後の中村太地現七段(撮影筆者)
2006年、終局後の中村太地現七段(撮影筆者)

 最近の将棋界では、永瀬拓矢叡王が半袖シャツ派です。

 1995年の竜王戦挑戦者決定戦三番勝負は佐藤康光前竜王と先崎学六段の対戦でした(肩書はいずれも当時)。その第3局では、佐藤前竜王が和服の正装なのに対して、先崎六段はチノパンにカジュアルな半袖シャツ。好一対の両者の勝負は、佐藤前竜王が勝って、羽生竜王への挑戦権を獲得しています。

 2004年6月、B級1組2回戦・中川大輔七段-行方尚史七段戦(段位は当時)。筆者はネット中継を担当していました。

(撮影筆者)
(撮影筆者)

 朝のよくある対局開始時の光景からは、この後に起こることは想定できません。

 まずこの対局は深夜、持将棋になりました。その指し直し局が始まるところ。

(撮影筆者)
(撮影筆者)
中川大輔現八段(撮影筆者)
中川大輔現八段(撮影筆者)

 中川七段はネクタイをはずし、ワイシャツを脱いでいます。

 ここまでなら、まだ起こりうることです。そして持将棋指し直し局は、未明に千日手となりました。

 そして再指し直し局(3回目の対局)が終わったのは、朝9時15分のことでした。終局時の作業であわただしかったところ、そこにちょうど所用があって将棋会館を訪れていた藤田麻衣子さん(当時女流棋士)がいたので、カメラを渡し、対局室で写真を撮ってきてもらいました。

(撮影:藤田麻衣子)
(撮影:藤田麻衣子)
(行方尚史現八段(撮影:藤田麻衣子)
(行方尚史現八段(撮影:藤田麻衣子)

 中川七段はジャケットも脱ぎ捨て、アンダーシャツ1枚の姿でした。後にも先にも、筆者は棋士がアンダーシャツで対局していたのは、見たことがありません。普段はダンディな中川七段も、途中からは身なりに構っていられなくなった、ということでしょう。勝った行方七段も、ネクタイを脱ぎ捨てての激闘でした。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『あなたに指さる将棋の言葉』(セブン&アイ出版)など。

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