Yahoo!ニュース

王位戦七番勝負第3局 木村一基九段(46)が豊島将之王位(29)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 8月8日、9日。福岡市・大濠公園能楽堂でおこなわれた第60期王位戦七番勝負第3局は挑戦者の木村一基九段(46歳)が豊島将之王位(29歳)を降しました。木村九段は今シリーズ初勝利をあげ、1勝2敗としました。

画像

木村九段、棋風通りの手厚い受けで1勝を返す

 王位戦七番勝負とともに、竜王戦挑戦者決定戦三番勝負も戦うことになった両雄。

画像

 合わせて「十番勝負」は、これからが佳境と言えそうです。

 豊島王位2連勝の後で迎えた王位戦第3局。先手の豊島王位は矢倉の作戦を取りました。対して木村九段は堅さ重視の「金矢倉」(きんやぐら)ではなく、最近見られるようになった、バランス重視の構えを作りました。

 先攻したのは、先手の豊島王位でした。

「仕掛けが無理だったような感じですかね」

 局後に豊島王位はそう振り返っていました。セオリー通りの飛角銀桂の攻めですが、あるいは、木村九段の待ち受けるところだったかもしれません。木村九段自身はそれほど自信がなかったようですが、相手の攻めを跳ね返しながら、次第に自玉の上に厚みを築いていく、得意の展開に持ち込んだようにも見えました。

 2日目午後を迎えた時点では、木村九段の受けが奏功して、かなり優位に立ったと見られていました。

 しかし、そこから豊島王位がさすがの鋭さを見せ、猛然と追い上げていきます。大駒の飛車を渡すうちに、木村九段の玉を下段に押し込んで、あともうひと押しという形を作りました。

 受ける側にミスが出ればそれまでというところ。しかし、受けに定評のある木村九段は誤りません。丁寧に受け続け、上部から押さえつける豊島王位の攻撃陣を清算に持ち込み、再び中段に玉を逃げ出す形を得ました。

「最後、玉が安全になったので、少しよくなった」と感じたという木村九段。不敗の態勢を築き上げた後、満を持して反撃に転じます。豊島玉が収まる金銀3枚の堅い金矢倉は、見る間に形が崩され、受けが困難となりました。

 18時59分。攻防ともに見込みなしと見た豊島王位が投了を告げ、終局。総手数は112手でした。

 第2局では痛恨の逆転負けを喫した木村九段。後手番となった第3局で大きな1勝を返しました。

画像

 王位戦七番勝負第4局は8月20日・21日、兵庫県神戸市でおこなわれます。

 その前に、豊島名人・王位と木村九段は、8月13日、竜王戦挑戦者決定戦三番勝負第1局でも対戦します。

画像
将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

松本博文の最近の記事