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誕生日を迎えたばかりの藤井聡太七段(17)は史上最年少で八段、九段となれるか

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 2019年7月19日。藤井聡太七段が17回目の誕生日を迎えました。

 史上最年少の14歳2か月で四段に昇段し、棋士としてデビューして以来、藤井七段は数々の最年少記録を塗り替えつつあります。

 今後の可能性については、以下のような記事を書きました。

 藤井聡太七段はタイトル戦初登場・初獲得の史上最年少記録を更新できるか?

 https://news.yahoo.co.jp/byline/matsumotohirofumi/20190605-00128962/

 藤井聡太七段は史上最年少名人(20)となれるか?

 https://news.yahoo.co.jp/byline/matsumotohirofumi/20190618-00130561/

 16歳最後の昨日7月18日。藤井七段は王将戦二次予選1回戦、佐藤康光九段戦に勝ち、王将リーグ入りまであと2勝としています。

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 17歳となってほどなくの7月23日。竜王戦決勝トーナメント準々決勝では、豊島将之名人との大一番が予定されています。

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 以前記事を書いた時と、可能性という点では状況は変わっていませんが、改めて、タイトル戦最年少記録に関する可能性は、以下の表の通りとなります。

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段位に関する最年少記録

 本稿では段位に関する最年少記録について考察してみたいと思います。まずは、過去の記録からご覧ください。

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2005年、史上最年少の21歳で九段に昇段した渡辺明竜王(当時)
2005年、史上最年少の21歳で九段に昇段した渡辺明竜王(当時)

 藤井聡太七段、加藤一二三九段、谷川浩司九段、渡辺明三冠と、将棋界の各種最年少記録に関する常連の顔ぶれが並んでいます。これに羽生善治九段、中原誠16世名人が加われば、年少記録の9割方はカバーされるのではないでしょうか。

 段位の昇段基準については、かつては順位戦の昇級が基本でしたが、時代が下るにつれていくつかの条件が加わっています。藤井七段の六段、七段の最年少記録については、その点が幸いしていると言えるでしょう。

 今後の八段昇段(18歳3か月)、九段昇段(21歳7か月)の最年少記録についても、十分に更新の可能性が残されています。

史上最年少八段の可能性

 七段から八段への昇段の条件は以下の通りです。

(1)竜王位1期獲得

(2)タイトル2期獲得

(3)順位戦A級昇級

(4)七段昇段後公式戦190勝

 まず(3)順位戦A級昇級についてはどうでしょうか。加藤一二三現九段の18歳3か月でのA級八段は、改めて、目がくらむような大記録です。

 藤井七段は順位戦では現在C級1組所属。B級2組、B級1組を経て、A級に昇級するには、最短でもこれから3期かかります。2021年度末(2022年3月)にB級1組昇級を決めた時点での即日昇段で、19歳7ヶ月か8ヶ月ぐらいです。

 実は加藤一二三九段の18歳3か月でのA級八段という最年少記録は、藤井現七段が四段にデビューした時点で、既に更新不可能でした。藤井七段で更新できないとなれば、空前にして絶後の記録となる可能性も高そうです。

 順位戦以外の八段昇段条件を見てみましょう。

 2019年7月19日現在の藤井聡太七段の通算成績は131勝22敗(勝率0.856)です。

 史上最高の驚異的なハイペースで白星を重ねている藤井七段も(4)七段昇段後公式戦190勝を達成するのは、まだまだ先の話です。2018年度は45勝ですが、それだけのペースで勝ち続けてもちょうど4年かかることになります。

 最短の可能性は(1)竜王位1期です。今期竜王戦で挑戦者となって、七番勝負の舞台に立つと、10月11日の第1局の時点で17歳2か月。仮に第7局2日目の12月19日に竜王位獲得となれば、17歳5か月での八段昇段となります。

 あるいは(2)タイトル2期という条件でももちろん、可能性はあります。

 可能性だけを言えば(本稿はこればかりですが)来年2020年度の王座戦五番勝負あたりが、八段昇段の年少記録に関しては、タイムリミットとなりそうです。

史上最年少九段の可能性

 八段から九段に昇段する条件は以下の通りです。

(A)竜王位2期獲得

(B)名人位1期獲得

(C)タイトル3期獲得

(D)八段昇段後公式戦250勝

 渡辺明現三冠の21歳7か月で九段昇段という記録は(A)竜王位2期獲得の条件を満たしたことによるものです。

 最短の可能性だけを考えれば、これから竜王、王将、叡王と取っていけば(C)タイトル3期獲得の条件を満たして、17歳のうちに九段となります。

 (B)名人位1期獲得は最短で20歳です。

 九段となると、まだまだ先の話のような気もしますが、気がつけばもう・・・ということもありうるかも知れません。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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