女性リーダー育成のヒント 女性に多い“潜在的リーダー”と多様なリーダー像

(写真:アフロ)

男女格差の大きい日本

 先日、3月8日は国際女性デーでした。国連が1975年に、”女性の地位向上や権利を守る日”として制定し、一部の国では祝日になっています。女性の地位向上で思い出されるのは、昨年12月に世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップランキング。日本は153カ国中121位という過去最低の結果となり、日本の男女格差が依然として問題であることが浮き彫りになりました。

 ジェンダーギャップの項目は、「経済」「教育」「保健」「政治」4つのカテゴリーについて指数化されて順位がつきます。出生や健康寿命の偏りから測られる「保健」や識字率や教育の浸透率で見る「教育」は順位が高いのですが、議員や国家代表の女性の数、労働力、給与格差など「政治」「経済」はともに男女差が大きいことで順位を落としています。

リーダー意識の男女差とは

 「経済」の中でも幹部・管理職の比率は、女性管理職3割という目標の下、各企業で推進されていると同時に、企業の課題であるという話もよく聞きます。キャリアを持つ働く女性”キャリジョ”を研究し続けているので、今回は調査結果なども基に、女性リーダー育成へのヒントを考えてみたいと思います。

 博報堂キャリジョ研で20~30代の働く男女に行った2回の調査では、確かに、マネージャーやリーダーのいずれかになりたいかどうかで、男性より女性の方が17ポイントも「なりたくない」が高い結果となっています。まず、モチベーションの違いがあり、その理由につながることとして、中原淳氏の著書では、男性が報酬や裁量など「何が得られるか(Give me!)」で昇進を受け入れるのに対して、女性は「なぜ私なのか(Why me?)」を気にするという話があり、女性の方がより自分の能力や評価との適切性を意識する面があることが示されています。この点は、男女の自信の差で語られることも多いのですが、女性は自分の能力への不安が大きいのではないかと思います。

博報堂キャリジョ研「リーダー意識に関する調査」(2019)
博報堂キャリジョ研「リーダー意識に関する調査」(2019)

実は女性の方が身につけている“潜在リーダー”資質

 同調査で「普段の生活で現在行っていることや、これまで行ってきたこと」についても聞いてみました。ここでは敢えて「幹事や役員、調整などのまとめること」「教育、アドバイス、人への頼み事など人との関係を築くこと」を選択肢に含めたのですが、男女全体の比較で女性の方が全般的にいろいろなことを行っていることがわかりました。

 さらに、男女ともに人を評価する立場であるいわゆる”管理職”の男女で全体よりも高い実施項目(下記グラフのピンク7項目)でも見比べてみましたが、いずれも女性の実施率は男性と同等、もしくは高いスコアでした。こうして “潜在的リーダー”として、日常でもいろいろな役割をこなしている女性たちは自信を持ってよいと思いますし、内心「仕方なくやっている」ケースも多いかもしれませんが、せっかくのその経験をポジティブに捉え、仕事や社会活動へ転用していける可能性をもっと考えていければよいのではないかと感じます。

博報堂キャリジョ研「リーダー意識に関する調査」(2019)
博報堂キャリジョ研「リーダー意識に関する調査」(2019)

求められるリーダー像の多様性

 また、男女別で理想のリーダー像についても聴取したのですが、結果としては、男女で大きな違いはありませんでした。これは反対に見ると、抱いているリーダー像が同じであり、これまでのリーダーは男性が多い中で、「同じことをしなければならない」ことが難しいと感じる女性が多かったことの裏返しかもしれません。そして、そのことは時代の移り変わりとともに、仕事と育児の両立は男性にも課されているので、未来のリーダーとなる年代の男性にとっても同じくハードルとなり得ることではないでしょうか。

 最近は引っ張っていくリーダー像だけでなく、後ろから見守るリーダー像も提唱され、一つの像を目指さなくてもよいことも言われ始めています。しかし、まだ多様なリーダー像については考え尽くされてはいないように思いますので、たとえば、下記のようなリーダー像もあるのではないか考えています。

出典:筆者作成
出典:筆者作成

 各リーダー像はリーダー自身の仕事の興味領域や、性格などとの相性があり、さらにはどれにも短所に見える面もあると思います。一例ですが、ビジョナリーリーダーは、大きなビジョンの実現に向けた細かいプロセスなどを練る参謀がいた方がいいかもしれませんし、ピースフルリーダーだと、みんなの合意がうまく取れない時に、「うまくまとめられない」印象を持つ人もいるかもしれません。スマートリーダーは、ちょっと冷たく見えるときもあり、アクティブリーダーは、明示的に指導してくれない不満を抱える部下が出てくるかもしれないです。短所があるのが悪いのではなく、”完璧なリーダー”を求め過ぎずに、特性に合わせてサポートしやすいチーム員をうまく組んだり、特性を把握した上で付き合えたら理想的ではないでしょうか。多様性社会の中、個人の性格や適性に合わせて、一つの像のイメージや能力に縛られすぎず、男女の垣根を超えたリーダーの多様性も求められるようになってきていますし、今後も引き続き考えていきたいと思います。

(参考)中原淳/トーマツ イノベーション著

『女性の視点で見直す人材育成――だれもが働きやすい「最高の職場」をつくる』(ダイヤモンド社)