流行語にもノミネート 「シンデレラ」は魔法の言葉

(写真:アフロ)

流行語でも使われる“シンデレラ”という言葉

 先日、新語・流行語大賞のノミネート語が発表されました。もうそんな時期が来たんだなと思うとともに、ふっとある言葉が目に留まりました。

“スマイリング・シンデレラ”。

 最初この言葉にピンと来なかったので調べたのですが、全英女子オープンで大活躍をした渋野日向子さんの愛称でした。笑顔が印象的だったので“スマイリング”なのは分かりますが、“シンデレラ”はどういう意味でしょうか?

“シンデレラ”=女性の成功物語

 前々から密かに注目をしていたのですが、“シンデレラ”という言葉はいろいろな場面で使われています。元々は童話“シンデレラ”から来て、継母や義姉にいじめられていた主人公のシンデレラが、魔法で変身して参加した舞踏会で王子様と出会い、0時で魔法が解ける前に慌てて戻るときに忘れたガラスの靴が、ピッタリ合ったことで迎えに来てくれた王子様と結ばれる、という有名なお話です。“スマイリング・シンデレラ”は、おそらく女性が成功を収めることを“シンデレラ・ストーリー”と表現する場合と同じで、優勝を果たしたというサクセスエピソードを称えた言葉なのだと思います。

 ただし、先ほど数行でまとめた話のどこを切り取るかで、“シンデレラ”は多様に使われることになります。

“シンデレラ”のつく言葉のあれこれ

 断捨離ブーム以降、住環境への関心が高まり、使いやすい整理・収納術が多く紹介されるようになりました。その際に、棚や箱の中にさらに箱やケースを入れて仕切りを作り、すっきりと統一感を持って収納できるとき、その収納専用に作られたわけではないのにピッタリと入ることを“シンデレラ・フィット”と言います。これはガラスの靴がピッタリ合ったという話から来ている言葉で、違う使われ方の一つです。

 また、東京大学で久保友香さんが研究されている“シンデレラ・テクノロジー”というものがあります。女性が自身をよりよく見せ、充実した生活や自己実現を叶えるための技術のことを指し、写真の加工なども含まれるようです。ネーミングを考える際も工夫をされたようで、現代の女性は男性向けに変身するわけではないが、世界共通で分かりやすいということで“シンデレラ”という言葉を選んだと語られています。ここでは、魔法によって“素敵に変身する”様を言葉に込めたことが分かります。

 夜の10時~2時の間に寝ると、成長ホルモンが分泌され、美容にいいということでその時間帯を“シンデレラ・タイム”ということもあります。この場合は、0時に魔法が解けるので、その前後の時間ということと、“美しくなれる時間”という先ほどと同じく変身の意味の両方を表しているのでしょう。

 ちょっと捻った使い方として、“シンデレラ・サイズ”という言葉もあります。婦人用の靴の小さいサイズ(22cm以下)のことを差します。この話は、グリム童話などシンデレラのバリエーションの中で、ガラスの靴が合わなかった義姉たちが足を切るという話があることから、“シンデレラは足が小さかった”という推測から来ているそうです。このシンデレラには、“小さい”という意味が含まれます。

 “シンデレラ・コンプレックス”という言葉は、白馬の王子様が迎えに来てくれ、自分を変えてくれることを夢見る女性の依存的な願望のことを名づけたもので、「シンデレラを探して王子様が来てくれ、幸せになる」という部分から来ています。王子様が探しに来ることを待っている受身であり、特にシンデレラ自身の積極的な努力があったわけではないので、ややネガティブな意味で使われています。

キーワードの持つ魔力

 同じ言葉でここまで異なる意味があるのは珍しいように思いますが、昔からある童話で、世界的に有名なため、物語のどの部分を切り取っても誰もが納得しやすいことから、暗喩として使われることが多いのでしょう。さらに、“シンデレラ”という言葉が基本的には女性にとって感情的にポジティブな含みを持っていることも理由ではないかと考えます。

 サクセス・ストーリーの代名詞であることもそうですが、 “ジャスト・フィット”を“シンデレラ・フィット”と言うと、ガラスの靴がピッタリはまったときのうれしさや感動を表した言葉になっていると感じます。また、シンデレラ・サイズに関しても、小さ過ぎて適切なモノが見つけにくく、本人は気にしているコンプレックスを少し肯定的に捉えられる言葉にしてくれている気がします。最後にご紹介したシンデレラ・コンプレックスは、意味は批判的な側面がありますが、”シンデレラ・コンプレックス”という言葉が持つ響き自体は、あまり悪い感じがしないのではないでしょうか。そういう意味で、”シンデレラ”は素敵に見せる魔法の言葉だと思います。

 同じことでもキーワードをどのように設定するかで、伝わりやすくなり、印象まで変わってきます。新しい言葉はどんどん作られてくるので、新しい“シンデレラ”の使い方や、“シンデレラ”に代わるくらい多用される言葉が登場するのか、今後も注目していきたいところです。

(参考)

https://www.jscore.co.jp/column/interview/2018/kubo01/