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穀物メジャーが食料価格高騰で増益・資産急増~世界経済のグロテスクな失敗例等の批判相次ぐ

松平尚也農業ジャーナリスト、龍谷大学兼任講師、AMネット代表理事。
世界最大の穀物メジャー・米国カーギル(写真:ロイター/アフロ)

 ロシア・ウクライナ戦争により世界の食料価格が高騰する一方で穀物メジャーが増益し資産を急増させている。両国が穀物の主要輸出国であったため、世界の食料価格は過去最高を記録しており、低所得の食料輸入国に大きな打撃を与えている。世界の農産物貿易はこの20年、急拡大してきたが今回の戦争によりその限界と矛盾が明らかになり始めている。

 世界で主要な穀物の買付から集荷、輸送、保管までを手がける大手商社は「穀物メジャー」と呼ばれる。米国や欧州に本社を置く上位4社の穀物メジャーが世界の穀物取引の約8割を占め、世界の穀物流通に大きな影響力を持つ。その一方で、穀物価格高騰により世界で食料不足や飢餓が拡大するという矛盾が起こっていることに対して世界で批判の声が大きくなっている。

  世界経済のグロテスクな失敗例

 イギリスの起業家で、不平等を解消するために世界の富裕層に富裕税を導入するキャンペーンを行っている団体Patriotic Millionaires UKの創設メンバーであるGemma McGough氏は、穀物メジャーの資産の増加は「世界経済のグロテスクな失敗」の新たな例であると指摘する(※1)。

 同氏はさらに「私たちは複数の危機に直面しており、飢餓や食料貧困が拡大し、一部の富裕層が高騰するのを、各国政府が傍観し続けるべきではありません。富裕層に課税し、経済のバランスを調整すること、そして現在食糧を供給できない何百万もの家庭を支援できるシステムに投資することが不可欠」と述べる(※1)。

 では実際、穀物メジャーは、ロシア・ウクライナ戦争後、どのような状況にあるのだろうか。本記事では、最近相次いで発表された穀物メジャーの事業状況について簡単に概観する。

 穀物商社ブンゲは、4月27日、第1・四半期決算がロシアのウクライナ侵攻後の穀物需要拡大を受けて、約2割増益する見通し発表した(※2)。

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農業ジャーナリスト、龍谷大学兼任講師、AMネット代表理事。

農・食・地域の未来を視点に情報発信する農業ジャーナリスト。龍谷大学兼任講師。京都大学農学研究科に在籍し国内外の農業や食料について研究。農場「耕し歌ふぁーむ」では地域の風土に育まれてきた伝統野菜の宅配を行ってきた。ヤフーニュースでは、農業経験から農や食について語る。NPO法人AMネットではグローバルな農業問題や市民社会論について分析する。有料記事「農家ジャーナリストが耕す「持続可能な食と農」の未来」配信中。メディア出演歴「正義のミカタ」「めざましテレビ」等。記事等に関する連絡先:kurodaira1974@gmail.com(お急ぎの方は連絡先をご教示くだされば返信します)。

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