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なでしこジャパンがアジアカップで快勝スタート。強豪が待ち受けるノックアウトステージへの課題も

松原渓スポーツジャーナリスト
初戦で快勝したなでしこジャパン(写真提供:AFC)

 インドで行われているAFC女子アジアカップ初戦で、なでしこジャパンが5-0でミャンマーを下し、幸先の良いスタートを切った。新体制になって初の公式大会で、期待に応える船出を果たした。

 世界ランクは13位の日本に対し、ミャンマーは47位。コロナ禍に政情不安が重なり、今大会に向けてのチーム作りも難航したようだ。それでも、試合前には選手たちがピッチに向かって両手を合わせて祈り、最後までひたむきにゴールを守る姿に、敵ながら心を動かされた。

 ただ、力の差は歴然としていた。試合は90分間、日本が試合を支配するハーフコートゲームで、ミャンマーのシュート数をゼロに抑えている。

 池田ジャパンの“初得点”は、前半22分に生まれた。GK山下杏也加が、右サイドを全力で駆け上がったMF長谷川唯に正確なロングキックを合わせる。そして、長谷川が上げたピンポイントクロスを、ゴール前でファーサイドに走り込んだFW植木理子が得意のヘディングで叩き込んだ。ゴール前ではFW田中美南も走り込んで相手を引きつけ、ゴールをお膳立て。複数の選手の意図と個々の特徴が美しくシンクロしたビューティフルゴールだった。

 2点目を決めるまでは苦労したが、後半、長谷川がサイドから前線にポジションを移し、左サイドにMF遠藤純が入ると攻撃の糸口が開けた。47分にはワンタッチパスで中央をエレガントに崩し、長谷川が2点目を流し込む。52分にMF猶本光が得意の直接フリーキックを沈めて試合を決定づける。70分には右サイドを崩し、交代で入ったMF成宮唯が難しい角度から左足でサイドネットを撃ち抜いた。アディショナルタイムには長谷川が相手GKの脇を抜く技ありゴールで締めくくった。

 植木と猶本と成宮は代表初ゴールを記録。途中から入った選手たちの活躍もチームの士気を高めるポジティブな要素になる。

 チーム発足から大会まで3カ月と準備期間が短かったこともあり、池田太監督は10月の合宿からメンバーをほぼ固定している。その中で、近いポジションに同じクラブや代表経験のある選手たちのホットラインを配置。美しい流れから決まった4つのゴールは、その確立された連係から生まれた。メンバーを固定すれば対戦相手に研究されやすくなるが、日本は流動的にポジションを変えながら戦える選手が多く、それは他国にはない強みだろう。

 とはいえ、内容的にはスコア通りのスッキリとした快勝とは言い難かった。日本が優位に進めることは想定内だったが、前半は19本のシュートを打ちながら、枠内シュートはわずか「3」にとどまった。

 池田監督が掲げるコンセプトは「ボールを奪う」ことから始まるが、「攻撃のバリエーションを増やすこと」も、今大会の一大テーマとなっている。FWのみならず他のポジションの選手たちもシュートの意識を高め、長距離からのシュートが増えたことは大きな変化だが、コンビネーションの引き出しを増やさなければ、先は厳しそうだ。

 優勝争いの最大の難敵であるオーストラリア(世界ランク11位)は、初戦でインドネシア(94位)に18-0と容赦なく大勝。エースのFWサマンサ・カーを中心に攻撃のパターンが確立されていて、パススピードが速く、相手に思考の余地を与えないサッカーは脅威だ。

 オーストラリアに比べて、日本は決定力の低さが課題だが、攻撃の質を高めてシュート数を増やすことができれば、勝利の可能性は高まる。

 だからこそ、優位に立てる試合では攻守のバランスを考えながらも積極的にチャレンジして、成長のための足がかりを得たい。

 中2日で24日に対戦する次の相手は、世界ランク32位のベトナム。初戦は韓国に0-3で敗れたが、マンツーマンの守備で粘り強く体を張り、隙さえあればカウンターからの一発を虎視眈々と狙っていた。日本はその守備の網に捕まらないようなポジショニングやコンビネーションプレーで、前半から得点を重ねられるか。

長谷川唯(写真提供:AFC)
長谷川唯(写真提供:AFC)

 2ゴール1アシストでミャンマー戦のMVPに選ばれた長谷川は、「相手の体力があってどんどん寄せてくる(早い時間帯の)中でも、後半のようなコンビネーションをどんどん使えば前半からもっと点が取れると思うので、そこを意識したいと思います」と、更なるゴール量産を目指す。

 新生チームの本領が試されるのはここからだ。

 この試合で掴んだ勢いをベトナム戦でさらに上積みし、優勝に向けた大きな推進力を掴みたい。

 第2戦のベトナム戦は、日本時間の1月24日、23時キックオフ。DAZNで生中継される。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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