「ここに入りたくても入れなかったメンバーもいますし、チームのために動いてくれている人たちのためにも、全身全霊をかけて戦うことを心がけて入ったのですが……この結果になってしまい、本当に悔しいです」

 7月30日。なでしこジャパンが準々決勝でスウェーデンに1-3で敗れた試合後、目を赤くしたまま取材エリアに現れたDF清水梨紗は、諦めきれないような表情でそう語った。

 中2日の過密日程の中、高倉麻子監督はメンバーをローテーションしながら戦ったが、センターバックでキャプテンのDF熊谷紗希と清水の2人は、4試合をフル出場で戦い抜いた。持久力を求められるサイドバックのポジションで、替えが利かない重責を担っていることを、清水自身も自覚していただろう。それでも、27日のチリ戦の後には、「中2日で3試合をしたのは初めての経験で、コンディションの部分は一番難しく感じるところです」と、こぼした。だが、スウェーデン戦のパフォーマンスは、疲労を感じさせるどころか、むしろ研ぎ澄まされているように見えた。

 グループステージはチームとして低調な内容が続き、「勝ちたい気持ちが伝わってこない」という厳しい声もあった。チリ戦の後、そうした言葉をどう受け止めているのかを聞くと、清水は「毎試合、目の前の試合にすべてをかけて戦っていますが、その思いを見てくれる方たちにもっと伝えることが、絶対に必要だと思います」と、語気を強めた。

 初戦のカナダ戦は、チームとしての守備がうまくはまらず、立ち上がりの5分に失点。その後は慎重になり、連動した攻撃や、清水自身も持ち前のスピードを生かした攻め上がりが少なかった。

「自分が上がることで相手のサイドハーフの位置を下げることもできるので、その駆け引きを楽しみながら戦います」。心に余裕を持って臨んだ2戦目のイギリス戦では、サイドハーフで縦の関係を組んだMF塩越柚歩との連係プレーで、ドリブルで強引に仕掛けてくるFWローレン・ヘンプを食い止めた。緻密なポジショニングで相手のサイド攻撃を牽制し、攻撃参加の回数も増えた。

 3戦目のチリ戦では、クラブや代表で10年以上プレーを共にしてきたMF長谷川唯と右サイドを組み、阿吽の呼吸でサイドを活性化。なかなかゴールが生まれなかったが、77分、FW田中美南がゴールを決めると、真っ先に田中に飛びついて全身で喜びを表現した。

 そしてスウェーデン戦では、長谷川とのコンビネーションから田中の先制点の起点となった。失点にも絡んだが、最後まで諦めずにゴールを目指す気迫は、遠く離れたスタンドまで伝わってきた。

イギリスのローレン・ヘンプとマッチアップした
イギリスのローレン・ヘンプとマッチアップした写真:ロイター/アフロ

【リーダーたちから学んだこと】

 25歳の清水は、東京五輪に出場した今回のチームでは中堅に当たる年齢で、18年のアジアカップ以降、右サイドバックのレギュラーに定着。左サイドはメンバーの入れ替わりもあったが、右は不動だった。

 塩越が、今年6月のウクライナ戦で2ゴールの鮮烈代表デビューを飾った際、右サイドでスムーズに試合に入れた理由をこう話していた。

「(清水)梨紗さんは練習からいろいろと声をかけてくれるのですが、試合の中でも(自分が)外に開いたり、絞るタイミングを細かく伝えてくれていたので、その通りに動いて、良いコンビネーションでゴール前までいけるシーンを作ることができました」

 塩越は今大会、2試合に先発し存在感を示した。その積極的なプレーを支えていたのも清水だ。

 右サイドで縦の関係を組む選手は大会や試合ごとに変化してきたが、誰と組んでもぎこちなさを感じさせない。そのことについて昨年10月に聞いたとき、10代の頃はどこかふわりとした雰囲気のあった清水が、熱く、責任感の強いリーダーになっていることを実感した。

「自分が(縦で)組んだり、近くでプレーする選手にはよく声をかけるようにしています。その中で、自分が思ったことはなんでも伝えるようにしていますけど、相手が考えていることや意見を知ることもすごく大事だと感じます。(普段)同じチームでサッカーをしているわけではないので、自分のサッカー観を押し付けるのではなく、相手のサッカー観を取り入れることがすごく大事だと思っていて、それは代表活動の中でずっと感じてきたことです」

 所属する日テレ・東京ヴェルディベレーザでは、2季連続キャプテンを務めている。代表やベレーザで、清水はいろいろなタイプのリーダーを見てきた。影響を受けた選手は一人ではない。

「同じチームの岩清水(梓)さんや、(元チームメートの)有吉(佐織)さんや阪口(夢穂)さんはずっと一緒にプレーしてきましたし、(代表で一緒にプレーしてきた)サメ(鮫島彩)さんからもいろんな話を聞いてきた中で、『自分はこういうふうにしていきたい』というものがちょっとずつ見え始めているんです。だから、その先輩方に感謝して、(代表選手としての思いを)引き継ぎたいという気持ちが強くあります」

 スウェーデン戦を終えて清水が語った悔しさには、長く代表チームを支えながら、今大会の最終メンバーからは外れた鮫島のことも頭にあったのかもしれない。

 この悔しさを取り返すことができるのは、2年後のW杯だ。

「大会を通して、世界のサイドハーフがレベルアップしていると感じましたし、そこを自分が止めるか止めないかが勝敗に関わってくると感じました。対人能力はもっと上げていかなければいけないですし、チームとしてもさらに積み上げていく必要があります」

 清水は9月に始まる女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」でプレーする。今大会の悔しさをバネに、2年後のW杯に向けてWEリーグでプロ選手として活躍し、ベレーザのリーダーとしても戦う気持ちを全身で表現する清水のプレーを観に行きたいと思う。

写真:ロイター/アフロ