ヤングなでしこ、U-20女子W杯に向けたラストステップ。「プレー強度」を高めて世界一を目指す

個々が成長し、チームも1段階レベルアップした(写真:keimatsubara)

【チーム作りは最終段階へ】

 U-20日本女子代表、通称「ヤングなでしこ」が、10月18日から千葉県の高円宮記念夢フィールドで5日間のトレーニングキャンプを行った。

 2021年1月20日にコスタリカ共和国で開幕が予定されているU-20女子W杯に向けて、チーム作りは大詰めだ。9月中旬に福島県のJヴィレッジで5日間のキャンプを行っており、1カ月足らずでの再集合となった。前回の合宿から、新たにGK大場朱羽(JFAアカデミー福島)、MF加藤もも(NGUラブリッジ名古屋)、DF松田紫野、MF菅野奏音、MF木下桃香(ともに日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の5名が合流。昨年のAFC U-19女子選手権(U-20女子W杯アジア予選)を戦った主力が揃い、前回の合宿の確認と、大会に向けた積み上げを目指した。

参照記事:U-20女子W杯に向けて高まる一体感。アジア王者として大会2連覇を目指す「ヤングなでしこ」の強みとは

 池田太監督は、今回の合宿のテーマとして次の点を挙げた。

「自分たちが今までやってきたプレーの強度を上げていくことがテーマです。特にディフェンス面で、世界と戦うために日頃感じている強度の基準を上げていこうと伝えました。また、チームとして相手からボールを奪うためにどのようなプレスのかけ方をするかを整理したいと思っています」

 今回参加した26名中、昨年のアジア予選の優勝メンバーが20名と大半を占めており、チームの土台はほぼ出来上がっている。攻撃のバリエーションは多く、相手陣内の高い位置でボールを奪うことができれば得点のチャンスは広がる。

 だが、W杯で戦う相手はアジアとは違って身体能力の高い選手も多いため、ラインを上げれば、日本の最終ラインの裏に生まれるスペースを確実に狙ってくるだろう。守備の強度を上げることは、そうしたリスクやカウンターのピンチを減らすことにつながる。

 トレーニングでは、守備のスイッチを入れやすくするために「声の強度を上げる」ことも強調されていた。そして、4日目に行われた東海大学付属高輪台高校男子サッカー部とのトレーニングマッチで、ヤングなでしこはその成果を発揮した。

【チャレンジの成果】

 トレーニングマッチは25分×4本で行われた。自分たちよりも体が一回り大きくパワーのある男子選手相手に、立ち上がりは強く当たりにいって弾き飛ばされるシーンも見られた。しかし、DF高橋はな(浦和レッズレディース)を中心に声を掛け合って粘り強く守り、ボランチの菅野奏音が持ち前の正確なボールコントロールでゲームを落ち着かせる。8分にはボランチのMF中尾萌々(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)が枠上ギリギリを狙ったミドルシュートを放つなど見せ場も作ったが、0-0で終了。

 

 5人を替えて臨んだ2本目も、守備に回る時間は長かったが、徐々に相手のプレッシャーの強度に慣れ、攻勢に転じていった。ロングボールに対しては高橋とDF大熊環(千葉)のツインタワー(ともに169cm)が強さを見せ、攻撃では左サイドハーフのMF伊藤彩羅(ベレーザ)が鋭い出足でボールを奪い、ショートカウンターで流れを引き寄せていた。トップのFW大澤春花(千葉)と右サイドハーフの加藤ももが流動的にポジションを入れ替え、10分には大澤、19分には加藤のシュートが枠を捉えたが、いずれも相手GKの守備範囲だった。

 7人を入れ替えて臨んだ3本目も得点は決まらなかったが、いくつかのファインプレーが印象に残った。

 まず、ボールに食らいつくような強度の高い守備が光っていたのが、3本連続で出場していた大澤だ。「相手が強く、最初は相手のスピードについていくのが精一杯だったのですが、2、3本目からは慣れて、しっかり相手について行けるようになりました」と話すように、一度かわされても二度、三度と粘り強い対応を見せた。

 攻撃面では、木下桃香のドリブルが利いていた。木下はこのチームでは最年少の17歳だが、所属のベレーザでは今季、レギュラーメンバーの一人として、仕掛けるプレーに磨きをかけている。そのドリブルのポイントについて、木下は「自分の間合いに持っていくことも大切にしていますが、相手が速い選手だったら中に切り込んでいくとか、相手の特徴によって仕掛け方を変えるようにしています」と明かしてくれた。

 守備陣の奮闘も光った。7分にはコーナーから相手のシュートがゴール右隅を捉えたが、センターバックのDF後藤若葉(早稲田大)が体を張ってゴールライン上でクリアする。20分には左サイドをドリブルで突破され、ループシュートが枠を捉えたが、これは右サイドバックのDF田畑晴菜(セレッソ大阪堺レディース)が体を投げ出してゴールライン上でブロック。2度のファインプレーでピンチを切り抜けると、待望のゴールは4本目に生まれた。

 4本目は8人を入れ替えて臨み、前線からの守備が活性化した。5分、相手陣内で木下がボールを奪うと、木下のパスを受けたFW島田芽依(浦和レッズレディースユース)が左隅に鋭いシュートを決めて先制。狙い通りの形から生まれた待望のゴールだったが、その後、9分に左から崩されて決められて同点にされると、17分にも右サイドをドリブルで振り切られて逆転を許す。大場朱羽のファインセーブもあり、さらなる追加点は許さなかったが、追加点を奪うことはできず、1-2で敗れた。

 ロングボールで崩されたり、クロスに対して自陣ゴール前で相手をフリーにするような場面はほとんどなかったが、相手選手の斜めの動きやドリブルに対してマークがズレたり、判断が遅れてフリーでクロスを上げられることがあった。前回大会準優勝のスペインのように、組織力と個の力を備えた国はそうした攻撃をしてくる可能性もあるため、対応できるようにしておきたい。

 とはいえ、結果的に打たれたシュート数はそれほど多くなく、今回の東海大学付属高輪台高校のレベルの高さを考えれば、むしろポジティブな面の方が目を引いた。フォーメーションは4本とも4-4-2だったが、GK、2トップ、ダブルボランチ、センターバックの組み合わせはすべて違い、複数のポジションでプレーした選手もいた。そして、いずれの組み合わせでも前線からの守備は破綻をきたすことなく、一定の強度を保った上で、各自が状況に応じたプレーができていた。

【新たなステージで積んだ経験値】

 U-20W杯は当初、今年の8月に予定されていたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で約半年間延期され、3月に予定されていたU-20ドイツ代表との親善試合も中止になるなど、チームにとっては先が見えない不安な時期も長かった。また、この間に大学生や社会人になって生活が変化したり、所属チームが変わった選手もいる。そうした環境の変化や、思うように練習ができない中でも、着実に力をつけてきた選手が少なくない。

 池田監督も「なでしこリーグや大学リーグ、高校年代のU-18での試合を通しての経験値と、体の使い方(などの技術)は上がってきたと思います」と、個々の成長に手応えを得ているようだ。

 これまでは、2018年の前回U-20W杯優勝メンバーの一人で、今季なでしこリーグ1部で首位を走る浦和でプレーする高橋の経験値が頭一つ抜けている印象だったが、その高橋に続けとばかり、他の選手たちもそれぞれのチームで実績を積んでいる。

 DF水野蕗奈(INAC神戸レオネッサ)は、シーズン途中からINACのレギュラーに定着。サイドを切り裂くスピードと思い切りの良いプレーが印象的だ。ゴールも決めており、「自分のやりたいことに対して自信が持てるようになって、思いきりプレーできるようになりました」と明るい表情で語った。ヤングなでしこではレギュラー定着には至っていないが、その進化をチームに生かすことができれば頼もしい。

 また、アジア予選では司令塔としてチームを牽引した菅野も、木下とともに、今季はベレーザでコンスタントに出場機会を得ている。MF長谷川唯やMF三浦成美といった代表選手たちと中盤を形成しており、チームメートには前回大会優勝メンバーも4人いる。

「U-17からU-20にカテゴリーが変わり、海外の選手はパワーやスピードが大きくパワーアップしていると思いますが、自分たちはパスをつないで、いろんな選手がボールに関わるサッカーをしています。それを世界でも継続してやっていきたいですね」(菅野)

 昨年、このチームがU-19代表として立ち上がった際に選手たちが決めた目標には、「U-20W杯優勝」とともに、「世界に通じる選手、なでしこジャパンで活躍する選手になる」ことも含まれていた。

 本大会まであと2カ月。今大会でどんなニューヒロインが生まれるのか、期待している。

監督・選手コメント

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 最終日の22日に、参加選手1名から新型コロナウイルスの陽性反応が認められたことが、当日発表された。合宿初日の集合時の検査では全員が陰性だったが、解散前の検査において1名の陽性が判明した。同選手は無症状で発熱等の体調不良もなく、今後は保健所の指示に従って療養することになるという。同選手以外の検査結果は全員陰性で、体調不良等を訴える者の報告もないとのことだが、今後、同じような事例が出ないことを祈るばかりだ。この件に関しては、引き続き、今後の経過を見守っていきたい。