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Jリーグに続いて、なでしこリーグは7月18日開幕! 感染症対応ガイドラインも公表に

松原渓スポーツジャーナリスト
開幕から2試合は無観客試合が決定している(写真:田村翔/アフロスポーツ)

【スタジアム観戦の指標】

 6月2日、新型コロナウイルス感染症の影響で延期されていた2020プレナスなでしこリーグ1部と2部のリーグ開幕が、7月18日と発表された。

 開幕から2試合は無観客試合が決定しており、3節以降は感染拡大状況などに応じて決定される。また、3部にあたるチャレンジリーグは8月22日に開幕する。

 また、公式戦の再開に際して、「日本女子サッカーリーグ 新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」が公表された。

 ガイドラインは全10ページで、安全対策の基本方針は、「個人防衛」「集団防衛」「社会防衛」の見地から、リーグは「選手、スタッフ」を守る、ファン、サポーターを守る、日本のスポーツ文化を守るという視点で対策・対応を考えていく。

 そして、選手や関係者が感染を避ける上で気をつけるポイントと対策、試合開催の判断基準、観客への対応などが項目別に書かれている。

 たとえば、選手やチームスタッフの感染予防策だけでも15項目が挙げられている。

 毎日の検温の他、食欲や睡眠時間など、健康チェックと行動記録をつけること。ミーティングはなるべく屋外で行うことや、移動中のマスク着用、「ロッカー室やシャワー室の時間差利用」「ポジションが同じ選手が可能な限り行動を共にしない」ことなどが推奨される。

 スタジアムで応援したいファン、サポーターにとって気になるのは「6.試合開催における基本方針」だろう。

 前述したように、開幕から2試合目までは無観客での開催が決まっており、その際は運営スタッフも含めて最小限の人数で試合を行うことや、メディアの取材や記者会見をオンラインで行うことが検討されている段階だ。

 その後、通常開催に至るまでの段階的な規制緩和の流れについても頭に入れておきたい。

 3節目以降は、人と人が十分な距離を取れる(ガイドラインでは2mを推奨)形での入場者数の制限や、ファンサービスおよび試合前のセレモニー等、人同士が接触する機会を極力減らすことが前提となる。

 観戦中は、観客同士のハイタッチや濃厚接触を減らすこと、スタジアム内での飲料販売は抑制されるなどの防止策が挙げられている。万が一観客から感染者が出た際は、各クラブのホームページ等で感染者の座席が公表される。

 開幕日は発表されたものの、対戦カードやキックオフ時刻、開催されるスタジアムは未定のままだ。なでしこリーグは関東圏のチームも多く、東京は緊急事態宣言が解除された直後に感染者数が再び増加傾向にあるため、関東圏での開催は慎重に検討されることになりそうだ。

 Jリーグでは公式戦の再開に際して、選手やコーチングスタッフ、審判2300人以上の唾液によるPCR検査を実施し、2週間に1回のペースで検査をする方針を明かしている。今回のガイドラインには明記されていないが、なでしこリーグでも今後、そうしたことが検討されるかもしれない。

 スタジアムに足を運ぶ一人として、ガイドラインはあくまで「指標」だということはしっかりと胸に留めておきたい。

 風邪の前兆のような状態でも、「熱がなければ大丈夫」と安易に判断してしまうのは危険だ。ガイドラインでは、「咳・発熱・倦怠感・咽頭痛などがみられる場合には観戦をご遠慮いただく(心臓、肺などに疾患がある場合も同様)」、「流行国・外務省から渡航中止勧告が出ている地域から帰国した方や、その帰国した方との濃厚接触者への立ち入りを制限」とある。

 新型コロナウイルスは「自覚症状のない感染者」も多いため、社会活動を再開させる過程では、自分が感染している可能性も常に意識すべきだろう。これまで以上に「感染しない、感染させない」という自覚と自制心が求められる。

【動き出す女子サッカー界】

 活動自粛が解除され、リーグ開幕が発表された6月2日、なでしこリーグの多くのチームがグラウンドでの練習を再開。SNSを通じて、練習風景や選手たちの喜びの声が伝わってきた。

 活動自粛期間中はSNSを活用して発信する選手も多く、家での過ごし方や意外な趣味など、オフザピッチの時間を充実させている様子も見られた。だが、実際にオンライン取材などで選手に話を聞くと、厳しい状況を受け止めつつも「試合がしたい」という強い気持ちがひしひしと伝わってきた。

 日テレ・東京ヴェルディベレーザは、最初から全員練習に戻すのではなく、時間を区切ったグループ毎の練習から、徐々に人数を増やして通常練習に戻していくという。

 2日の練習後にオンライン上で行われた囲み取材で、MF長谷川唯は、「大きいグラウンドでサッカーをすることがなかったですし、長い距離で思いっきりボールを蹴るのも久しぶりの感覚で、楽しかったです」と声を弾ませた。

 キャプテンのDF清水梨紗は、久々に会ったチームメートの印象について「みんなこの自粛期間にやることをやっていたので、体のコンディションが落ちているようには見えませんでした。開幕が決まったことで、チームでも計画を立ててやっていけるので嬉しいです」とコメントした。

 リーグが開幕する前には、一大ニュースがもたらされるかもしれない。

 今月末の6月25日には、日本も立候補している2023年のFIFA女子ワールドカップの開催国が決まるのだ。参照

 最終候補に残っているのは、日本のほか、オーストラリア・ニュージーランド(共同開催)、ブラジル、コロンビアの4地域だ。

 日本は2012年にU-20女子W杯を開催した実績がある。

 同大会で、日本はヤングなでしこ(U-20女子代表)が活躍して3位という好成績を残し、大きな盛り上がりを見せた。当時の主力メンバーだったGK池田咲紀子、MF猶本光、FW田中美南、DF土光真代らは、現在のなでしこジャパンのメンバーでもある。

 当時はU-17代表で活躍し、現在はなでしこジャパンで代表選手としてのキャリアを積んでいる長谷川は、日本でのW杯開催を願う一人として、同大会をこう振り返る。

「大会がすごく盛り上がっていて、自分もああいう舞台でサッカーがしたいという気持ちになりました。そこでたくさんの人にプレーを見てもらえて、自分たち(代表やベレーザの存在)を知ってもらえるのはすごくいいことだなと思ったんです。もし日本に決まったら、その時以上に盛り上がるように結果を残して、大会後にもお客さんに(リーグを)見にきてもらえるようにしたいです」

 コロナ禍で五輪が1年先の開催予定となり、リーグも延期になった。そうした中で先が見通せない状況が続いていたが、リーグ開幕が決定したことをきっかけに、いろいろなことが一気に動き出しそうだ。

 リーグ開幕日まで、6週間。これまでとは違う形でスタートする新たなシーズンが待ち遠しい。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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