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「新生・ヤングなでしこ」が挑むアジアの壁。次世代の有望株が揃うチームの強みとは?(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
大会直前に3日間の直前合宿が行われた(筆者撮影)

 10月27日(日)から11月9日(土)にかけて、タイでAFC U-19女子選手権が開幕する。

 日本は28日(月)にグループステージ初戦(日本時間18時キックオフ)でミャンマーと対戦。31日(木)の第2戦(同21時)で韓国と、11月3日(日)の第3戦(同18時)で中国と対戦する。

 この大会は来年7月にナイジェリアで開催されるFIFA U-20女子W杯のアジア予選を兼ねており、上位3カ国に出場権が与えられる。

「新生・ヤングなでしこ」が挑むアジアの壁。次世代の有望株が揃うチームの強みとは?

 以下、直前合宿時の監督、選手コメントを紹介する(写真はすべて筆者撮影)。

【選手・監督コメント】

池田太監督
池田太監督

池田太監督

ーーU-19日本女子代表としてチームが立ち上がってから約10カ月ですが、改めてこのチームの良さはどんなところだと感じますか。

全員がひたむきに取り組む姿勢があります。選手たちの理解力が高いので、ミーティングで話したいろいろなことをピッチに出てすぐにトライしたり、実行する力があります。そういったストロングポイントをもっと引き出してあげたいと考えています。

ーー練習では、常に集中を切らさないよう、ボールがどこから出てきても反応できるように意識づけしているような印象を受けました。

試合の中での切り替えを強調しています。ワンプレーの後の、また違ったセカンドボールでプレーを続けたり、関わった選手以外の選手も頭がオフにならないように習慣づけたいなと思っています。

ーータイはスコールが多いと聞きます。そういった環境面についてもミーティングで話されたのですか?

選手たちには環境に適応しようという話をしましたし、この直前合宿では(タイの気候を想定して)悪天候の中でも練習をやりました。その意図を理解して取り組んでくれました。

ーーアジアの戦いは年々厳しくなっています。このチームが連戦して勝ち上がっていく上で、池田監督が必要だと思うことはなんですか。

先発の選手だけではなく、交代選手の役割も含めて、チーム全体の底上げが大事です。それから、コンディショニングという意味では、試合の日程が中2日になるので、試合でプレーした選手も含めて次の試合に向かう良い準備ができるよう気にかけています。

ーー池田監督にとっては、2度目のアジア予選ですが、どのような気持ちで臨まれるのでしょうか。

そうですね。前回のU-19AFCを経験した選手もいますが、初めての選手もいるので、新たなチャレンジだと思っています。

高橋はな
高橋はな

DF 高橋はな(浦和レッズレディース)

ーーこのチームでは特に年代別代表での経験が豊富ですが、どのような役割を意識していますか?

前回大会を経験していることも含めてチームに還元したいと思っています。気持ちを前面に出したプレーを常に心がけています。

センターバックという(守備を支える)ポジションでもありますし、『自分が折れたらこのチームがダメになる』というぐらいの覚悟を持ってやりたいですね。前回大会は先輩方が先頭で引っ張っていってくれましたが、今回は自分が年齢的に一番上の代なので、上下関係を作らず、みんながいろんな意見を言い合っていけるチームにしていきたいです。 

ーー(前回のU-20のキャプテンで、浦和となでしこジャパンの先輩でもある)南萌華選手から、何かアドバイスはもらいましたか?

「頑張ってきてね」と言ってくれました。「何かあったらすぐに連絡して」と言ってくれたので、連絡しちゃうかもしれません(笑)。

ーー10月のカナダ戦ではなでしこジャパンにも初招集されました。どのような刺激を受けましたか?

トップレベルの選手たちと練習や試合をしてみて、一つひとつのパスの質とか、スピード感やフィジカルの強さでも、普段とは違うものを感じることができたので、(このチームで)それをまず自分が実践したいと思います。対人や競り合いの部分は強みでもあるので普段から意識していますし、ビルドアップの部分は課題もあるので、意識して取り組んできました。

ーー浦和のトップチームで日常的にプレーしていることも、U-19代表で生かせているのではないですか。

そうですね。世界で活躍している選手たちと普段からマッチアップしているので、そういう部分では簡単には負けちゃいけないなと思っていますし、勇気と自信を持って臨みたいと思っています。

ーー前回のU-19、U-20から池田監督の下でプレーしていますが、このチームの雰囲気はいかがですか?

太さんが熱量を持って、声を出しながら自分自身も動きながらやってくれるので、練習の雰囲気が自然と上がりますね。練習内容は高い集中力が必要になります。宮本コーチも、全体を見ながら的確なアドアイスをしてくれます。

ーーアジアを戦う上で一番難しいことはなんだと思いますか。

W杯出場権がかかっていますし、アジアにはヨーロッパとは違う球際の厳しさとか激しさがあります。一つひとつの試合にかける思いが少しでも足りないと、一発でやられてしまう部分が今までにもあったので、うまくいかないことがあっても、それを乗り越えられるようなチーム力が必要だと思います。

田中桃子
田中桃子

GK 田中桃子(大和シルフィード)

ーーいよいよ大会ですが、どのような心境ですか?

緊張というよりは楽しみな気持ちですね。このチームでは年上なので、積極的に声をかけるように意識しています。

ーー田中選手から見て、このチームのストロングポイントはどんなところだと思いますか。

ハードワークや切り替えはどこの国にも負けないと思います。高橋はなが自チームの活動でいない時もありましたが、その中でも、誰かが引っ張るというよりは、みんなで話し合いながらチームを作ってきました。

ーータイはスコールも多いですが、ピッチコンディションについては、どのようなことに気をつけたいと考えていますか?

(スタジアムの)映像を見たのですが、雨が降ると水たまりもできるようです。ゴールを守るポジションではファンブルなどのミスをしないことが前提ですが、もしミスをしても、そのあとの気持ちの切り替えも必要だなと感じました。

ーーコーチングの面ではどのようなことを意識しますか?

(2016年の)U-17W杯では、多くのお客さんの中でなかなか声が伝わらないことを感じました。味方に声が聞こえる聞こえないに関わらず、声を出すことで集中できる部分もあるので、声を出していくことはしっかり続けていきたいと思います。

ーー今大会の個人的な目標を教えてください。

どの試合でも無失点という、一つ目に見える結果を目指したいですね。今大会に限らず、自分の中でずっと理想としているのは、チームのメンバーを安心させられるような、(味方に)気持ちの余裕を作れるようなGKになることです。

菅野奏音
菅野奏音

MF 菅野奏音(日テレ・ベレーザ)

ーー普段、ベレーザで代表選手も多い中でプレーしていますが、その経験も含めて、このチームではどのような役割を意識していますか?

ベレーザは上手い中でも勝ちたい気持ちが本当に強いと感じるので、そこは、自分が代表でも見せていかなければいけないなと思います。試合の内容的にも自分が中心になって、結果的に勝たせられるような選手になっていきたいと思っています。

ーーU-19は2大会連続での参加となりますが、前回の大会の経験をこのチームにどう生かしていきたいですか。

アジアを経験していない選手もいるので、もし試合で緊張している選手がいたら声をかけてあげたり、プレーで引っ張っていきたいと思います。

ーー今大会、個人としてどのような結果を出したいと考えていますか?

得点を取ることも含めて、チームで一番輝ける選手になりたいですね。(背番号について)メニーナ時代は10番をつけていて、いろいろ言われて責任も感じました。代表の10番は誰もがつけられる番号ではないと思うので、責任感とかプレッシャーも楽しみに変えて頑張っていきたいと思います。

瀧澤千聖
瀧澤千聖

MF 瀧澤千聖(AC長野パルセイロ・レディース)

ーーU-16、U-17から一緒にプレーしてきたメンバーもいますが、アジアを戦う上でどんなところをチームの強みにしていきたいですか?

普段ご飯を食べるときや、サッカー以外の場面でもいろんな選手と話してコミュニケーションが取れているので、チームワークを強みにしていきたいですね。U-17の時は自分たちが引っ張っていかなきゃという意識が強かったのですが、今回は1歳上の先輩が何人かいて、下級生にも声をかけてくれるなど気を遣って、引っ張ってくれています。

ーーこのチームでは、どのような役割をイメージしていますか。

サッカー以外の場面だったら、下級生の子と上の人たちのつなぎ役です。アジアで優勝するために行くので、チームでの決まりごとを練習で積み重ねて、試合で最高のプレーができたらいいですね。自分はサイドハーフでプレーすることが多いので、プレッシングからボールを奪って攻撃の起点になりたいですね。アシストしたり、最後のところで決めきるなど、得点に絡むプレーにこだわりたいです。

ーー長野で今シーズン1年目ですが、どのようなことを学んでいると感じていますか。

(チームメートの横山)久美さんのボールの扱い方は、普段の練習からずーっと観察しています。ボールを奪われない技術や、相手がうまく足を出せないタイミングでシュートを打つんです。ボールを蹴る時に巻くボールとストレートを使い分けて蹴っているので、こういう時にこういうボールを蹴るんだな、ということを見て、自分のプレーにも取り入れています。今回はシュートチャンスがあると思うので、普段見ている成果を出したいと思います。

大澤春花
大澤春花

FW 大澤春花(ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18)

ーー今大会で、どんなプレーをしたいとイメージしていますか? 目標とするゴール数などがあれば教えてください。

どんな形のゴールでもいいので、1点でも多く取ってチームの勝利に貢献したいです。大会得点王になりたいですね。

ーーこれまでの遠征などでは、ここぞという時のゴールも印象にあります。

まだまだ点を取れる場面がありましたし、もっともっと貪欲にならないと点は取れないと思うので、まだまだですね。

ーー国際大会ならではの難しさもあると思いますが、シュートを打つ時にどのようなことを意識しますか?

(海外勢との対戦では)ボールを受けてから判断が遅くなると、足が長くてブロックされてしまうことがあるので、受ける前に次のプレーを考えておいて、受けた時にはいいところにボールを置いて早めに足を触れたらなと思います。左からカットインして、右足で巻いてファーサイドに決めたいですね。

ーープレーを参考にしている選手はいますか?

もう引退してしまったのですが、(元オランダ代表の)ベルカンプが好きです。動き出しのタイミングやシュートの形が面白いんですよ。足は速くないのですが、自分もスピードがないので重なるところがあります。「動き出しがうまくて点が取れるから見てみるといいよ」と、中学時代の監督に教えてもらったことがきっかけでよく見るようになりました。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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