なでしこジャパン、カナダとの第2戦はスコアレスドロー。五輪18枠への競争がもたらす攻撃力に見応えあり

カナダとの第2戦はスコアレスドローだった(筆者撮影)

【第2戦はスコアレスドロー】

 10月6日(日)にカナダ女子代表との国際親善試合を4-0で勝利したなでしこジャパンは、翌7日(月)、カナダとの非公開のトレーニングマッチを行った。会場は、前日と同じ、静岡市のIAIスタジアム日本平。両チームともに、前日の試合で出場機会がなかった、あるいは途中出場だった選手が中心となったこの試合は、0-0のスコアレスドローで終えた。

 日本は前日から先発メンバー11名全員を変更して臨んだ。

 GK池田咲紀子、4バックは左からDF清家貴子、DF土光真代、DF三宅史織、DF高橋はな、中盤は右からMF遠藤純、MF松原有沙、MF栗島朱里、MF宝田沙織。2トップにFW田中美南とFW小林里歌子が並ぶ4-4-2のフォーメーションでスタート。6月のフランスW杯に参加したメンバーが5名(池田、三宅、遠藤、宝田、小林)で、今回初招集の栗島、清家、高橋の3名も初先発を飾った。

 一方、カナダは先発9名を入れ替えてこの試合に臨んでいる。前日の試合は11名中10名がフランスW杯出場メンバーだったが、このトレーニングマッチでも同大会出場メンバー9名がピッチに立った。チームを牽引するMFクリスティン・シンクレアは欠場したが、同じくベテランのMFソフィー・シュミットが最終ラインからゲームを組み立てていた。

 高い位置から守備をスタートした日本に対し、カナダは積極的に背後のスペースを狙う。「Break the line!!(ラインを突破しろ)」というカナダのヘッドコーチの指示と、高倉麻子監督の「我慢!」という声が無観客のスタジアムに響き渡った。

 そして、流れは着実に日本へと傾いていく。センターバックの土光と三宅を中心にラインに綻びを出さず、池田が背後の広いスペースを的確にカバー。カナダのロングボールはほとんどがオフサイドにかかり、90分間を通して大きなピンチはなかった。初めてピッチに立つ選手同士もいた中で、前日のレギュラー組と同じように、無失点に抑えた守備は収穫と言える。

 また、日本は個々のシュートへの意識も高かった。だが、4ゴールを決めて快勝した前日の試合とは違い、最後まで1点が遠かった。

「失点はしませんでしたが、海外は(カウンターから)一発のあるチームが多いので、自分たちが攻めていても0-1で敗れる状況もあり得ます。FWとしては決めるべきところで絶対に決めきらないと、今日のような試合になってしまうなと思いました」

 試合後に悔しそうな表情でそう振り返ったのは、90分間、前線で起点となった小林だ。

小林里歌子(筆者撮影)
小林里歌子(筆者撮影)

 前日の試合では途中出場で日本の4点目を決めた小林は、「一人ひとりの距離感の遠さを感じる場面もありましたし、前線4人の関わり方はまだまだ詰めていかないと。全体的にもう少し前に人数をかけられたところもあったと思います」

 と、決定機に至るコンビネーションの質を課題にあげた。

 これがW杯や五輪なら、決定力不足は致命傷になりかねない。とはいえ、この試合では即席のコンビネーションで崩す難しさはあっただろう。

 だが、前日の試合で出場機会がなかった選手たちにとっては、東京五輪の18枠入りへの限られたアピールの場でもあった。その競争がチームに勢いをもたらし、特に攻撃面では随所に個々の持ち味が発揮されていたように思う。

【量産した決定機】

 前半6分に小林がファーストシュートを放つと、12分には、清家の精度の高いクロスに中央から松原がダイナミックに飛び込んで合わせた。その4分後には栗島が自陣で奪ったボールをドリブルで運び、左のタッチライン際をタイミングよくオーバーラップした高橋へ。高橋のグラウンダーのクロスに、ニアに走り込んだ田中が合わせたが、いずれもカナダのGKカイレン・シェリダンのファインセーブに阻まれた。

 17分に清家、22分には田中の強烈なシュートが枠を逸れ、栗島のクロスに田中が合わせた26分のシュートはポストに弾かれた。 

 39分には田中が中央まで下がってボールを受け、裏に抜けた小林に絶妙のフィードを送る。小林のポストプレーから宝田が強烈なシュートを放ったが、これもGKのファインセーブに阻まれた。

 後半は雨が降り出し、自陣に引いて守備を固めるカナダに対し、日本は交代選手が変化を加えた。

 59分には田中と遠藤に代わってFW籾木結花とMF宮澤ひなたが送り出され、65分には宮澤が左サイドを突破。ライン際まで持ち込んでマイナスのクロスを送り、小林が右足で合わせたが、シュートはGKの正面に飛んでしまった。70分には中央を駆け上がった高橋がドリブルからシュートに持ち込む。シュートはわずかにゴールの右上に外れ、高橋は悔しそうに天を仰いだ。

 72分には松原に代わってMF三浦成美が投入された。前日の試合では負傷で前半途中に交代となった三浦だが、この日はキレ味鋭いプレーを見せた。投入された直後に三浦の強烈なミドルシュートが枠を捉えたが、カナダのDFが体を投げ出してブロック。終盤も攻撃の手を緩めない日本は85分、栗島のパスを受けた宮澤がシュートを放ったが、枠の右上に外れる。後半アディショナルタイムには、籾木のスルーパスを受けた小林が決定機を迎えたが、トラップがわずかに大きくなった。ここでタイムアップの笛が鳴った。

【18枠への挑戦】

 多くの選手が攻撃面で良さを見せていた中、攻守のつなぎ役として存在感を示していたのがボランチの栗島だ。

 今回は初招集で、当初は緊張して自分らしいプレーが出せていなかったと振り返ったが、カナダ戦前日(5日)の紅白戦でようやく自分らしいプレーができたという。「その感覚を大切にして入った」という栗島。前半こそ相手との間合いを掴み損ねてかわされる場面もあったが、早い段階で調整し、後半は的確なポジショニングで相手の攻撃の芽を摘み、攻撃の起点にもなっていた。

「(前日の)カナダ戦を見ていて、わざとスペースを開けて相手のFWにパスを入れさせて奪ったり、パスが入った時にはすぐにプレスバックをしようと考えていました。これがラストチャンスだったので、何かを残さなきゃいけないと思いましたが、自分にしかできないプレーで代表にいい刺激を与えられたらという思いでプレーしました。カナダは日本人選手と違って予測しづらい部分はありましたが、イメージ通りにやれたと思います」

 そう話す栗島の表情からは充実感が感じられた。

 また、攻撃面では左サイドハーフで先発した遠藤が、強みの一つである左足の威力を随所に見せていた。パスやクロスやサイドチェンジに加え、この試合ではキッカーを務めたコーナーキックが3度、決定機につながった。主力組の中でキッカーを務めるMF中島依美と籾木は、カーブがかかったボールを蹴り分けられるが、遠藤は直線的なボールで狙ったポイントに合わせられる。

遠藤純(筆者撮影)
遠藤純(筆者撮影)

 前日のカナダ戦では後半途中からピッチに立ち、2点目の起点になった。

「W杯では自分で(仕掛けて)運ぶことができなかったのですが、昨日の試合は縦に突破したり相手を見てプレーすることができたので、そこは成長できたところだと思います」

 前日の試合についてそう手応えを口にした反面、メンバーが変わった中でスコアレスドローに終わったこの試合については、

「東京五輪に向けて(サブ組も含めた)チーム全体が(レベルの)差をなくしていかないと、自分自身もここに残っていけないと思います」

 と、危機感も漂わせていた。

 また、前半40分過ぎに左サイドの遠藤と右サイドの宝田がポジションを入れ替わった判断は印象的だった。

「自分が左よりも右に行った方が前から(プレッシャーを)かけやすいと思ったので、(宝田)沙織さんと声をかけ合ってポジションを替えました」(遠藤)

 監督の指示ではなく、試合の流れの中で、自分たちの判断で位置を入れ替えていた。ちなみに、前日の会見で高倉監督は試合中の流動的な動きについてこう語っている。

「ポジションによって役割を固定していませんし、対峙する相手や、ゲームの流れの中で選手が判断することを望んでいます。ベンチから私の指示で並びかたを変えることもありますし、選手にはやりにくさがあれば自由に変わっていいと伝えています」

 18枠に残るためには、組織の中で自分の良さを発揮する力が求められる。そのために、19歳の遠藤と宝田が大胆なポジション変更を自分たちの判断で行い、結果的に最後まで守備を引き締めていたことはチームとしての収穫と言えるのではないだろうか。

 なでしこジャパンはこの後、11月10日(日)に、北九州スタジアムで南アフリカ女子代表との対戦が決まっている。その後、12月中旬に韓国で開催されるEAFF E-1 サッカー選手権 2019 決勝大会に出場予定だ。

 9カ月後に迫った東京五輪へ、メンバーの絞り込みと連係強化はいよいよ本格化するだろう。その最終選考に向けて、佳境を迎えたなでしこリーグも見どころが満載だ。

カナダとの試合は1勝1分に(筆者撮影)
カナダとの試合は1勝1分に(筆者撮影)