11試合負けなしでリーグカップ制覇。平均年齢18.5歳のC大阪堺レディースが見せる自信と成長の跡

リーグカップ2部で優勝したC大阪堺レディース(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

【酷暑の中で掴んだ逆転勝利】

 8月3日(土)に味の素フィールド西が丘で行われたなでしこリーグカップ2部決勝は、セレッソ大阪堺レディース(C大阪堺)が、ちふれASエルフェン埼玉(エルフェン)を2-1で破り、2年ぶり2度目のリーグカップタイトルを獲得した。

 C大阪堺は下部組織のC大阪堺ガールズ出身の生え抜き選手が多く、学生中心で平均年齢が若い。この決勝戦のスタメンは、最年長が22歳のMF古澤留衣、最年少は14歳のDF小山史乃観(こやま・しのみ)で、控えも含めた平均年齢は18.5歳だった。

 昨年のU-20女子W杯優勝メンバーのMF林穂之香やDF北村菜々美、FW宝田沙織など年代別代表で実績のある選手が揃っている。今季9試合で9ゴールを決め2部の得点ランクトップを走る宝田は、6月のフランス女子W杯で2部から唯一メンバーに選出されている。

 試合は35度を超える酷暑の中で行われた。前後半に一度ずつ「クーリングブレイク」が用意され、選手たちが一時的にロッカーに退避する異例の措置が取られた。日陰の記者席でも汗でびっしょりになるほどの暑さだった。

 試合は、元日本代表のキャリアを持つMF上辻佑実やMF薊理絵(あざみ・りえ)、MF長野風花らを擁するエルフェンが、立ち上がりから巧みなパス回しでボールを支配。56分には相手陣内で得たフリーキックから、薊が貴重な先制点を奪った。

 だが、後半、時間とともにエルフェンに疲れが見え始めると、C大阪堺が強さを見せる。76分、ゴール前の混戦から林が押し込んで同点に追いつく。そして、終盤には劇的な展開が待ち受けていた。ゴール正面からMF脇阪麗奈が放ったシュートは相手のブロックに阻まれたが、こぼれ球に再び林が反応。ゴールまで25m近くはあろうかという位置から放たれたミドルシュートは相手に当たってコースが変わり、鮮やかにネットを揺らした。

 潮目がはっきりと変わったのは、ラスト30分の場面で取られた2度目のクーリングブレイクの後だ。

「(失点は)セットプレーからで、崩されたわけではなかったし、攻撃のリズムも作れていたので『焦らず全員でもう一回やろう』と話し合いました。終盤、相手が疲れてくることはわかっていましたし、『最後まで全員で走りきったら勝てる』という監督からのメッセージを信じて走り抜きました」

 林とダブルボランチを組み、攻守で存在感を示した20歳の脇阪は、弾けるような笑顔で振り返った。

 試合を決定づけた21歳の林は、2016年のU-20女子W杯(3位)に飛び級で出場し、フランスで行われた昨年の同大会ではフル出場で世界一への道のりを支えた。C大阪堺の岡本三代監督は「なでしこジャパンでも通用する能力を身につけている選手だと思います」と、太鼓判を押す。

 17年からはキャプテンマークを巻き、昨年からは背番号10も背負っている。言葉で熱くチームを鼓舞する闘将タイプではないが、凛とした表情と冷静な語り口に静かな迫力を感じさせる。試合では相手から力強くボールを奪い、157cmの小柄な身体からは想像できないような強烈なシュートを放つ。自身の変化について、林はこう話す。

「自分で点を取ろうという意識が以前よりも強くなりました。年下の選手も多く、周りに指示をしていく立場になりましたし、今日は14歳の選手もスタメンで出ていました。そういう若い選手たちに声をかけながらフォローできるようになったかなと思います」(林)

 そう話す表情には、リーダーらしい頼もしさが感じられた。

【ターニングポイント】

 岡本監督は13年からコーチとしてC大阪堺の指導にあたり、今季から監督に就任。現在、日本女子サッカー界の女性指導者には8名しかいない、S級ライセンス保持者の一人だ。年代別代表でU-16からU-20までヘッドコーチを歴任し、昨年のU-20女子W杯では世界一に輝いたチームを支えた。C大阪堺の強みについて、岡本監督は「若さとアグレッシブさ」と表現する。その上で今季は「戦術理解を高めることと、フィジカル強化に力を入れている」と話した。

 17年に2部で2位になったC大阪堺は、1部との入替戦を制し、昨季は初めて1部で戦った。結果は2勝2分14敗で最下位に沈み、1年で2部に戻ることになってしまった。それでも、1部での経験は若い選手たちを心身ともに逞しくした。

 今季、リーグが開幕した3月から4月にかけての公式戦7試合は2勝1分4敗だったが、5月以降はこの決勝戦も含めて9勝2分と無敗が続いている。好転のきっかけを、岡本監督はこう明かす。

「去年、(1部で)負け続けていたメンタルを変えるのに2ヶ月ぐらいかかりました。勝っていい流れにのれそうなところで負けてしまうことの繰り返しで、どこかで連勝できないかと考えていたんです。意図的にそうできたというよりは、選手たち自身がメンタルを持ち直してくれたことで自信につながり、勝てるようになってきました」

 C大阪堺には、手本となる中堅選手やベテラン選手はいない。だが、同年代だからこそ生まれる一体感や、コミュニケーションを図りやすい強みがある。

 昨年、1部で自分たちのサッカーをさせてもらえず、残留争いの中でもがいていた時期も、チームから明るさが失われることはなかった。それは、敗戦の内容も含めた経験が自分たちの成長の糧になると信じて戦ってきたからだろう。この決勝では、年齢も上で経験も勝る相手に対して臆することなく、自信を持って戦う姿を見ることができた。

「トレーニングは厳しいですが、細かいところまで全員でこだわってやっています。個人的には最後まで走れるようになったので、攻撃にも参加できるような体力をつけているところです。フィジカルトレーニングは多分、毎日やと思いますが、夏明けがほんまに勝負だと思っているので。しっかり昇格を目指して頑張りたいと思います」

 そう話す脇阪の表情には、自分たちの成長を楽しむような響きがあった。

 リーグ後半戦は、1ヶ月後の8月31日(土)に再開する。現在、C大阪堺は首位の愛媛FCレディースとは勝ち点6差の4位につけている。若いチームにとって、リーグカップ優勝というタイトルがもたらす自信は大きいはずだ。11試合負けなしの記録がどこまで続くのかにも注目したい。