なでしこリーグも残留争いが混沌化。上位撃破のC大阪堺レディース、窮地で示したヤングチームの底力

今季リーグ2勝目を挙げたC大阪堺レディース(写真:Kei Matsubara)

【リーグ戦10試合ぶりの勝利】

 セレッソ大阪堺レディース(セレッソ)が、第14節のノジマステラ神奈川相模原(ノジマ)戦でリーグ戦10試合ぶりに勝利。順位は最下位から9位に上がり、1部残留に向けて希望をつないだ。

 立ち上がりの前半7分にコーナーキックを直接決められ先制を許したが、23分にFW宝田沙織のゴールで追いつくと、41分にはMF北村菜々美のゴールで勝ち越した。

 2部から1部に昇格して1年目のチームは、程度の差こそあれ、スピードやプレー強度への適応に苦しむ。平均年齢が18歳前後と、今季1部でダントツに若いセレッソにとって、その壁はさらに高く感じられたはずだ。

 生え抜き選手を中心とした連係の良さと、年代別の日本代表歴を持つタレントの多さはセレッソの大きな強みだが、その反面、1部でのプレー経験を持つ選手がいない難しさもある。

 代表に多くのスター選手を輩出してきた名門、日テレ・ベレーザ(ベレーザ)も、生え抜き選手が多いクラブだ。現在は10代~20代前半の選手たちを中心とした陣容でリーグ3連覇中だが、2011年以降、世代交代を図る過程ではタイトルから遠ざかった時期もあった。そして、その中でも常に上位をキープし続けてきたのは、DF岩清水梓やMF阪口夢穂、DF有吉佐織ら、経験のある選手たちに支えられてきた部分が大きかった。

 セレッソの選手たちはそういった道標なしに、自分たちでケモノ道を切り開かなければならない。その大変さは、今シーズンの戦いが物語っている。

 リーグ前半戦は1勝1分7敗で折り返した。昨シーズンまでとのパワーやスピードのギャップに苦労しながら、試合を重ねて徐々に高い位置でボールを奪えるようになり、シュートまで持ち込む場面も増えた。しかし、その先に立ちはだかるのは、90分間を通じたゲームコントロールや、接戦を勝ち切る難しさだ。

 竹花友也監督は選手たちが明るさを失わないよう、敗戦もポジティブに受け止めながら経験を積ませてきた。それでも、9月にリーグが再開してからの3連敗はさすがに堪えたようだ。

「負け続ける中で、どこかで自信をなくしているようなプレーが多くなっていました。『でも、そうじゃない、気にしないで思い切ってやらな!』という話はよくしました」(竹花監督)

 残りの試合が減っていく中、全員が初めて経験する残留争いのプレッシャーも重くのしかかったのだろう。ノジマ戦で10試合ぶりのリーグ戦勝利を告げる長い笛が鳴った瞬間、セレッソの選手たちが見せた豪快な喜びは、ようやく乗り越えた壁の大きさを象徴していた。

 今シーズンの苦しい経験を来年以降に生かすためにも、セレッソにとって1部残留が重要な意味を持つ。

 10位(最下位)は自動降格、9位は入れ替え戦に回るため、残留が確実になる8位以上を目指しているが、10月9日現在7位とは「11」差が開いており、現実的には「2」差で8位の仙台がライバルとなる。10位の日体大FIELDS横浜との差も「1」と詰まっており、1試合で順位が入れ替わる可能性もある。

【エースの進化】

 だが、ノジマ戦の試合内容に目を向けると、1部で戦っていく地力は着実に備わりつつあることを感じさせた。

 足下の確かな技術や選手同士の連係の良さを強みとし、1部で2年目のシーズンを戦っているノジマは、セレッソにとって難しい相手の一つだった。5月のホーム戦は1-3で敗れ、リーグカップでは2度対戦し0-3と0-5で敗れている。だが、この試合では前線から粘り強く追い、プレッシャーを何度はがされても食らいついた。これまでと違ったのは「失点後」だ。

「失点してからの切り替えが全然足りていないと自分たちで自覚していたので、セレッソらしい前線からの守備や、粘り強くいくサッカーをしようと思っていました。今日は失点しても全員が前を向いて、ゴールを奪いに行けていたと思います」

 そう話したのは、同点ゴールを決めた宝田だ。1ゴール1アシストで、勝利の立役者になった。試合後はアイシングをした右足を引きずっていたが、宝田は「足をつっただけなので、大丈夫です」と言って、笑った。その瞬間、大きな瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。

 これまで経験したことのないようなプレッシャーや責任も感じていたのだろう。昨年、2部で得点王に輝いた宝田は、今年8月のU-20女子W杯で5得点を決め、日本の初優勝に貢献。シルバーボール(MVP2位)とブロンズブーツ(得点王3位)を獲得した。ここぞという場面で発揮されるゴールへの嗅覚と、プレッシャーの中でも冷静なボールさばきは、多くのファンを唸(うな)らせた。

 だがその反面、セレッソでは守備の課題とも向き合ってきた。指揮官曰く、宝田が国内リーグで足をつったのは初めてだったという。

「初めて足をつったというのは、それだけ走れていなかったということ。守備のこともだいぶ言いましたし、この2週間は目の色が変わっていました。今日は相手を追い回していたし、プレスバックも効いていた。変わってきましたね」(竹花監督)

 同点ゴールの場面は宝田自身が前線で守備に関わり、相手に身体を当ててボールを奪ったところから生まれている。そして、体勢を崩しながらパスをつないだFW田中智子のアシストを、無駄のないしなやかな動きでゴール左隅に流し込んだ。

 1部では相手の守備強度も上がり、昨年に比べてシュートチャンスは減ったが、その中で限られたチャンスをゴールに結びつける技術を高めてきた。

「(これまでと同じ間合いで打っても)1部では(相手の)足が出てくるので、一つタイミングを早く打つことを意識しています。あとは、慌てずしっかりゴールを見て、最後はしっかり振り抜いて決めきることです」(宝田)

 ゴールを決めた直後には、キャプテンのMF林穂之香と北村の2人が合図をかわし、すぐにボールを取りに走った。そこには、すぐに2点目を奪いにいく強い意思があった。経験のあるベテラン選手がいない代わりに、行動で示せるリーダーの存在が大きい。

先制ゴールを決めた宝田沙織(左から2番目)と2点目を決めた北村菜々美(同3番目)(写真:Kei Matsubara)
先制ゴールを決めた宝田沙織(左から2番目)と2点目を決めた北村菜々美(同3番目)(写真:Kei Matsubara)

 そして43分には、センターバックのDF筒井梨香のフィードを宝田が落とし、これを受けたMF善積わらいが最前線の田中にクサビのパス。相手を引きつけた田中がヒールで落とし、走り込んだ宝田が左に展開すると、北村が完璧なファーストタッチから冷静にニアに決め2-1。

 U-20女子代表の宝田と北村、U-17女子代表候補の田中と善積の4人が絡み、効果的なパス回しから崩した2点目はセレッソの真骨頂だった。

 そして、後半は守備のギアを一段階上げ、集中を切らさずにノジマの猛追を振り切った。

【「らしさ」を取り戻した2週間】

 この試合の一週間前に予定されていた第13節、マイナビベガルタ仙台レディース戦は、台風24号の接近によって中止になった。連敗の中で自信を失いかけていたチームが立ち直ったきっかけは、それによってノジマ戦に向けた準備期間に変わった2週間にあった。指揮官が強調したのは、チームの原点でもある粘り強い守備だったという。

「いいポジションを取って、まずはインターセプトを狙う。次は、相手がボールをコントロールした瞬間に前を向かせないこと。(それもダメなら)最悪は遅らせることやな、という感じで、1年目の最初の頃にやったようなことを、2週間トレーニングしました」(竹花監督)

 同時に、今シーズン攻守で良かった場面を集めた映像を見せて、失っていた自信を取り戻させようとした。また、選手の疲労も考慮してフィジカルトレーニングを減らし、異例の2日連続オフを与えた。

「台風が来ていたので、思い切って2日間オフにしたんです。『雨で遊びに行けないけど、とにかくサッカーのことを考えるのは禁止。そこからもう一回、スパッと始めようぜ』と。メンタルが弱ってるけど、選手に責任はない。みんな若いんやし、大丈夫だから任せとけ!と言って(笑)。その後、少しずつ明るくなってきましたね」(竹花監督)

 多くの選手にピッチに立つチャンスを与えながら底上げを図ってきた指揮官も、大きなプレッシャーを感じていたはずだ。しかし、選手たちにかけた言葉から、そういったことは微塵も感じられなかった。

 

 ノジマ戦のスタメンで最年少の15歳だったのが、サイドを主戦場とする善積だ。U-17女子代表でも主力の一人で、セレッソの伸びしろの大きさを象徴する存在と言える。

「今年、第1節から今までずっとレベルの高い選手と対戦してきて、収穫できる部分が沢山ありました。持ち味の粘り強い守備とオーバーラップは通用しているところもあるんじゃないかな?と。皆さんの上手いプレーをもっと真似していきたいです」(善積)

 前半戦に比べて善積の存在感が増してきたのは、なでしこジャパンの選手をはじめ、経験豊富なプレーヤーたちとの真剣勝負を、自分の中でしっかりと消化しながら成長してきたからだろう。

【残留に向けて】

 この後、セレッソは4位の浦和レッズレディース、2位のINAC神戸レオネッサ、首位のベレーザといった上位チームとの対戦を残しているが、中でも、台風の影響で24日に振り替えられた8位の仙台との直接対決が山場になりそうだ。その週は中3日での3連戦となる。

 この難局を乗り越え、セレッソは残留を勝ち取ることができるか。過熱する残留争いの行方にも注目したい。

試合後は勝利の余韻に浸った(写真:Kei Matsubara)
試合後は勝利の余韻に浸った(写真:Kei Matsubara)