U-20女子ワールドカップ初優勝を目指す若きなでしこたち。8月の本大会に向け、チームの仕上がりは?

晴天の下で行われたU-20日本女子代表合宿(写真:Kei Matsubara)

 4月にヨルダンで行われた女子アジアカップでなでしこジャパンが優勝し、来年フランスで行われる女子W杯にアジア王者として出場する。

 2020年の東京五輪も見据えたサバイバルもここから本格化することが予想される。その中で、才能あふれる若きなでしこ達の活躍にも注目したい。

 今年8月5日からフランスで開催されるU-20女子W杯に出場するU-20日本女子代表(U-20女子代表)が、静岡県内で4日間のトレーニングキャンプを行った。4月には本大会のシミュレーションも兼ねたフランス遠征を行い、チームはいよいよ仕上げの段階に差し掛かっている。

 このチームは、2015年のU-16女子アジア選手権で準優勝、2016年のU-17女子W杯で準優勝、2017年のU-19女子アジア選手権(兼U-20女子W杯アジア予選)では優勝という華々しい成績を残してきた。U-20女子W杯で、日本の過去最高成績は3位(2012年と2016年)。アジアチャンピオンとして迎える今年8月の大会で、大会初優勝を目指す。

 今大会で日本が入ったグループは、アメリカ、スペイン、パラグアイと強豪ぞろいだが、チームを率いる池田太監督は、「まずは初戦(のアメリカ戦)に向けて、メンタル面も含めてしっかり準備をしたい」

と、言葉に力を込めた。

 今回の合宿では、実質3日間という限られた期間で、特に攻撃面に多くの時間が割かれた。1対1のステップワークやエリア外からのワンタッチシュートなど、海外勢のパワーやリーチを想定した練習も見られた。

【強みはハードワーク】

 U-19日本女子代表としてチームを立ち上げた昨年2月から、池田監督は多くの選手にチャンスを与えながら競争を促し、絞り込みを進めてきた。この1年強で候補として招集された選手の数は、50名近くにも上る。

 本大会に向けてメンバーの見極めも大詰めだが、今回の合宿に参加した25名の顔ぶれを見ると、このチームの骨格が見えてくる。

 まず、前線とディフェンスラインに高さのある選手が多いことは一つの特徴だろう。DF南萌華(171cm)、DF小野奈菜(170cm)、DF高橋はな(168cm)、FW宝田沙織(169cm)、FW村岡真美(166cm)と、160cm台後半から170cm台の選手が並ぶ。

「代表は戦う武器を持っている選手の集まりですから、フィジカル面は特徴の一つとして考えています。ディフェンスラインは、相手がパワープレーをしてきた時にヘディングで跳ね返せるなど、世界と戦えることを基準に選手を選んでいます」(池田監督)

 また、このチームを表現するキーワードとして、選手たちの口から多く聞かれたのが「ハードワーク」だ。

守備を統率する南萌華(写真:Kei Matsubara)
守備を統率する南萌華(写真:Kei Matsubara)

 高い位置から粘り強く相手を追い込み、チャレンジ&カバーを徹底。攻撃ではフリーランを厭わず、人数をかけて攻め抜く。ディフェンスリーダーの南は言う。

「前線からのハードワークを90分間続けられるのは、このチームの良さです。前線の選手もしっかりプレッシャーに行ってくれるので、プレッシャーのスピードや、攻守の切り替えの早さも強みです」(南)

 南は、2年前の前回大会は飛び級で選出されることがほぼ確実視されていたが、大会直前に負傷し、涙をのんだ。空中戦に強く、攻撃の起点にもなれる南は、ハードワークというチームカラーを体現する1人だ。

 なでしこリーグ1部で試合に出ている選手が多いことも、このチームのストロングポイントだろう。

 高卒1年目で素晴らしいパフォーマンスを見せているMF宮澤ひなたや、リーグ屈指のスピードを誇るFW植木理子(ともに日テレ・ベレーザ/植木はケガのため今回の合宿には不参加)ら、所属クラブでレギュラーとして活躍している選手もいる。常に高いレベルでプレーし、試合勘を研ぎ澄ますことは、代表での好パフォーマンスにもつながりやすい。

 1部昇格1年目のセレッソ大阪堺レディースでサイドバックを務めるDF北村菜々美は、新たなステージで苦戦を強いられているが、予測や判断の質を磨き、さらにレベルアップするチャンスだ。

「1部の選手たちは足下がうまいから、飛び込んだらすぐにかわされてしまうし、守備のスライドのタイミングが少しでもずれたら、全部ずれてやられてしまうんです」(北村)

 同年代の選手が多いこともあり、チームの雰囲気は和やかだが、ピッチ内でも大人しい印象を受ける選手が多い。

 そんな中、ピッチに一際大きな声を響かせていたのが、GKスタンボー華だ。

明るいキャラクターでチームを盛り上げるスタンボー華(写真:Kei Matsubara)
明るいキャラクターでチームを盛り上げるスタンボー華(写真:Kei Matsubara)

 長身で端正な顔立ちが与える凛々しい印象と、天性の明るさでチームを盛り上げるキャラクターのギャップが面白い。スタンボーはINAC神戸レオネッサで定位置を得ていないが、正GKの武仲麗依と、代表で豊富な経験を持つGK福元美穂から日々、多くのものを吸収している。

「福さんは、声の出し方で人を動かすのがすごくうまいし、麗依さんは全体的に力を入れすぎず、リラックスした状態でやることができる。2人とも、経験の中で、どういうことが起こるかという予測の良さがあるので、コーチングの面でも吸収することが多いです。2人を見ながら、自分ができることを一つずつ拾って身につけていくのが日々の楽しみです」(スタンボー)

 コーチングの量と質は、GKに限らず、チーム全体で共有したいポイントだ。

 高倉麻子監督率いるなでしこジャパンも、チームが立ち上がった2年前は互いに遠慮がちな部分が見られたが、その後、DF熊谷紗希やDF宇津木瑠美ら、経験豊富な選手がリーダーシップをとり、今では時間さえあればお互いにプレーを確認し合っている。年代別代表チームは歳が近い分、ベテランのような立場の選手はいない。それならば、一人ひとりがリーダーの意識を持ち、積極的に発信していく意識を高めていきたい。

【攻撃の軸となるのは?】

 限られたチャンスで点を獲れるかーーそれは、日本が大会を勝ち抜く上で絶対に外せないポイントになる。

 MF長谷川唯やDF市瀬菜々らが中心だった2016年の前回大会は、多彩な攻撃を武器に優勝候補の一角とされていたが、結果は3位だった。準決勝で日本の決勝進出を阻んだフランスは、多くの時間を守備に費やし、日本の攻撃にひたすら耐えて、延長の末にワンチャンスをものにした。その粘り強く、したたかなゲーム運びには、A代表にも通じる強さを感じた。最後に勝敗を分けるのは、やはりゴールなのだ。

 このチームは、U-19女子アジア選手権で輝いた植木を筆頭に、宮澤、宝田、村岡、MF遠藤純、FW児野楓香など、前線に多彩なタレントが揃う。今回のU-20女子W杯で、日本を勝利に導くゴールを決めるヒロインは誰になるのか。

 中盤のキープレーヤーには、ボランチのMF長野風花を挙げたい。的確なポジショニングで敵の攻撃の芽を摘み、長短のパスを巧みに使い分ける。広い視野と正確な技術に裏打ちされたスルーパスは、しばしば観客のため息を誘う。

なでしこジャパンに初招集された長野風花(写真:Kei Matsubara)
なでしこジャパンに初招集された長野風花(写真:Kei Matsubara)

 長野は2014年のU-17女子W杯に飛び級で選ばれ、15歳で世界一になった。さらに、自身2度目となった2016年のU-17女子W杯ではチームの大黒柱として日本を準優勝に導き、大会MVPを受賞。昨年のU-19女子アジア選手権も全試合に先発し、U-20女子W杯出場権獲得を牽引した。ユースから浦和レッドダイヤモンズレディース(浦和)一筋で、エリートコースを順調に歩んできたようにも見えるが、今年からは環境を変えて、韓国WKリーグでプレーしている。きっかけは、昨年末にチェルシーLFC(イングランド)で練習参加したことだった。

「チェルシーには各国代表のトップレベルの選手たちがいて、あまりにも、力の差を感じすぎました。『足りないものが多すぎて、このままではダメだ』と思って、韓国リーグへの移籍を決断したんです。来年のW杯や東京五輪には絶対に食い込みたいですし、そこでしっかり自分の良さを出せるように、日々、頑張るだけです」(長野)

 女子では10代での海外挑戦は珍しいが、その行動力は明確な目標に支えられていた。長野は、23日に発表された、なでしこジャパンのニュージーランド遠征(6月4日~)のメンバーに初招集された。長野が活躍すれば、U-20女子代表のチームメートたちにとっても大きな刺激になるだろう。

 また、長野と同じく中盤で攻守を支えるMF宮川麻都も、経験と実力はピカイチだ。宮川は、このチームではMF林穂之香とともに前回大会に出場している。

 年代別代表では、サイドバック、サイドハーフ、センターバック、そしてボランチと、様々なポジションでプレーしてきた宮川。その器用さと豊かな経験は、苦しい時にチームを支えるだろう。前回大会の成績を超えるために必要なことを聞くと、「決定機をしっかり決めきること」(宮川)と答えた。

【本大会に向けて】

 3日目に行われた藤枝明誠高校(男子)とのトレーニングマッチは、30分×3本の90分間を戦い、結果は1-8と大敗。

トレーニングマッチ詳細

 3本目のセットでは主導権を握る時間も多く、かなり健闘したものの、全体的に強みである守備がうまくいかなかった。サイドはスピードの緩急で振り切られる場面が多く、ゴール前ではCKを高さで叩き込まれるなど、いかんともしがたい身体能力の差を見せつけられた。

 試合内容に関して、池田監督は「大会まで時間がないので、こちらの甘さを見逃してくれないチームとやりたかった」と、むしろ課題が多く出たことに手応えを示した。

 試合中に相手のフォーメーションが変わるケースや、前線からのハイプレッシャーなど、大会本番を想定して、様々な状況を作ってもらうよう、藤枝明誠高の監督に“逆注文”し、選手たちの柔軟性を試す狙いもあったという。本大会までに残された時間は多くないが、この敗戦から見えた多くの課題が、本大会に向けて攻守を向上させるきっかけになることを期待したい。

 選手たちは再び所属チームに戻り、今週末のリーグ戦に出場する。U-20女子代表は来月の海外遠征を経て、8月にフランスの地へと向かう。