なでしこリーグのGW3連戦が熱い。3連覇王者・ベレーザに接戦を演じたノジマが得た自信

FW田中美南(右)との対戦で駆け引きを磨いてきた國武愛美(2017皇后杯決勝)(写真:アフロスポーツ)

【ベレーザの攻撃力を抑えたアグレッシブな守備】

 絶対王者と、難敵に挑む挑戦者ーーその構図は、スポーツ観戦を楽しくする醍醐味の一つだ。

 どちらかのチームに感情移入して見れば、その高揚感が倍増することは間違いない。

 ノジマステラ神奈川相模原(ノジマ)が、リーグ4連覇を目指す日テレ・ベレーザ(ベレーザ)をギリギリまで追い詰めた第4節は、まさにその構図だった。結果は0-0のスコアレスドローだったが、両チーム合わせて32本のシュートが飛び交う、見どころの多い90分間だった。ピンチの場面でもチャンスの場面でも、ノジマの本拠地であるギオンスタジアムは沸いた。

 ノジマは昨年、ベレーザと5度対戦し、一度も勝っていない。1分4敗。カップ戦は0-7で敗れ、皇后杯決勝でも0-3で完敗した。

 1部昇格初年度だったノジマにとって、結果、内容ともに他を圧倒していたベレーザは、まさに1部のレベルを痛感させられた相手だった。だからこそ、その王者との対戦は、ノジマにとって成長のバロメーターでもある。

「去年に比べて、今年は、ボールを奪ってから選択肢が増えました。1部で1年間、経験してきたことが成長になっています」

 闘争心あふれるプレーでノジマの攻撃を牽引したMF田中陽子は、試合を通じてベレーザを上回る17本のシュートを打ちながら決定機をものにできなかった悔しさを言葉ににじませながらも、互角以上の戦いを演じた確かな手応えを口にした。

 0-4で完敗した前節のINAC神戸レオネッサ戦から中3日の短期間でしっかりと切り替え、無失点に抑えたことも、ノジマの選手たちの表情を明るくしていた。

 この試合でノジマが試合の流れを引き寄せたポイントは、2つある。

 まずは、ベレーザの強力な「個」を抑えた適材適所の配置だ。アジアカップを制した代表メンバー4人が先発に復帰したベレーザに対し、菅野将晃監督は対応するノジマの4-2-3-1(4-3-3)の配置に手を加えた。

「守備で走れる、球際で戦える選手を頭に入れて、なおかつ攻撃にもつながることを考えた」という菅野監督の狙いは、特に中央のポジションに現れていた。

 サイドのポジションが本職のMF石田みなみをボランチで起用し、石田の粘り強いボール奪取でベレーザの攻撃の起点となる中央を牽制。また、中盤の底でゲームを作れる田中陽子をトップ下で起用した。

「常に相手の嫌なところに立つことを考えていた」という田中陽子は、この試合、単独でボールを奪い、シュートに持ち込む積極的なプレーを何度か見せている。

 また、直近の2試合で3ゴールを挙げているベレーザの黄金ルーキー、FW宮澤ひなたにはスピードのあるDF小林海青をぶつけ、宮澤が同サイドでプレーした前半、シュートを打たせていない。

ベレーザに接戦を演じたノジマイレブン(写真:Kei Matsubara)
ベレーザに接戦を演じたノジマイレブン(写真:Kei Matsubara)

【堅守を支えた國武】

 ノジマが試合の主導権を握ったもう一つの理由は、駆け引きも含めた局面のデュエルで勝つ回数が多かったことだ。

 中でも、ベレーザの起点となるFW田中美南を抑えたDF國武愛美の働きは、視察に来ていた高倉麻子監督の目にも留まったに違いない。

 今年、リーグ2年目を迎える國武は、ノジマのスタメン最年少の21歳。だが、そのプレーには、若さゆえの不安定さは少しも感じられない。この試合では、田中美南に入る縦パスを何度もインターセプトして、90分間のシュートを2本に抑えた。

 凛々しい佇まいと冷静沈着な所作からは想像できない球際の迫力が、國武の存在を実際よりも大きく見せるのだろう。対峙するFWは161cmの國武よりも高い選手が多いが、単純なコンタクトでも負ける場面が少なく、その身長差を感じさせない。

 その強さは、昨シーズン、1部での経験の中で貪欲に吸収してきた駆け引きの技術に支えられている。

 中でも、2年連続リーグ得点王の田中美南は、國武にとって最も手ごわいストライカーの一人だ。昨年の皇后杯決勝で、目の前で2ゴールを決められた悔しさも、成長の原動力になった。

「インターセプトも狙っていましたが、田中選手に強くいき過ぎると、その力を利用されて抜かれるので、まずは絶対に前を向かせないようにしようと決めていました。クイックな動きをする選手とか、足元で受けるフリをして、ディフェンスの動きを見て裏をとるフォワードもいます。(私は)100パーセントの力で行くことはできますが、後ろに行かれた時にもしっかり対応できるようにしていきたいと思っています」(國武)

 あえてボールを奪いにいかないと見せかけて、相手FWがボールを収めるギリギリの瞬間を狙って襲いかかる。その気配の消し方も、國武が身につけてきた技術の一つなのだろう。

 間合いを見誤って一発で抜かれることは、ミスが失点に直結するポジションではあってはならない。だが、リーチや動き出しのスピードはFWによって十人十色だ。

 國武のように、前に強いセンターバックにとっては、その間合いを試合の早い段階でいかに調節できるかが重要になる。

 2月になでしこチャレンジに初招集された際、國武はセレッソ大阪ユースとのトレーニングマッチで、前半に裏を取られて失点したが、後半はしっかりと修正。その調整力の高さも、今後の豊かな伸びしろを感じさせる。

 ノジマのチームメートには、2016年にノジマ入りし、大卒1年目でなでしこジャパンに抜擢されたDF高木ひかりがいる。ノジマの恵まれたプレー環境で、今後、國武はどのような成長曲線を描くのか。楽しみは尽きない。

【上位チームから勝利するために必要なことは?】

 大卒の高木、短大卒の國武という原石を見つけ出し、1年目から活躍する流れを作った菅野監督が、同じように今シーズン、大きな期待を寄せて獲得した大卒1年目のMF松原有沙とMF田中萌(めばえ)も、早々にチームにフィットしている。

 松原は公式戦全7試合でフル出場。田中萌はこの試合は先発しなかったが、カップ戦も含めてチームトップタイの3ゴールを挙げている。

 松原はこの試合で、ボランチで出場。65分に約40m超のミドルシュートをバーに当てて会場をどよめかせた。

 今後、得点パターンとして期待がかかるのは、同じく今シーズン加入したベテランのFW大野忍と、FW南野亜里沙のホットラインだ。

 この試合で最大の決定機は、62分に大野からのスルーパスを受けた南野がベレーザのGK山下杏也加と1対1になった場面。最後は山下にストップされてゴールはならなかったが、息の合った崩しは完璧だった。

「普段から色々とコミュニケーションをとってやっているし、お互いがプレー面でも尊重して、生かし合っている」(菅野監督)

 と、指揮官も2人のコンビネーションに期待を寄せる。

 大野の巧みなボールキープで、ノジマはボールを奪った後の攻撃に人数をかけられるようになり、攻撃のバリエーションを確実に増やしている。

 この試合で安定したセービングを見せたGK久野吹雪も含めて、即戦力を補強したノジマは、昨年と比べて上位チーム相手に主導権を握ったゲーム運びができる時間が増え、決定機も作れている。だが、それだけでは足りない。

 勝つために、最も重要なことはーー。

「点を決めると試合の流れが変わったり、相手に精神的なダメージを与えられる場面があります。そこでシュートを入れるか、入れないか。それは、すごく重要な課題です」

 

 田中陽子は最後の部分で特に語気を強め、口元を引き締めた。

 ノジマは次節、5月6日(日)に、ホームのギオンスタジアムにジェフユナイテッド市原・千葉レディースを迎える。