先発メンバーの平均年齢17.7歳。堅守で1部昇格を目指す、セレッソ大阪堺レディースが浦和戦で得たもの

リーグカップで初タイトルを獲得(2017年8月12日、なでしこリーグカップ決勝)(写真:松尾/アフロスポーツ)

【新たなモチベーション】

 

 2017年の女子サッカー日本一を決める第39回皇后杯全日本女子サッカー選手権大会は、11月11日(土)と12日(日)に3回戦の8試合が行われ、ベスト8が出揃った。

 なでしこリーグ1部の各チームが順当に準々決勝進出を決める中、同4部に相当する関東女子サッカーリーグ1部の早稲田大学が、2年連続大会王者のINAC神戸レオネッサ(1部)を、120分間の激闘の末にPK戦で破る波乱も。

 また、なでしこリーグ2部のオルカ鴨川FCは1部のマイナビベガルタ仙台レディースに2-4、同じく2部の日体大FIELDS横浜は1部のジェフユナイテッド千葉レディースに2-3で敗れたが、2部のチームも健闘した。

 11日に行われたカードでは、2部のセレッソ大阪堺レディース(以下:C大阪)が、1部の浦和レッドダイヤモンズレディース(以下:浦和)に一歩も引かない、白熱したゲームを展開した。最終的に2-0で敗れたが、C大阪にとって公式戦では初となる、1部のチームへの挑戦で得たものは大きかったようだ。キャプテンを務めたC大阪のMF林穂之香は、確かな手応えを口にした。

「前線からの守備をチームの軸としてやってきたので、自信を持ってやろうと決めていました。試合の中で発揮できた部分もありましたが、1つ、2つ、連動できていない場所があると崩されると分かったし、その守備を90分間、続けることが今後の課題です。来シーズンは、1部でこういうレベルの高い相手と一年間を通じて戦いたいな、と改めて強く思いました」(林)

年代別代表でも活躍するMF林穂之香(なでしこリーグカップ決勝(C)松尾/アフロスポーツ)
年代別代表でも活躍するMF林穂之香(なでしこリーグカップ決勝(C)松尾/アフロスポーツ)

 C大阪は今シーズン、なでしこリーグ2部で2位になり、12月中旬に行われる1部・2部入替戦(※)に出場する。ちふれASエルフェン埼玉(1部/9位)とホーム&アウェーで行われるこの入替戦に勝てば、1部に昇格できる。

 浦和戦は、よりハイレベルな舞台で自分たちの力を試したいという、C大阪の選手たちのモチベーションをさらに高めた。

 

(※)1部・2部入替戦:第1戦は12/9(土)13時~@J-GREEN堺S1メインフィールド、第2戦は12/16(土)13時~@川越運動公園陸上競技場

【なでしこリーグ1部入りを目指して】

 C大阪は、なでしこリーグでもユニークな特徴を持つチームだ。

 Jリーグ1部のセレッソ大阪と同じ、濃いピンクのユニフォームに袖を通すレディースの選手たちは、ほとんどが10代である。

 クラブが女子部門の強化を図る中で、2010年に「セレッソ大阪レディースU-15」を設立し、2012年に年齢制限のないチームになった。当時の一期生が、現在、チーム最年長の20歳である。浦和戦の先発メンバーの平均年齢は17.7歳だった。

 また、男子同様、女子の育成にも力を入れており、年代別の日本代表にはコンスタントに選手を送り出している。

 年齢の近い選手同士の一体感や、同じメンバーで時間をかけて積み上げた連係の良さは、このチームのストロングポイントだ。

 戦術面の強みについて、C大阪を率いる竹花友也監督は次のように話す。

 「男子も含めて、セレッソのアカデミー全体が(サッカーの)コンセプトを共有しているので、男子と同じように、前線から(ボールを)奪いに行く守備を女子でも徹底しています」(竹花監督/8月12日、リーグカップ2部決勝戦)

 その堅守を武器に、C大阪は、今シーズンのリーグカップ(2部)で、チーム初タイトルを獲得した。

 そして今回の皇后杯では、なでしこリーグ1部の浦和相手にも、前半はその守備が機能していた。しかし、後半はゴール前のクリアが中途半端になり、こぼれ球を押し込まれる形で2つの失点を重ねた。

「危ない場面でクリアできなかったり、クリアしても相手にボールを獲られる”事故”があるので、そこはまだまだですね。(中略)中堅やベテランの中に若い選手が入って活きることがあるのですが、うちは全員が若いので、ゲームを読む力はまだ足りないと思います」(竹花監督/浦和戦後)

 竹花監督が指摘する「ゲームを読む力」は、実戦の中で意識を高めることで獲得していくしかない。それは、C大阪の選手一人ひとりが抱える課題とも言える。

【GKからFWまで。異色の経歴を持つ大器】

 1部昇格を目指してC大阪は現在、得点のバリエーションを増やすことに力を入れている。そんな中、チームの得点力を支えているのがFW宝田沙織だ。

 17歳で、168cm・59kgの恵まれた体格を持つ宝田は、今シーズン、リーグ戦18試合で2度のハットトリックを含む22ゴールを決め、得点ランキング2位に10点以上の差をつけて初の得点王に輝いた。

今シーズン2部得点王になったFW宝田沙織(なでしこリーグカップ決勝(C)松尾/アフロスポーツ)
今シーズン2部得点王になったFW宝田沙織(なでしこリーグカップ決勝(C)松尾/アフロスポーツ)

 生粋のFWかと思いきや、チーム入団時のポジションはなんと、GKだったというから驚く。

 2014年には、日本サッカー協会が主催する「スーパー少女プロジェクト(将来のなでしこジャパンのGKを発掘・育成するプロジェクト)」に選出されている。それ以降は、C大阪でもディフェンダーからFWまでを経験し、年代別の日本代表でもすべてのポジションで世界大会に出場した。この年代では相当に身体能力が高い選手と言える。

 2015年にはディフェンダーとしてAFC U-16女子選手権のメンバーに選出され、2得点を挙げて日本の準優勝に貢献。翌2016年にはMFとしてFIFA U-17女子ワールドカップに出場し、2得点を挙げて準優勝に貢献した。

 そして、C大阪でFW登録になった今年は、リーグ戦でゴールを量産。さらに、今年10月に中国で行われたAFC U-19女子選手権ではFWとして決定力を発揮し、5ゴール2アシストを決めて日本の2大会連続優勝に貢献した。

 元々、攻撃的なポジションだった選手がディフェンダーにコンバートされて活躍する例は少なくないが、逆のパターンで、ここまで大胆にポジションを変えている例は珍しい。

 宝田本人はそのことについて、

「それぞれのポジションで、どんなプレーをされたら相手が嫌か、ということが分かってプラスになりました」(宝田)

と、前向きなコメントをしている。

 また、どのポジションでプレーしても、自分の特長であるスピードと球際の強さを活かすことを意識し、得点感覚は「ゴール前でシュートの意識を高く持つこと」や「ファーストタッチを決めること」(宝田)によって磨いてきたという。

 浦和戦では右サイドハーフとして出場し、守備面でも力を発揮した。前半35分に相手陣内の右サイドで鋭く寄せてボールを奪うと、ドリブルで運び、最後は逆サイドへのスルーパスでFW野島咲良のシュートをお膳立てした。

 そして59分には、ゴール前でFW矢形海優(やかた・みゆ)の横パスを受けて、右足を振り抜いた。シュートは枠の上に外れたが、長い手足で相手ディフェンダーを牽制しながらシュートに持ち込む動きには迫力があり、スケールの大きさを感じさせた。

 宝田は試合後、浦和との試合で感じた差をこんな風に話している。

「ゴール前のキープ力を上げることと、もっと仕掛ける場面を増やす必要があると思います。1部のチームは、プレッシャーがきつくても、しっかりつないでくるところがすごいと思いました」(宝田)

 竹花監督に、彼女の得点力が1部でも通用すると思うかどうか聞いてみると、「通用するんじゃないでしょうか」と迷わず答え、こう続けた。

「ただ、宝田は自分の中のスイッチを入れるのがまだ遅く、前半はいつもじっとしていて、後半になると動き出す、という感じです。そういうところをなくさないと(トップレベルで)通用しないぞ、と伝えています」(竹花監督)

「スイッチが入った時はどうなるんですか?」と、反射的に質問を重ねると、興味深い答えが返ってきた。

「ゴールしか見なくなります。たとえフリーの選手がいたとしても、自分でボールを運んでシュートを打つし、疲れていてもゴール前に飛び込みます。スプリントの回数も多くなりますね」(竹花監督)

 未完の大器、という言葉が脳裏に浮かんだ。

 高さと速さを兼ね備え、複数のポジションをこなし、そして、優れたゴール感覚を持っているーー。相手が強くなるほど、その潜在能力は引き出されていくような気がしてならない。この試合でシュートチャンスは多くなかったが、限られたプレー機会の中で、宝田は確かな可能性を見せてくれた。

 自分の中のスイッチを宝田自身が自在にコントロールできるようになった姿を想像し、なでしこリーグ1部でプレーする姿を見てみたい思いに駆られた。

 C大阪は、この浦和戦で経験したことを糧に、12月の入替戦に臨む。

 なでしこリーグ1部を主戦場としてきた格上の埼玉相手に、チームの強みである堅守からのカウンターでゴールを奪うことはできるだろうか。宝田のプレーにも注目したい。