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日テレ・ベレーザに真っ向勝負を挑んだ浦和レッズレディースが見せた可能性とは(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
首位ベレーザが底力を見せ、3-0で勝利した(C)松原渓

なでしこリーグ第4節。

7位の浦和レッドダイヤモンズ・レディース(以下:浦和)が首位の日テレ・ベレーザ(以下:ベレーザ)をホームに迎えた試合は、ベレーザが3-0で完勝した。

日テレ・ベレーザに真っ向勝負を挑んだ浦和レッズレディースが見せた可能性とは(1)

以下、試合後の監督・選手コメント。

【監督・選手コメント】

森栄次監督(ベレーザ)

ーー試合を振り返っていただけますか?

内容は、負けゲームですよ。前半、ポストに当たっていたシュートが入っていたら分からなかったですし、レッズさんのプレッシャーには手こずりました。 レッズさんは縦にボールを入れた後の組み立てが上手いので、そこをどう回避しようかと考えていたのですが、上手くいかず、高い位置でボールが獲れませんでした。相手の2トップを弾き返せずに、ラインが下がってきてしまったことも、押し上げられなかった原因ですね。

ーー後半はどのようなポイントを修正したのでしょうか?

トップの2人の距離が遠く、(田中)美南のところにボールが入ってもすぐに潰されてしまっていたので、ハーフタイムに、籾ちゃん(籾木結花)に、もうちょっと近くにいてくれるように修正して、絶対に自分たちの時間帯は来るから、と。前半を0-0で折り返せれば(植木)理子を投入して流れを変えたいという考えもありました。

ーー植木選手のプレーについてはいかがですか?

実際に彼女が入ってからは流れが変わったと思います。点を獲ってくれると本人の自信になるし、周りの選手も認めてくれて、これからに繋がるかな、と。彼女は苦しい時の策になるので、すごく良いパーツになってくれていますね。

DF岩清水梓(ベレーザ)

ーー前半、押し込まれた原因について、後ろから見ていてどのように感じましたか?

相手の勢いがあったのと、浮き玉の処理や、セカンドボールの獲り合いで相手の方が良かったですね。

ーー流れを変えるためにどのようなことを意識していましたか?

前線から相手のFWがハードワークして、キーパーまでプレッシャーをかけてきていたので、正直、嫌でした。ただ、こちらが我慢していれば相手も疲れてくるだろうと考えていましたし、その時が勝負どころだと思っていました。ずっと我慢の時間が続いていたので、1点獲って、リードした段階で落ち着けたかなと思います。前半、苦しい時間帯をゼロで抑えたことが、今日の勝ちにつながったと思います。

ーー4連勝ですが、今後に向けての意気込みをお願いします。

相手の研究ももちろんしますけれど、だからといって自分たちが何かを変えることはないです。ただ、(一つの戦い方に)固執するのではなく、臨機応変に戦い方を変えたり、相手の嫌なところを狙いながら勝負できるのがベレーザの良さだと思っています。 その中で、攻撃の幅をより多彩にしていくことに、引き続き取り組んでいきたいですね。

FW 籾木結花(ベレーザ/キャプテン)

ーー前半はどのような意識でプレーしていましたか?

前半は押し込まれる時間帯が長かったのですが、点を獲らせなければ、後半は絶対に、自分たちに流れが来ると思っていました。風向きも前半は風下だったので、(相手は)その勢いもあると思っていました。前半はゼロで抑えようという雰囲気がありましたし、それができたことで、後半はいける、と思いました。

ーー後半の、先制ゴールを決めた場面を振り返ってもらえますか?

ヤマピー(山下杏也加)が(キックを)蹴る直前に、タナピー(田中美南)がオフサイドポジションにいたので、相手のディフェンスラインはボールが入っても流せばいいや、という雰囲気で、動いていなかったんです。そこで、自分が動き出せばついて来られないだろうな、と狙っていました。ボールは、裏に抜けるバウンドではなくて、手前で跳ねる感じだったのですが、(相手の)キーパーが前に出ているのが見えたので、打ってみました。打った瞬間に「いけるかな」という手応えがありました。

ーー前からプレッシャーをかけて来る相手に対する戦い方も、チームで共有できているのでしょうか?

そうですね。前半、相手がプレッシャーをかけてきた中で、自分たちがいつものようにつないでいこうとして、ミスでリズムを悪くしてしまうのではなくて、簡単に裏に蹴っていくことや、割り切って前に当てていくことで、「自分たちのミスでリズムが悪くなる」という捉え方をしなくても良くなるので。(前からプレッシャーをかけてくる相手には)パスを回すだけではないということを頭に入れつつやっています。

DF清水梨紗(ベレーザ)

ーー試合を振り返っていかがですか?

相手の2トップの選手が力強く、周りの選手の関わりも多かったので攻め込まれましたが、失点しなければいいや、と考えて前半はプレーしていました。後半は、先制点が入ってすごく楽になりました。相手も疲れてきていましたし、自分たちの流れではない時に(籾木選手が)点を獲ってくれてすごく助かりました。

ーー右サイドハーフの上辻選手とのコンビネーションはいかがですか?

(上辻)佑実さんとは年は離れているんですが、よく喋ってくれるし、自分の意見も取り入れてくれるので、練習の中からよくコミュニケーションが取れています。

ーー今シーズン、右サイドバックでどのようなことにトライしていますか?

ベレーザはパスをつないでいくサッカーなので、サイドバックははめられる位置だと思うのですが、そこで上手く回避できればチームが楽になるので、しっかりつないでいけるように挑戦しています。

チームとしては、つないでいく中でも、トップの選手が良い動きをしていたら(縦に)蹴るという使い分けができていたことが、(今日の)先制点につながったのかなと思います。

石原孝尚監督(浦和)

ーー試合を振り返っていただけますか?

今シーズン、相手を圧倒するサッカーをしようとしている中で、先週はINAC、今週はベレーザ相手に、自分たちの戦い方にチャレンジして、選手たちはそれをよく表現してくれましたし、成長過程としては手応えを感じています。後半にベレーザが戦い方を変えて来た中での対応力は課題です。後半は疲れもあって、自分たちのやりたいことができなくなった時間帯に失点が重なりました。交代選手で流れを変えたかったのですが、ゲームをコントロールできなくなっていました。そこは、まだまだ成長していくところですし、勝負どころを見極めるという点でも向き合っていきたいと思います。

ーー裏のスペースを狙われることについては、どのように対応しようと考えていましたか?

こういう(攻撃的な)サッカーを志向する上では、そこ(裏のスペース)は狙われることは分かっています。かと言って、下がって守るのは夢がないので。得点力については、まだチームの武器として持てていないですけれど、裏を狙われた時の守備の対応ができていば、さらに一つレベルアップして、ベレーザやINACとも戦えると思うので、戦い方を変えずにやっていきたいです。

ーーベレーザの鍵でもある、中盤を抑えるためにどのような対策を立てましたか?

自分たちのコンセプトである、「奪われたら奪い返す」ことに関しては、プレシーズンからずっと取り組んでいて、今日の試合でも手応えがありました。ベレーザが中盤でゲームを作ろうとトライしている間はリズムが作れる自信がありました。ただ、ベレーザは個の能力が高いチームなので、中盤で外されると、スペースがある中での対応になってしまいました。

ーーボランチの2人(猶本、筏井)のバランスについては手応えはいかがですか?

今週はそこを練習の中でトレーニングして来ました。筏井と猶本のところが良くなって、ベレーザにも戦える部分があったと思います。彼女たちも意識してトレーニングしてくれて、前半はゴールに迫る場面がありました。試合ごとに成長してくれているので、集中力を切らさずやっていきたいと思います。

GK 池田咲紀子(浦和)

ーー試合を通じて、多くの時間帯をコントロールできていたと思いますが、ご自身のプレーを振り返っていかがですか?

3失点しているので、出来が良かったとは絶対に言えないです。ベレーザ戦は、前半が良くて、後半が良くないという流れが多いので、後半も集中を切らさないようにしよう、と声をかけながら、私自身もしっかり集中して試合に入ったのですが、一瞬の隙をやられてしまいました。

ーー1失点目の場面は、何が足りなかったのでしょうか?

コーチングもですが、最後は自分の準備や予測が不十分だったところもあります。フィールド(プレーヤー)の足が止まった時に、1失点目は、ふっと集中力が抜けてしまったことで準備が一瞬遅れましたし、その一瞬がなければ、何かが変わっていたかもしれません。本当にシンプルなことですが、集中を切らさないことの大切さを改めて感じました。

2失点目と3失点目は、連携ミスもありましたが、今後の自分の取り組み次第で確実に止められる自信があるので。下を向かず、前向きに取り組んでいきたいと思います。

ーー今シーズンのチームとしての戦い方の変化はいかがですか?

ラインを高くすれば、シンプルに後ろにスペースが多くなります。その中で、(DF、MF、FWの)3ラインではなくて、私(GK)を含めた4ラインで(コンパクトに)保つ意識は、今年は特に持つようにしています。

後ろでのボールの動かし方はもっと高めていきたい部分ですが、前に運べた時には、去年よりもすごくリズムが良くなっていると感じます。

DF 木崎あおい(浦和)

ーー試合を振り返って、いかがですか?

前半はシュートチャンスもあって、左サイドに長いボールでフリーになることが多かったので、慌てずに中の状況も見ながら、勝負するべきところでは勝負できていたと思います。ベレーザとは、ユースの頃から対戦してきている選手が多いので、絶対に負けたくないという気持ちが強かったです。知り合いも多いですし、ベレーザはなでしこジャパンの選手も多いので。自分たちの良さを出せた中で、得点を獲らなければいけない試合でした。

ーー本職ではないサイドバック(本職はMF)のポジションですが、試合に出続けている中で、感じている変化はありますか?

最初は、緊張や不安もあったのですが、その中でどれだけ楽しんで自分の良さを出せるかということを意識していました。最近は、一つひとつの試合で出た課題を次の試合でどれだけ改善できるかということや、1対1の勝負を仕掛けることを意識できるようになりました。

ーー今後、リーグの中で、自分のどのようなプレーを伸ばして、アピールして行きたいですか?

今は本職ではないサイドバックをやっていますが、ポジションは関係なく、自分の良さである1対1で負けないところや、パスの精度を高めていって、代表にも食い込んで行けるようになりたいなと思っています。

ーー昨年のU-20女子ワールドカップでは、オフザピッチでも、お守りを作ってサポートしていましたね?

あの時は同い歳の選手が3人(乗松、北川、塩越)、大会に行っていましたし、同世代の選手たちに頑張ってほしいという気持ちで作りました。悔しい気持ちもありましたが、同い年ですけれど尊敬していますし、自分もこれだけは負けない、という部分があるので、ピッチで出していきたいですね。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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