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今シーズンも、長野の点取り屋がなでしこリーグを盛り上げる。FW横山久美がピッチで輝く理由とは?

松原渓スポーツジャーナリスト
アルガルベカップでは得点王に輝いた(写真:アフロ)

なでしこリーグ開幕を3月26日(日曜日)に控え、筆者はAC長野パルセイロ・レディース(以下:長野L)の横山久美についての記事をNumber Webに寄稿した。

長野から、なでしこのエースへ――。進化し続けるストライカー・横山久美。

出典:http://number.bunshun.jp/articles/-/827697

こちらの記事では、彼女のインタビュー全編を掲載する。

昨シーズンは、公式戦27試合で27ゴール。

1部昇格1年目の長野Lで、驚くべきペースでゴールを量産したストライカーは今シーズン、どのような目標を自身に課したのか。

ストライカーとしてさらなる高みを目指す中で、日々の心がけや取り組み、自身の心境の変化についても話を聞いた。

【インタビュー@千曲川リバーフロントスポーツガーデン】

ーーまず、代表のことについて聞かせてください。今回のアルガルベカップ(3月1日〜8日@ポルトガル)では、ゴールだけでなく、ビルドアップにも積極的に関わりましたが、代表と、チーム(長野L)で求められる役割の違いについて、どのように考えていますか?

サッカーはチームスポーツですし、ましてや、なでしこジャパンは集まる時間が限られているので、今は個人でどうかということよりも、チームとして強くなるために、できる仕事はなんでもやりたいですね。

長野では良い意味で自由にやらせてもらっている部分もありますし、幅広く仕事をしなければいけないと思っています。

ーーアルガルベカップで、あれだけ(4試合で4ゴール)ゴールを決められた要因はなんだと思いますか?

今回のアルガルベでは、ちょっとした動き出しを意識するだけで点が獲れたんです。代表にはゲームを作れる人がたくさんいるので、良いボールを待つだけで良かったですし、常に、目の前のディフェンダーとの駆け引きだけを意識していました。(パスが)出て来なくても、常にタイミングを見て良い準備をしていました。

ーー「普段の生活がプレーに出る」と話していましたが、特に、生活面ではどのようなことを意識していますか?

それは本田(美登里)監督に言われた言葉ですが、時間を守ることは徹底していますし、時間に余裕を持って動くようにしています。チーム(長野L)の中では、自分がプロ(契約選手)の基準になると思っているので、いつでも早寝・早起きをするようにしていますし、だらしない生活にならないように、些細なことから意識してサッカーのための生活リズムを作っています。

ーー他に、印象的だった本田監督の言葉はありますか?

(本田)監督の言葉は、考えなければいけない文章になっていて、深みがあるんです。何かを「やれ」というのではなくて、考えて理解しないと行動できないような言葉ですね。たとえば、「気遣い」という言葉です。試合中も、気を遣える選手になることはいつも意識しています。

ーーサッカーの理解を深めるために取り組んでいることはありますか?

日頃から、チャンピオンズリーグやJリーグの試合はよく見ています。戦術理解度が低いと、監督が言わなければいけないことが増えて、大切なことが言えなくなくなってしまう。時間がもったいないですよね。それなら、自分で学べることは学んでいこう、と。好きなことは徹底的にやれるんです。

ーー読書もしますか?

本はよく読みます。サッカーの本というよりは、体についての本や、考え方についての本が多いです。

最近は『GRIT/やり抜く力』(ダイヤモンド社)を読みました。作中でキーワードとなっている『物事をやり抜く力』が必要なのは、サッカーだけではないと思います。良い休息の摂り方も学んでいます。『睡眠は脳から』と言いますし、脳が疲れていると、いくら寝ても疲れが取れない。本を読んで、いいな、と思うことは積極的に取り入れますね。昨年から(プロになって)自分に費やせる時間が増えたことも大きいですね。働いていた時は、社会のルールを学ばせてもらっていたので、そのことにも感謝しています。

ーー昨シーズンから、特にフィジカル面で取り組んできたことはありますか?

この一年間は特に「走り」に力を入れてきました。練習開始の1時間前にはグラウンドに行って、フィジカルコーチにもサポートしてもらいながら、走っています。オフ明けは負荷を強めにして、試合に向けて負荷を落としていくイメージです。毎週、どんな形でやったらいいかというプランを立てて、1年間で築き上げてきた感じです。運動量が上がったことは、自分ではあまり感じていないです。いつも「疲れたな」と思いながら走っています(笑)。筋トレは午前中に、ジムでやっています。

ーー味方に要求するときは、どのようなことを意識していますか?

練習では味方が間に合わなくても、このタイミングで走って欲しいというパスを出すこともありますし、受け手になった時は、自分がそのポジションに先に入るようにしています。タイミングは体感した方が分かりやすいし、言葉で伝えるだけでは分からない部分もあると思うので。

ーー逆に、言われることについては基本的に受け入れますか?

もちろん、しっかり会話のコミュニケーションをすることが大切だと思います。ただ、納得がいかないことがあれば、監督でも納得がいくまで話しますよ。でも、分からないことをただ「分からない」とか「それは違うんじゃないですか?」と言うのではなく、相手の言葉の意味を理解した上で、自分の意見を伝えるようにしていますね。

ーー試合中は堂々とした雰囲気が印象的ですが、普段はどうですか?意外と、ピッチとは違う一面もあるのでは?

うーん(笑)。意外に几帳面だと思いますね。雑に見えたり、あまり物事を深く考えていないように見えるかもしれませんが、いろいろ考えているんですよ(笑)。だから、チームの雰囲気を良くしようと思って、あえてふざけたり、バカをすることもあります。あとは、基本的に誰とでもしゃべりますね。なでしこジャパンでも、特定の人とばかりではなく、いろんな選手とコミュニケーションをとっています。初対面だと人見知りしてしまうんですけれどね。

ーーメンタルも強そうですが?

自分ではそれほど強いと思っていないのですが、「強い」と周りからは言われますね。(2012年と13年に所属した)岡山湯郷ベルで、メンタル面も含めていろいろなことを教えてもらいました。当時の自分を知っている人は、怒られてばっかりのイメージだったと思います。でも、今となっては、怒られているうちが華だったな、と感じるんです。

ーー今年は他のチームからさらに研究されると思いますが、その中で、どのような役割を長野Lで担っていきたいと考えていますか?

今年はチームを引っ張るということよりも、いろいろなことを伝えていくことや、その言葉を考えてもらえるような問いかけ方や、言葉の選び方ができるように、今まで以上に意識していきたいです。

ーー今シーズンの具体的な目標はありますか?

今まで、目標は自分の中に持っていても、あえて口にしたことはないんです。

ただ、残り5試合でリーグ出場100試合になるので、まずはその目標を達成することと、通算100ゴールまであと16得点なので、それも目標の一つです。

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オフサイドラインギリギリで相手ディフェンダーと駆け引きし、ある時は巧みに、ある時は泥臭くゴールを決めるーー。

2部から1部に昇格後も、ハイペースでゴールを重ねた2016年。その陰には、弛(たゆ)まぬ日々の努力があった。

今シーズン中に達成が期待される、記念すべき100ゴール目も、彼女にとっては通過点に過ぎないだろう。

3月26日(日曜日)、なでしこリーグ開幕戦で、長野Lはホームに浦和レッドダイヤモンズ・レディースを迎える。

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スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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