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なでしこリーグ注目の上位対決。試合の舞台裏で何が起きていたのか(監督・選手コメント編)

松原渓スポーツジャーナリスト
若手選手の台頭も著しいI神戸

なでしこリーグ第16節。

8日に行われた、3位のINAC神戸レオネッサ(以下:I神戸)と2位のAC長野パルセイロ・レディース(以下:長野L)の上位対決は、I神戸が5−0と完勝をおさめ、前期の逆転負け(2−3)の借りを返す形となった。

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試合後の両チームの監督および選手のコメントから、試合を振り返る。

【試合後の監督・選手コメント】

★松田岳夫監督(I神戸)

ーー試合を振り返って

ボールを持てる状況の中で、アイデアを生かせず、時間をむやみに費やしてしまって、攻撃的な面ではまだまだです。一人一人の持っているアイデアとかプレーの質は高いレベルにあると思うんですが、サッカーは連動がすべてなので。一人が良い動きをしても、2人目、3人目がついてこないと、前半のような展開になってしまいます。ゴールが入ったシーンはたまたま連動できて、そうではないシーンもたくさんあったことが、今日のゲームの反省点です。

ーーGK武仲選手の活躍も光りました。

キーパーも切磋琢磨して、日々競争しているので。そういう意味では状態が良い方を使う方針は変わりません。

ーーここ数試合のチーム内の意識の変化について

みんなが意識高くやれることが理想ですけれど、それぞれ年齢も違うし、状況も違う。その中では、引っ張っていく選手が絶対に必要なので。そういう選手が増えたことは大きいですし、逆に言えば、今後はそういう選手がいなくても、それぞれが自覚を持ってチームのレベルが上がるようにしていければいいですね。

★DF鮫島彩(I神戸)

ーー積極的な仕掛けが光りました。

相手のディフェンスの仕方が、中に入りやすいディフェンスをしていたので、中に侵入していこうと意識していました。ただ、前半はシュートまでいけなかったのが課題です。パスを味方に当てた後に、すぐに動き直して、ボールを持った選手が自由に選択肢を持てるように意識しています。ただ、もっとクロスや自分でシュートを打つところまで持っていかなければいけないと思います。

ーー後半は、どのような修正を?

「運動量が足りない」と監督から指示があったので、そこは意識して後半に入りました。相手のディフェンスを動かせなかったら意味がないので、なるべく、相手を混乱させるような気流を生み出していきたいと思っています。

ーーアシスト(4点目)した場面について。

あの位置(ゴールライン際)まで縦に突破したら、ゴールキーパーの前が空くことが多いので、そこを味方も狙ってくれていると思いました。特にペナルティエリアの近くでもらった時は、はっきりと勝負を仕掛けるプレーをこれからもしていきたいと思っています。

★DF田中明日菜(I神戸)

ーー貴重な先制ゴールでした。試合を振り返って

中島(依美)選手から素晴らしいボールが来たので、当てるだけでした。

ーー前半はなかなか攻撃がスムーズにいかなかった?

そうですね。全体的に動きが少なかったので、もっとボールを展開して、関わる人数を増やしたかったですね。ハーフタイムに監督にも言われましたが、暑さの影響もありましたね。

ーー無失点で終えた試合運びについて。

長野はダイレクトにFWに入れてくるというのは映像を見て分かっていたので、縦に入れさせないように前の選手も意識してくれたし、DFラインも前を積極的に狙えていました。攻撃面では左サイドの鮫ちゃんを活かせるように意識しながらプレーしています。

ーーこれで4連勝です。チームの雰囲気はどうですか?

4連勝していますけれど、やっぱりギリギリの戦いを勝ってきたので、あと2試合しっかり勝ち切って、皇后杯に繋げていきたいですし、近賀選手をいい形で送り出したいです。

★FW京川舞(I神戸)

ーー久々の先発出場でしたが、手応えは?

スタメンで出してもらった時に緩い入り方をしてしまったことがあったので、ここ数試合の途中出場の時は気を引き締めて入りました。実感としては、もっと(自分自身の)スイッチを入れられると思います。ボールを持った時にまずパスコースを探してしまうのは課題ですし、これまではフリーなのに仕掛けず、ワンツーで崩そうと逃げてしまうような場面もありました。今日は特に相手がマンツーマンだったので、そこで1人かわせたらチャンスになると思って、何回か仕掛けることができました。

ーー胸トラップからの美しいゴール(2点目)でした。

最近、練習でやり始めた形だったんですが、あんなにいいボールが来るとは思っていなかったので驚きました(笑)前半はなかなか裏への飛び出しがない中で狙っていたので、相手の隙を突くような形にはなったんですが、しっかりと決められて良かったです。

ーー後半、相手がラインを上げてきた中での裏への駆け引きは意識していましたか。

攻撃では自分のタイミングだけではなくて、敵と味方の状況を見て判断しなければいけない中で、まだ敵の状況だけを見てアクションを起こしてしまい、味方とタイミングが合わないことがあります。それを、敵と味方と自分をしっかり見て駆け引きできるようにしたいです。

ーー逆に、守備の時に意識することは?

守備の時は、まず後ろの相手をちらっと見て、それから味方との距離を見て、全体をコンパクトにすることを意識しています。守備に関しては、練習でやっていることが試合で無意識でできるようにはなってきたと思いますね。

ーー4連勝していますが、チームの状況はいかがですか。

競争が激しいのはいいことだと思います。試合を重ねるごとに、戦う気持ちが強くなっていると感じますし、まだそこについて行っている部分もあるので、逆に(私たちが)引っ張っていかないといけないと感じます。

★GK武仲麗依(I神戸)

ーー3試合ぶりの出場となりましたが、完封勝利です。

今日は、体が軽い感じはありましたね。試合に出ていなかった時はやっぱり悔しい思いもありましたが、福(元)さんのすごいところを見る中で、自分も負けずにやっていこうと。今日は福さんが体調不良での出場でしたが、試合に出て、ゼロ(無失点)で終えられたことは自信につながりました。

ーーコーチングの声のボリュームが上がってきていますね。

それはやっぱり、福さんの影響が大きいですね。福さんがすごく通る大きな声をいつも出しているので、(私も)普段の練習から大きな声を出すように意識しているんですが、まだ周りの声にかき消されてしまうことも多いんです。その点は課題ですね。

ーーあと2試合への意気込みを。

チームとしても結果を残さなければいけないので、福さんと競争しながらも試合に出続けられるように頑張ります。

★本田美登里監督(長野L)

ーー試合を振り返って

まずは、うちの”アウェイで弱い”ところが出てしまいましたね。前期にうちがあのような勝ち方をしたので、INACはその点はリスペクトしながら潰しに来るだろうということは予想通りで、準備はそれなりにしてきたんですが、今日はゾーンではなくて、マンツーマンでマークについていました。(なぜなら)ボールを奪いたいところが相手の「個」の部分だったので、誰のマークにつくのか、役割をハッキリさせた方が良いと思ったからです。それで、マンツーマンで色々なことをしようとしていたんですが、INACの運動量が多くて、ポジションチェンジをしてくる中で、結局人を捕まえ切れずに。外にいく選手につくのか、中に入る選手につくのか?というところでパニックが起きてしまいました。人についている分、体力的な消耗が激しくて、後半はもたなかったですね。(交代は)けが人がいたのと、齋藤が膝も含めて満身創痍でどこまで持つか、と言うところだったので、失点も続きましたし、早めに交代しました。ただ、後半は相手が違う戦い方をしてくる中で、うちは後半も同じ戦い方のままだったので、さらに押し込まれてしまいました。後半の相手の変化にも対応出来るチームになっていけるようにこれから準備していきたいと思います。

ーー残り2試合も強豪との対戦が続きます。

日テレ(ベレーザ)は本当に強いチームですが、こちらはマンツーマンで守るところとゾーンで守るところを状況判断できるように。仙台には、リーグ開幕戦と、カップ戦のホーム&アウェイでも戦って、うちがベストのメンバーでやれれば、それなりの戦いができるイメージはできています。まずは、日テレ戦に、今日の試合を引きずらないように臨みたいと思います。

★齊藤あかね(長野L)

ーー体力的にも苦しい試合だったと思います。

タイトにマンツーマンでマッチアップして戦いましたが、ちょっと(個々の)レベルの差が出てしまったかな、と思います。あとは、前からプレッシャーをかけて勢いづけるいつものサッカーができなかったのは悔しいですね。攻撃では、相手のサイドバックの選手が高い位置をとった時に一緒に下がってしまって、上がるまでの距離が長くなってしまったので、攻撃に力を残せませんでした。

ーー今季、1部で戦ってきた中で、齋藤選手自身の成長はどんなところだと感じますか?

最初に2部から上がってきたばかりの時は、速さの対応も含めて、守備力は変わったと感じるのと、一人一人の運動量のところで、献身的に頑張るというところは成長したと感じますね。あとは奪った後の処理や、つなぎきれずにすぐに失ってしまうところで、もう少し丁寧さが必要になってくるなと思います。

ーー順位としては、4位以下になることはない状況ですが、残り2試合をどのように締めくくりたいですか?

今シーズンチームの目標は6位以上ということで、4位以内が決定している中で、勝てば上がれるし、自分たち次第という状況なので、もっと目標を高く持っていいと思いますし、もっと上を目指して、最後の最後まで順位にこだわっていきたいと思います。(ベレーザに対しては)前期の試合では、点差以上にやられてしまったと感じたので、その部分をどれだけ埋めて、自分たちのやりたいプレーがどれだけできるかが楽しみです。

★國澤志乃(長野L)

ーー前期の対戦とは違う難しさもあったのではないでしょうか。

こちらとしては、相手のソヒョン選手と杉田選手のところでボールを奪いたいという狙いがあったんですが、相手のポジションチェンジが激しくて、マークがつかみきれずに、フリーでボールを動かされてしまいました。何回か、木下選手がボールをつついてルーズボールを奪えたような場面もあったんですが、そのあと攻撃への切り替えが遅くて、結局また相手にボールが渡って守備に回る、という流れが続いていたので、(体力的に)しんどかったですね。(攻撃について)今はダブルボランチ気味でやっていて、2枚とも後ろに行ってしまうと後ろが重くなってしまうので、そこは出ていかないといけないなと意識して、頑張って動こうと思っているんですけれど。

ーーマンツーマンでの対応についてはどのような課題が?

マンツーマンと言ってもどこかのタイミングでマークを受け渡さないと、ポジションチェンジが激しい相手には、90分間はとてもできないので。ただ、そのタイミングを逃すと相手がフリーになってしまうので、そのあたりは難しさがありましたね。

ーー次はベレーザ戦です。

今日これだけやられてしまっているので、しっかりと切り替えて臨みたいと思います。

★木下栞(長野L)

ーーボランチでの出場でした。試合を通じてどのような収穫、課題がありますか?

最初にボランチをやり始めた時に比べると慣れてきましたが、今日のようにレベルの高い相手に対しては、マークを自分のところではっきりさせないと崩されてしまうと感じました。1枚はがせる(1対1に強い)力がある相手とやる時に、行くべきなのか、もう少しスペースから見るべきなのか、というところの判断をもう少しできるようになりたいと思います。

ーー次節は(ベレーザとの)古巣対決になりますが、どんなプレーを見せたいですか?

ベレーザでは試合にあまり出ることができなかったので、試合に出て元気にやっている姿を見せたいですし、前期の試合ではボコボコにやられている(1−5)ので、チームとして少しでも成長した姿を見せたいですね。

ーー長野に移籍してきてどんなところが伸びたと感じますか?

試合に出て、経験を積めたことは大きいですね。試合に出てもこれだけできるんだぞ、というところをしっかり見せたいです。

★泊志穂(長野L)

ーー試合後、悔しそうな表情が印象的でした。

やられないようにしようと言っていた形でやられてしまって、私自身もディフェンスにかかる時間が多くて後半バテバテになってしまったので…悔しかったですね。一週間で気持ちをしっかり切り替えて、チームで取り組んでいきたいです。

ーー次節は前期に敗れている日テレ戦です。

そうですね。絶対に勝ちに行く、という気持ちを全員でしっかり確認して、戦いたいと思います。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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