Yahoo!ニュース

イタリア、ユーロ圏離脱に向かう可能性―英保守党のヘイグ元党首(下)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表
英保守党のウィリアム・ヘイグ元党首=FBサイトより
英保守党のウィリアム・ヘイグ元党首=FBサイトより

また、英保守党のウィリアム・ヘイグ元党首は、「EUはイタリア国民が(連立与党による)こうした政策の恩恵を得ることを妨害することは間違いない」とし、「EUは地中海を渡ってくる移民の受け入れを手助けするとイタリアに約束したがほとんど約束を果たしていない。従って、もし五つ星運動とリーガ(同盟)の両党がEUと絶縁することを希望すれば、イタリアがユーロ圏を去る可能性がある」と断言する。

イタリア議会で演説するセルジョ・マッタレッラ大統領(中央)=大統領府サイトより
イタリア議会で演説するセルジョ・マッタレッラ大統領(中央)=大統領府サイトより

イタリアがユーロ圏を離脱するには、リーガのマッテオ・サルビーニ党首が「ユーロへの参加は間違いだった」とか、「ユーロは失敗することが運命づけられた悪貨」と政治的発言を繰り返しているだけでは実現しない。英保守党の重鎮、ウィリアム・ヘイグ氏は寄稿文で、「イタリアがユーロ圏から離脱するには政治的な障害が大きい。その一つは、(ユーロ加盟を規定するマーストリヒト条約(欧州連合条約)などの)国際条約の是非を問う国民投票制度がイタリアにはないためだ。しかし、それを可能にする政権がイタリアにできたことは大きな一歩だ」、「サルビーニ党首がユーロは間違いだと主張してもそれは間違っていると反論されるかもしれないが、(国民投票で)イタリア国民がユーロには多くの問題があるといえばそれは正論になる」という。

ただ残念なことに、ヘイグ氏は、「イタリアの新政府によるユーロ圏離脱の動きが英国の複雑なブレグジット交渉を助けることにはならないだろう」とみる。しかし、「EUがイタリアの新政権に脅威を感じれば感じるほど、EUが存在する根拠が弱まる。英国のEU離脱は1回限りの出来事で終わるのではなく、EUが徐々に長い時間をかけて解体していく始まりとなる」と結論付けている。

もともと、ヘイグ氏はEU批判の急先鋒として知られる。同氏は17年8月28日付のテレグラフ紙への寄稿文でもEUが英国との離脱協議で一切妥協せず、意図的に協議を長引かせていることに憤慨し、「英国のEU離脱交渉の成功を妨げているのは、政策を変更しようとしないEUの伝統的な柔軟性の欠如だ。英国のEU離脱の大きな理由の一つがEUの柔軟性の欠如だった」とし、その上で、「(09年に始まった)ギリシャ債務危機の際、問題解決に取り組んだギリシャのヤニス・バルファキス財務相(当時)が後日談として、ユーロ圏各国の財務相からECB(欧州中央銀行)総裁、そしてドイツのアンゲラ・メルケル首相まで次々とたらい回しにされ、結局、EUの誰と交渉すれば良いのか分からなくなった、と述懐し、また、EUでは誰も責任を持って政策を変更しようとしない非妥協性の壁に直面した、と語った」と痛烈批判している。

現段階では、イタリアの両党はギリシャの急進左派連合「シリザ党」のように最終的には政策を撤回し、EUルールに従って、財政支出の削減やユーロ圏にとどまるようになるとの見方が少なくない。しかし、今回の寄稿文でも、ヘイグ氏はデービッド・キャメロン政権当時の外相(10年5月ー14年7月)としての経験から、「既存の古い政党や金融市場を支配するエリート層に属さないイタリア国民は度を越した制御不能の移民流入に激怒している。欧州の一部の選挙や英国のEU離脱の是非を問う国民投票(16年6月)で見られたように、やがてそうした国民の態度にも変化が現れてくる」とし、「イタリアの2大政党による連立政権はギリシャの単独政党と違って、お互いに競って政治の信頼性を追求するのでそう簡単には反EUの旗は降ろさない」と言い切る。イタリアのユーロ圏離脱の動きをしばらく見守る必要がある。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

増谷栄一の最近の記事