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主な新興国/米国経済ニュース(4-5日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

【12月5日】

米エクソンCEO、原油価格1バレル40ドルでも存続可能と楽観的な見方

エクソンのティラーソン最高経営責任者=同社サイトより
エクソンのティラーソン最高経営責任者=同社サイトより

米石油大手エクソン・モービル<XOM>のレックス・ティラーソンCEO(最高経営責任者)は3日、米経済専門チャンネルCNBCのインタビューで、原油価格が1バレル=40ドルまで下落しても経営上に問題が起こることはないとの楽観的な見方を示した。米経済専門オンラインメディア、CNNマネーなどが伝えた。

同CEOは、先月下旬のOPEC(石油輸出国機構)の会合で加盟国の原油生産量の削減を見送ったことから代表的油種であるブレント原油先物が1バレル当たり70ドルを割り込み、原油価格は6月以降、40%も下落していることに関し、「エクソンは多くのエネルギー開発プロジェクトを十年以上もの長期の視点で投資を決定しており、原油価格が底値にある時期でもうまく乗り越えてきた」とし、また、「我々は原油価格が上は120ドルから下は40ドルまでの価格帯で(収益を確保できるかの)テストを受けてきている」と述べている。

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マレーシアのグラブタクシー、ソフトバンクから300億円出資受ける

ソフトバンクは4日、マレーシアのITベンチャーで東南アジア最大のタクシーの配車アプリケーションを提供するグラブタクシーに2億5000万ドル(約300億円)を出資し、筆頭株主になることで合意したことを明らかにした。

グラブタクシーは2012年創業で、東南アジアにおいて最大のタクシー配車アプリ提供者へと急成長している。同社は現在、マレーシアとフィリピン、タイ、シンガポール、ベトナム、インドネシアの6カ国17都市で、GPS(全地球測位システム)機能を利用して最寄りのタクシーを配車するサービスを提供している。同アプリは現在、250万件ダウンロードされており、月間ユーザー数は50万人。

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ブラジル鉱山大手ヴァーレ、ベースメタル事業の30-40%を分社化へ

ブラジル鉱山大手ヴァーレのムリーロ・フェレイラCEO(最高経営責任者)は2日、ニューヨークで開かれた投資家向け説明会で、最近の鉄鉱石相場の急落で経営が圧迫されていることから中核事業に経営資源を集中するため、同社のベースメタル(鉄や銅、アルミニウムなど精錬が容易な金属)鉱山事業の30-40%を分社化する方針を明らかにした。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)が伝えた。

同社ではベースメタル事業の資産価値を350億ドル(約4.2兆円)と推定しており、その30-40%に相当する105億-140億ドル(約1.3兆-1.7兆円)の株式を新規株式公開(IPO)によって売却する計画だ。分社化によって誕生する新会社は来年8月に、同社のニッケル鉱山が集中するカナダの証券取引所に上場される。

主力の鉄鉱石の国際相場は中国からの鉄鋼需要減少や世界的な供給過剰で、昨年の1トン平均135ドル(約1万6000円)から現在は70ドル(約8400円)を下回っている状況で、このため、同社では非中核事業の資産売却を進めている。今年8月には同業大手BHPビリトンとリオ・ティントもニッケルとアルミニウム、マンガンの鉱山部門を分社化している。

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【12月4日】

米バイオジェン、アルツハイマー型認知症の新薬臨床試験良好で株価急騰

神経細胞も重要な研究対象=同社サイトより
神経細胞も重要な研究対象=同社サイトより

米バイオ医薬品大手バイオジェン・アイデック<BIIB>は2日、同社が開発中のアルツハイマー型認知症薬「BIIB037」(開発コード名)の初期段階の臨床試験結果が良好となったことを明らかにした。これを受けて同社の株価は6%以上も急騰した。米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が伝えた。

これは同社の研究開発チームの責任者、ダグ・ウィリアムズ氏がボストンで開かれた投資説明会で明らかにしたもので、同社では今後、より規模が大きい第3相試験に入る計画だ。現在も進行中の初期段階の臨床試験では200人の初期患者とアルツハイマー発症の引き金となるベータアミロイドというたんぱく質を脳内に蓄積している患者のプラセボに対し、新開発のモノクローン抗体を54週間にわたって投与したところ、中間結果で新薬がベータアミロイドを減らすことができたほか、認知力に顕著な効果を発揮したとしている。

同社の株価は2日、6.43%高の328.27ドルで引け、その後の時間外取引でも午後7時52分時点で、0.68%高の330.5ドルと、一段高となっている。

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ロシア経済発展省、来年の同国経済のリセッション入りを初めて予想

ロシア経済発展省は2日、原油価格の下落とウクライナ危機をめぐる西側の対露経済制裁の悪影響を受けて、来年の同国のGDP(国内総生産)伸び率が0.8%減と、2009年以来6年ぶりにリセッション(景気失速)に入るとの見通しを示した。米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が伝えた。

また、同省は、自国通貨ルーブルも来年以降、ドルやユーロなど主要通貨に対し、弱い状態が続くと見ている。これまで、同省は来年のロシア経済は今年の0.5%増から1.2%増へ回復し、低成長が続くものの、リセッションとなる予想は否定していた。しかし、最近は原油価格の急落でルーブルが対ドルで過去最安値を記録したため、低成長の見通しを修正せざるを得なくなっている。同省では対露制裁は2016年まで続くと予想している。

ただ、ロシア政府内では経済発展省の今回の経済見通しに対しては批判も少なくない。財務省は悲観的過ぎると指摘し、いずれこのリセッションの見通しは修正される可能性があると強気の姿勢を崩していない。ロシア中銀は、来年はゼロ成長と予想している。

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ソフトバンク傘下の米スプリント、料金半額の乗り換えキャンペーン開始

スプリントの料金半額の乗り換えキャンペーン=同社サイトより
スプリントの料金半額の乗り換えキャンペーン=同社サイトより

ソフトバンク傘下の米携帯電話サービス大手スプリント・コーポレーション<S>は、同業大手の米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズ<VZ>と米通信大手AT&T<T>から5日までにスプリントへ乗り換える顧客に対し、既存の携帯電話料金の半額で通信契約が可能になる販売促進キャンペーンを開始した。米経済専門オンラインメディア、CNNマネーなどが2日に伝えた。

これは、ベライゾンとAT&Tの利用者が最新の携帯電話料金の請求書データをオンラインで登録したあと、同請求書のコピーを5日までにスプリントの店舗に持ち込めば、スプリントとの通信契約料金が以前の料金の半額になる仕組み。たとえば、1カ月160ドル(約1万9000円)の携帯電話利用料金を支払っていた顧客はスプリントに乗り換えるとその半分の80ドル(約9500円)となる。また、スプリントは乗り換えた利用者は以前のデータ通信プランの利用可能データ量を継続できる上に、無制限の電話とテキストの利用が可能になる。

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ポーランド中銀、政策金利を2%のまま据え置き―2会合連続。

ポーランド中銀は3日の金融政策委員会(RPP)で、主要政策金利の7日物レファレンス金利を過去最低水準の2%のまま据え置くことを決めた。また、中銀はロンバート金利と再割引金利、預金金利もそれぞれ3%、2.25%、1%のまま据え置いた。

7日物レファレンス金利は2012年11月会合で3年5カ月ぶりに利下げに転換して以降、2013年7月会合まで8回連続して引き下げられ、下げ幅も合計で2.25%ポイントに達した。その後、しばらく政策金利は変えていなかったが、10月会合で1年3カ月ぶりに利下げに転じたものの、11月会合で金利が据え置かれており、据え置きは2会合連続。

中銀は金融政策決定会合後に発表した声明文で、インフレと景気の現状認識について、「10月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.6%低下となっており、これは企業や家計のインフレ期待は極めて低いためだ」とした上で、「10月会合での利下げと、経済成長率は(4-6月期の前年比3.5%増から7-9月期は同3.3%増へと)やや鈍化したものの、安定した成長が続いていることで、インフレ率が中期の物価目標(2.5%上昇)を下回り続けるリスクは限定的なことから、政策金利を据え置いた」と述べている。

ただ、中銀は、「もし、今後の経済データによって景気の鈍化が確認され、ポーランド経済の弱い成長が続くようであれば、中銀はもう一段の金融政策の見直しを行うことは否定しない」とし、再利下げの可能性に含みを持たせた。

次回の金融政策決定会合は来年1月13-14日に開かれる予定。

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ブラジル中銀、政策金利を0.5%引き上げ―全員一致

ブラジル中央銀行(BCB)は3日の金融政策決定委員会で、政策金利(セリック)である翌日物金利誘導目標を0.5%ポイント引き上げて11.75%とすることを決めた。これは2011年8月以来3年4カ月ぶりの高水準となる。今回の金融政策決定会合では、アレシャンドレ・トンビニ総裁ら5人の政策委員の全員が大幅利上げを支持した。

中銀は、昨年4月の0.25%ポイントの利上げ以降、4月会合時まで9回連続で計3.75%の利上げを実施し、5月会合で政策金利を据え置いて利上げサイクルに終止符を打った。しかし、前回11月会合で0.25%ポイント引き上げ半年ぶりに利上げを再開した。利上げは2会合連続となり、利上げ幅も合計で0.75%ポイントに達した。

中銀が1日に公表した最新の経済週報「フォーカス・ブルティン」では、アナリストは0.25%ポイントの小幅な利上げを予想していたが、直前の金利先物市場では0.5%ポイントの大幅利上げを予想していた。また、トンビニ総裁も先週の再任決定後の講演で、「インフレ率を物価目標(中央値4.5%上昇)に収れんさせるシナリオを将来、確実なものにするためには、現状のインフレに満足はしない」と述べ、利上げの可能性を示していた。

中銀は政策決定後に発表された声明文で、「今回は金融政策の調整(利上げ)を強めることを全員一致で決めた」とし、0.5%ポイントの大幅利上げの必要性を強調したが、その一方で、「これまで積み重ねてきた金融政策の効果の発揮が遅れていることを考慮すると、追加の金融政策は控え目に行われるべきと信じる」と述べ、今後、大幅な利上げには否定的な考えを示している。

次回の金融政策決定会合は来年1月20-21日に開かれる予定。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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