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主な新興国/米国経済ニュース(19日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

米アラガン、アイルランドのアクタビスと合併―世界最大級の医薬品会社に

米医薬品・医療機器大手アラガン<AGN>は17日、アイルランド最大の医薬品メーカーであるアクタビス<ACT>に1株当たり219ドル(約2万5500円)、総額660億ドル(約7.7兆円)で、身売りすることで合意した。

両社の合併は2015年第2四半期に完了する予定で、合併後の来年の売上高は230億ドル(約2.7兆円)に達し、従業員数3万人超、時価総額1280億ドル(約15兆円)の世界最大級の医薬品メーカーが誕生することになる。

アラガンの買収をめぐっては、当初、カナダ同業大手バリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナル<VRX>が4月に最初の買収提案を行ったが、その後、アクタビスが参戦して買収合戦となっていた。結局、アクタビスの買収提示額がアラガンの1株当たり185ドル(約2万1600円)を18%以上上回り、アラガンの買収に成功した格好だ。

アクタビスは買収完了後、アラガンの経営改革に取り組む方針で、年間の研究開発(R&D)経費を4億ドル(約470億円)削減するなどで全体として18億ドル(約2100億円)のコスト削減を目指す。しかし、アナリストはすでにアラガンは4億7500万ドル(約550億円)のコスト削減によるスリム経営を計画しているため、目標通りのコスト削減は難しいと見ている。

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米フェイスブック、数カ月中にビジネス向けSNSサイトを立ち上げか

世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)である米フェイスブック<FB>は、従来の個人用の交流サイトとは別に、新たにビジネス向け交流サイト「フェイスブック・アット・ワーク」を今後数カ月中に立ち上げる方向で準備中だ。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)が16日に関係筋の話として伝えた。

この新サイトでは、既存の個人用プロフィールとは別に、ビジネス用のプロフィールを作成でき、仕事上の関係者や会社の同僚とのチャットや文書の共同作成などが可能になる。このため、米ビジネス向け交流サイト大手リンクトイン<LNKD>や米インターネット検索大手グーグル<GOOGL>のオンラインストレージ「グーグル・ドライブ」、ソフト世界最大手マイクロソフト<MSFT>の「マイクロソフト・オフィス」を使ったSNSサービスと競合することになる。

フェイスブックでは、すでに、こうしたビジネス向け交流サイトを自社オフィスで利用しており、昨年からロンドンで本格的に社内版「フェイスブック・アット・ワーク」の拡大バージョンの開発に取り組んでおり、現在は試験段階にあるという。

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EU外相会議、新たな対露経済制裁措置は見送り

EU(欧州連合)の外相会議が17日に開かれ、ウクライナ危機に絡んだ対ロシア経済制裁の追加措置は見送ることを決めた。ただ、ウクライナ危機を引き起こしている親ロシア派反政府武装組織の複数の幹部に対しては資産凍結とEUへの渡航禁止の追加制裁措置を講じることで合意した。ドイツの国際公共放送局ドイチェ・ヴェ(電子版)などが伝えた。

また、ウクライナの地元紙キエフ・ポスト(電子版)によると、EU関係者は、今後、もし、ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州を制圧している親ロシア派武装組織が領土主権を東部の他の地域に拡大する動きに出た場合には、EUは12月の首脳会談で、対露経済制裁の追加措置について議論する可能性があるとしている。

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インドネシア大統領、18日から補助金付き燃料価格引き上げと発表

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は17日夕、燃料補助金を削減するため、補助金付きガソリン価格を18日から1リットル当たり6500ルピアから8500ルピアへ3000ルピア(約30円)値上げする方針を明らかにした。ジャカルタ・グローブ(電子版)などが伝えた。

また、ディーゼル油の価格も1リットル当たり5500ルピアから7500ルピアへ2000ルピア(約20円)引き上げた。今回の燃料価格の引き上げについて、米信用格付け大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のソブリン債格付け担当ディレクター、小川隆平氏は、「単にインドネシアの財政赤字への影響を緩和するだけでなく、インドネシアのソブリン債の格付けにとっても好影響を与える」と評価している。燃料価格の引き上げで約100兆ルピア(9600億円)の財政負担が軽減される見通しだ。

インフレへの影響については、インドネシアのバンバン・ブロジョネゴロ財務相は17日、今回の燃料価格の引き上げで、今年のインフレ率は7.3%上昇と、10月の4.83%上昇を大幅に上回る見通しを示した。このため、中銀では13日に政策金利を据え置いた際に、「中銀は引き続き物価目標の達成を危うくするようなさまざまなリスク、特に補助金付き燃料価格の上昇の可能性に注意し、これらのインフレリスクを弱めるため、中銀は補助金付き燃料価格の上昇が抑えられ、一過性に終わるよう、政府との政策調整を含めて様々な手段を講じていく」と、慎重な姿勢を示している

しかし、スタンダード・チャータード銀行のエコノミスト、エリック・アレクサンダー・スガンディ氏は、「燃料価格が1リットル当たり2000-2500ルピア(約20-25円)引き上げられれば、中銀は政策金利を0.25%ポイント引き上げる」と予想している。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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