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主な新興国/米国経済ニュース(12月6日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ロシア鉄鋼・石炭メチェル、VTBと1840億円の返済猶予で合意

信用不安が広がっているロシア鉄鋼・石炭大手メチェルは4日、国営金融大手VTB(対外貿易銀行)から借りている18億ドル(約1840億円)の融資に関し、2014年末まで返済が猶予されることで合意した。ロシアのプライム通信(電子版)が伝えた。

これより先、同社は11月25日に複数の金融機関から借りている10億ドル(約1020億円)のシンジケートローン(協調融資)の返済猶予期間と返済時期をそれぞれ2014年末と2016年末に延期することで合意している。6月末時点での同社の純債務は95億5000万ドル(約9800億円)となっている。

メチェルは多額の債務の返済猶予について債権者と合意したことで、当面はデフォルト(債務不履行)の危機は回避できたものの、アナリストは同社の株式は無価値に等しく、メチェルが破たんしないのは政府と債権者の銀行の利益保護を優先した結果に過ぎないと悲観的。ロシア証券大手アトン・キャピタルのアナリスト、リナート・キアダン氏は、「メチェルの巨額な債務やメチェルが単独で経営を維持しなければならないこと、さらに同社の株価が無価値であることを考えると、政府や銀行の支援がなくなれば破たんは避けられない」としている。

一方、アルカディ・ドボルコビッチ副首相は4日、関係省庁に対し、メチェルの救済策を検討するよう指示した。ただ、同副首相は4日現在ではまだ、メチェルは政府に対し、融資保証の要請は受けていないとしている。

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丸一鋼管、ベトナム第2工場の操業を開始―コイル生産へ

丸一鋼管(本社・大阪)のベトナム法人、丸一サン・スチールは、ビンズオンン省南部のディアン郡に1億ドル(約100億円)を投じて、建設中だった第2工場がこのほど完成し、3日から操業を開始した。ベトナムの声・ハノイ放送局(VOV)が4日に伝えた。

同社は1997年からベトナムで最初の工場(鋼管や鋼線、鋼板、亜鉛めっき鋼管などを生産)の操業を開始している。新工場では、連続溶融亜鉛メッキライン(CGL)とカラー鋼板を製造する連続塗装ライン(CCL)からなる。生産品目はアルミニウム・亜鉛合金めっきコイルや溶融亜鉛めっきコイルなでで、生産能力は月間3万2000トン。生産品の70%はベトナム国外に輸出され、残りの30%が国内市場向けに出荷される予定。

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インドネシアの通貨安、格付けへの脅威にならず―ムーディーズ

米信用格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスのクリスチャン・デ・グズマン副社長(ソブリン債担当)は4日、記者団に対し、インドネシア通貨ルピアの下落は現時点ではまだ、同国の格付けにとって脅威になっていないとの認識を示した。ジャカルタ・グローブ(電子版)が5日に伝えた。

同副社長はその理由について、同国の経済成長には強じん性があり、公的債務の水準も低いことを挙げている。ただ、その一方で、ムーディーズの広報担当者は民間債務が増加しており、これが外部からの経済ショックに持ちこたえられなくなるリスクが高まっているとして、政府に警告している。ルピア相場は4日時点で1ドル=1万1960ルピアとなっており、年初来でドルに対し、20%も下落している。

ムーディーズはインドネシアのソブリン債に対し、投資適格級の中でも最も低い「Baa3」の格付けを付与しており、米英大手信用格付け会社フィッチ・レーティングスも投資適格級の格付けを付与している。しかし、米信用格付け大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)だけはまだ、投資適格級を与えていない。

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インドネシア・ライオン航空、タイで国内線の運航を開始

インドネシア航空最大手ライオン航空のタイ子会社、タイ・ライオン航空は4日、タイの首都バンコクにある拠点空港ドンムアン国際空港からタイ北部のチェンマイを結ぶ飛行ルートで初飛行を飾った。ジャカルタ・ポスト(電子版)が5日に伝えた。

同ルートでは、タイ・ライオン航空は週2便の運航を予定している。使用機材はリージョナルジェット機(国内線や近距離地域を結ぶ小型ジェット旅客機)「ボーイング737-900ER」。タイ・ライオン航空では、現在、ボーイング737-900ERを2機保有しているが、来年2月にはさらに同型機を2機追加し、新たにバンコクとタイ南部にあるハートヤイを結ぶ国内線やバンコクとシンガポールを結ぶ国際線を運航する計画だとしている。

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米通信大手AT&T、ベライゾンから700MHz低帯域の使用権取得目指す

米通信大手AT&T<T>は、同業大手ベライゾン・コミュニケーションズ<VZ>と英携帯電話サービス大手ボーダフォンの合弁会社であるベライゾン・ワイヤレスが保有している700メガヘルツ低帯域のAブロックと呼ばれる希少な周波数帯の使用権の獲得を目指しているもようだ。米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が4日に伝えた。

Aブロック周波数帯の取得をめぐっては、AT&TのライバルのTモバイルUS<TMUS>も関心を示しており、両社間の争奪戦になる見通しだ。Aブロック帯は遠距離までデータ信号を送ることが可能で、オフィスビルなどの高層建物に対する透過性の点でも優れている。ベライゾンはAブロック帯を約24億ドル(約2450億円)で取得したが、英市場調査会社ニュー・ストリート・リサーチのアナリストは、売却額は最高で27億5000万ドル(約2800億円)になると予想している。

現在、AT&Tは保有周波数帯を拡大するため、今夏に米中堅携帯電話サービス会社リープ・ワイヤレスを28億ドル(約2860億円)の債務承継分を含め、総額40億ドル(約4080億円)で買収している。

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米ヒューレット・パッカード、英国で1124人削減へ―事業再編の一環

米コンピューター大手ヒューレット・パッカード<HPQ>は英国で雇用している同社従業員1124人の削減を検討している。英BBC放送が4日に伝えた。同社もBBCの報道内容を認めた上で、これは昨年5月に同社が発表した全世界規模の事業再編計画の一環だとしている。同計画では2014年度末までに全世界で3万3000-3万4000人を削減するとしている。

英国では来年からバークシャー州ブラックネルで約600人とイングランド中部シェフィールドで23人、イングランド北西部ウォリントンで約500人が削減される予定。ただ、1124人のうち、一部の従業員は他の職場で再雇用されるとしている。同社の株価は4日、2.29%高の28.13ドルで引け、翌5日も米東部時間午前9時1分時点で0.07%高の28.15ドルとなっている。

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ブラジル11月自動車生産台数、前月比10.7%減―販売は8.3%減

ブラジル自動車工業会(ANFAVEA)が5日に発表した11月の国内自動車生産台数(乗用車・バス・トラック)は、前月比10.7%減(前年比8%減)の28万9633台となった。11月単月は大幅減となったものの、1-11月累計では前年比11.8%増の350万4000台となっている。地元紙オ・エスタド・ジ・サンパウロ紙(電子版)などが伝えた。

生産の内訳は、乗用車と商用車が前月比10.1%減の27万1867台となった。前年比も8.9%減と前年水準を下回った。トラックも前月比22.3%減(前年比19.4%増)の1万4451台となった。バスも前月比4.9%減(前年比21.1%減)の3315台となった。

一方、自工会が同時に発表した11月の新車販売台数(バス・トラック、輸入車も含む)は前月比8.3%減(前年比2.8%減)の30万2939台となった。前月比で大幅減となったのは11月の営業日数が10月より3日間少なかったため。また、1‐11月累計の販売台数は前年比0.8%減の341万3000台となった。

販売の内訳は、乗用車と商用車は同8.1%減(同2.9%減)の28万8500台となった。トラックも同13.1%減(同7.7%減)の1万1600台。バスも同6.4%減(同31.8%増)の2800台となった。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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