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主な新興国/米国経済ニュース(10月30日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

大阪ガス社長、ロシアからLNG輸入の可能性を示唆―国内需要拡大で

大阪ガス<9532.T>の尾崎裕社長は28日、訪問先のシンガポールで、地元のエネルギー専門誌シンガポール・インターナショナル・エナジーウィークのインタビューで、都市ガス需要の拡大に対応するため、今後、ロシアからLNG(液化天然ガス)を輸入する可能性があることを明らかにした。モスクワ・タイムズ(電子版)が29日に伝えた。

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震による東電の福島原発事故以降、原発による電力供給が低下したため、日本国内の都市ガス需要が急増しており、オーストラリアや中東カタール、マレーシアから大量のLNGを輸入しているのが実態で、都市ガス大手は新規の輸入先を開拓する必要性に直面している。

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ロシアのダイヤモンド大手アルロサ、IPOで1240億円調達―米国勢が購入

ロシア国営ダイヤモンド生産最大手アルロサは28日、モスクワ証券取引所で行われた新規株式公開(IPO)で、発行済み株式の16%に相当する11億8100万株を1株当たり35ルーブル(約105円)で売り出し、413億ルーブル(約1240億円)の資金調達に成功した。ロシアのプライム通信(電子版)などが伝えた。

株式の売り出しでは、国内の投資家よりも外国勢が多くの株式を取得しており、米誌案運用大手オッペンハイマー・ファンドと米投資銀行ラザード・インターナショナルが全体の2%以上を購入したほか、欧州やスカンジナビアの投資家も参加したもよう。特に、米国の投資家は売り出し全体の50%弱を購入したと見られている。

IPO後の株主構成は、依然、ロシア政府が全体の43.9%を保有し、同社の金鉱山があるサハ(ヤクーチア)共和国は20.5%となり、モスクワ証取でのアルロサのフリーフロート(浮動株)は発行済み株式全体の25%になる。ロシア政府では2016年末までは25%超の保有比率を維持したい考えだ。

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クウェート国営石油、インドネシアのプルタミナとの製油所建設を断念

クウェート国営石油(KPC)はインドネシア国営石油大手プルタミナとの石油精製所建設プロジェクトを断念した。ジャカルタ・グローブ(電子版)が29日に伝えた。

KPCが断念したのは、インドネシア政府から税制優遇のインセンチブ(奨励策)を得ることができなかったためと見られている。当初の計画では、KPCとプルタミナはインドネシア国内に2カ所の製油所を、それぞれ70億ドル(約6900億円)を投じて建設する計画だった。

プルタミナは現在、国内に6カ所の製油所を稼働しており、石油製品の供給能力は合計で日量100万バレルとなっているが、国内の消費需要は同140万バレルと、完全な供給不足の状態となっている。このため、プルタミナは不足分を海外からの輸入に依存しており、これが同国の経常赤字の最大の原因となっている。

KPCの断念で、今後、インドネシアでのガソリンの生産・供給能力の増強は当分の間、困難な状況となったが、プルタミナのカレン・アグスティアワンCEO(最高経営責任者)は国内の既存の製油所の原油処理能力を引き上げることで、将来の需要増に対処したい意向を示している。

同CEOによると、対応策として、既存の製油所の設備改修工事によって、低品質の原油処理も可能にすることにより、日量30万バレルの供給能力を追加するとしている。また、インドネシア政府も新しい石油精製所を建設するため、すでに90兆ルピア(約8100億円)の予算を組む一方で、イラクからインドネシアに日量30万バレルの原油を供給する約束を取り付けている。インドネシア政府では今後、新製油所の建設にあたり、海外から提携パートナーを模索するとしている。

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ベトナム航空、米GEからボーイング787向けエンジン40基を調達へ

国営ベトナム航空は28日、米複合企業大手ゼネラル・エレクトリック<GE>傘下のGEアビエーションと総額17億ドル(約1670億円)のジェット旅客機用エンジン40基分の購入・リース契約を結んだ。米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が伝えた。

これら40基のエンジンのうち、買い取りは18基で、残りの22基がリースとなる。同航空会社は今後、導入予定の米航空・宇宙大手ボーイング<BA>の次世代中型旅客機「ボーイング787ドリームライナー」に使うとしている。手始めに、2015年4-6月期から8機のドリームライナーがベトナム航空に納入される予定だ。

ベトナム航空は現在、82機を保有し、運航便数も1日300便を超え、国内21路線、海外28路線で運用しているが、今後は、2015年までに101機、2020年までに150機の体制を整える計画。

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米アップル、7-9月期は3四半期連続の減益―アイフォン26%増でも

米IT大手アップル<AAPL>が28日に発表した7-9月期(第4四半期)決算は、純利益が前年比8.5%減の75億ドル(約7400億円)、1株当たり利益(希薄化後)も5%減の8.26ドルと、3四半期連続の減益となった。ただ、アナリスト予想の7.92ドルを上回った。

また、売上高は前年比4%増の375億ドル(約3.7兆円)となり、これもアナリスト予想の368億ドル(約3.6兆円)を上回った。主力のスマートフォン「アイフォン」の出荷量は前年比26%増の338万台となり、アナリスト予想の320万台を上回った。「アイフォン5S」と「アイフォン5C」の新製品は同四半期の最終週に市場に導入されている。

アイフォンの販売額は前年比17%増となり、売り上げ全体の半分以上を占めた。しかし、アイフォンの販売価格は前年同期の1台平均618ドルから577ドルへ、7%も低下して利益を下押しした。

10-12月期(第1四半期)の業績見通しについては、売上高は550億-580億ドル(約5.4兆-5.7兆円)と予想し、アナリスト予想の556億5000万ドル(約5.4兆円)を上回った。

この決算の結果を受けて、同社の株価は28日、0.74%高の529.88ドルとなった。引け後の時間外取引では、決算数字が思ったほど大きくならなかったことから、一時終値比5%安となったが、米東部時間29日午前4時43分時点で、終値比0.16%安の529.02ドルで推移している。

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ハンガリー中銀、0.2%利下げ―15回連続

ハンガリー中央銀行(MNB)は29日の金融理事会(MC)で、市場の予想通り、政策金利の2週間物預金金利を現行の3.6%から0.2%ポイント引き下げて3.4%とし、過去最低の水準を更新した。利下げは30日から実施される。

中銀は2011年12月に7%へ0.25%ポイント利上げしたあと、しばらく政策金利を据え置いたが、昨年8月29日から0.25%ポイントの利下げキャンペーンを開始し、今回10月会合で15回連続となる利下げを決めた。これで合計3.6%ポイント引き下げたことになる。

中銀は金融理事会後に発表した声明文で、「ハンガリー経済は依然として潜在成長率を下回っている一方で、インフレの見通しについては、外需は強まるものの、内需は引き続き弱いため、消費者物価には低下圧力がかかり、中期的にはインフレは抑制される」とした上で、「インフレの先行き見通しや実体経済を考慮し、また、景気悪化リスクに配慮すると、慎重な追加利下げが必要だ」と述べている。

ハンガリー経済専門サイト、ポートフォリオによると、オーストリア金融大手エルステ・グループのアナリスト、オルショヤ・ニエステとゲルゲイ・ガブレルの両氏は、「最近の米経済通信社ブルームバーグの調査では、FRB(米連邦準備制度理事会)の第3弾量的金融緩和(QE3)の解除は来年3月から始まると見られていることから、(当面、ハンガリー通貨フォリントの対ドルでの下落懸念がないため)ハンガリー中銀は11月と12月にそれぞれ0.2%ポイントの追加利下げを実施し、政策金利を3%にまで引き下げる」と予想している。

中銀のフェレンツ・ゲルハルト副総裁は9月25日の投資関連セミナーで、「中銀はハンガリー経済の成長を助けるため、当面、政策金利を最大60ベーシスポイント(0.6%ポイント)、追加利下げする余地がある」と述べ、当時の政策金利3.6%から3%に引き下げることは可能との認識を示していた。一方、中銀のジョルジュ・マトルチ総裁はすでに、政策金利は3-3.5%の水準まで低下するとの金融政策指針を明らかにしている。

次回の金融政策決定会合は11月26日に開かれる予定。

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米薬品大手ファイザー、7-9月期調整後1株利益は予想を上回る

米薬品大手ファイザー<PFE>が29日に発表した7-9月期(第3四半期)決算は、売上高が減少したため、純利益は前年比19%減の25億9000万ドル(約2500億円)、1株当たり利益(希薄化後)も同9%減の39セントと、減収減益となった。しかし、調整後1株当たり利益は同16%増の58セントとなり、アナリスト予想の56セントを上回った。

減益となったのは、後発薬との競争激化や、営業経費は減少したものの、税金と一時的費用の増加額が上回ったため。一方、売上高は同2%減の126億4000万ドル(約1兆2400億円)となり、アナリスト予想の127億ドル(約1兆2450億ドル)を下回った。売上高が減少したのは、主として2011年に特許が切れた高コレステロール血症治療剤「リピトール」の売り上げが米国や欧州の先進国などで軟調となったことや為替の影響によるもの。

通期の業績見通しについては、1株当たり利益(希薄化後)を前回予想時点の3.07-3.22ドルから3.05-3.15ドルに下方修正した。調整後1株利益も前回予想時点の2.1-2.2ドルから2.15-2.2ドルへやや上方修正した。

また、ロイター通信によると、米信用格付け大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)傘下のS&Pキャピタルのアナリスト、ハーマン・サフトラス氏は同社の今後1年間の予想適正株価を33ドルから35ドルに引き上げた。これは今後数カ月で研究中の新薬が数多く導入されることや、既存薬の新用途が追加される見通しのためとしている。

この決算結果を受けて、同社の株価は米東部時間29日午後零時53分時点で、1.66%高の31.25ドルとなっている。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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