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主な新興国経済ニュース(6月6日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ロシア・モスクワのソビャーニン市長、市長の直接選挙を9月に実施へ

ロシアの首都モスクワのセルゲイ・ソビャーニン市長は、市民による市長の直接選挙を9月8日に実施するため、近くウラジーミル・プーチン大統領に辞表を提出するもようだ。ロシアのプライム通信(電子版)が4日に伝えた。

同日はモスクワ州の州知事選挙も同時に開かれる予定。ソビャーニン市長は「ロシア他の地域で自治体の首長を選ぶ直接選挙の動きにモスクワも後れを取ってはならない」と述べている。同市長によると、モスクワ市長の直接選挙は市民の3分の2が支持しているという。ただ、専門家はソビャーニン市長が9月選挙に固執しているのは、モスクワ市民の大半は夏季休暇中は市を離れるため、ライバル候補が投票日までに選挙の準備が間に合わないとの読みがあると指摘している。

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チェコ政府、11年ぶりの大洪水被害対策費として265億円支出へ

チェコ政府は先週末、集中豪雨による河川の氾濫で首都プラハを始めボヘミア地方の800以上の自治体で道路や鉄道、地下鉄などの交通インフラや家屋に重大な洪水被害が及んだことから非常事態宣言を発表したが、ペトル・ネツァス首相は4日、災害復旧費として、53億チェコ・コルナ(約265億円)の財政支出を行う方針を明らかにした。プラハ・デイリー・モニター(電子版)が伝えた。

ネツァス首相は災害復旧費用については今年度予算に計上している災害復旧費40億コルナ(約200億円)に加え、道路・鉄道建設特別会計からも13億コルナ(約65億円)を取り崩す方針だが、最終的な被害総額が固まった時点でEU(欧州連合)に対し、結束基金からの資金支援を要請する考えだ。

今回の大洪水は2002年8月以来11年ぶりの大災害で、すでに8人が死亡し、数千人が避難生活を強いられている。鉄道や道路も寸断され、数千世帯で停電が続いている。このため、政府は1万5000人の消防署員を動員しているが、新たに、最大2000人の兵士の動員も承認している。

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ロシア中銀のイグナチェフ総裁、一部の政策金利の引き下げの可能性を示唆

ロシア中銀のセルゲイ・イグナチェフ総裁は5日の講演会で、金融政策について、政策金利を引き上げる計画はないが、一部の政策金利を引き下げる可能性があることを明らかにした。ロシアのプライム通信(電子版)が伝えた。

同総裁は、「利上げが検討される可能性はほとんどない。たぶん、我々は政策金利を据え置くことになるだろう。ただ、私個人としては一部の政策金利が引き下げられ、他の政策金利が据え置かれるということは否定しない」と述べている。

中銀は5月15日に、主要政策金利であるリファイナンス金利を現行の8.25%のまま据え置いたほか、資金吸収のための預金金利(翌日物、1週間物、1カ月物)も現行の4.50%、資金供給のための翌日物通貨(ルーブル)スワップ金利やロンバードローン金利も6.50%のまま据え置いている。

他方、それ以外の資金供給のための3‐12カ月の長めの公開市場操作(オペ)金利と90‐365日の市中銀行への有担保貸付金利は、前回に続いて再び、各0.25%ポイント引き下げている。

次回の金融政策会合の開催時期については、6月前半に開かれる。

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インドネシアのシャトルバス最大手チパガンティ、7月にIPO実施へ

インドネシアのシャトルバス・自動車レンタル最大手PTチパガンティ・チトラグラハは5日、7月9日のインドネシア証券取引所での新規株式公開(IPO)に合わせて、7月1-3日に発行済み株式の40%に相当する20億株を新株発行と売出しで売却し、3000億-4000億ルピア(約300億-400億ルピア)の資金を調達したい考えを明らかにした。地元経済紙ビジネス・インドネシア(電子版)などが伝えた。

同社は観光バス需要の拡大に対応するため、新たにメルセデス・ベンツ製バス100台を追加購入する。バス1台当たりの購入費用は13億ルピア(約1300万円)。同社はすでに日野自動車<7205>製バス150台を保有しており、今回の追加購入で、同社の観光バス保有台数は250台となるが、3年後の2015年末までには750台のバスとコーチを稼働させる体制を築くとしている。

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ベトナムの今年の成長率見通しを5.1%増に下方修正―HSBC調査

英金融大手HSBCホールディングス傘下の香港上海銀行(HSBC)は4日に発表した最新リポートで、ベトナムの今年のGDP(国内総生産)伸び率の見通しを従来予想の5.5%増から5.1%増へ、0.4%ポイントも下方修正した。ベトナム通信(電子版)が5日に伝えた。

また、インフレ率については、今後数カ月は需要の伸びの鈍化などを反映して、値動きが激しいエネルギーや食品を除いたコアのインフレ率の伸びはかなり鈍化すると予想している。ちなみに5月のCPI(消費者物価指数)は食品物価の低下で前年比6.35%上昇と、4月の同6.6%上昇を下回った。コアCPIも同11%上昇と、4月の同12.1%上昇から伸びが鈍化している。

さらに、同リポートによると、5月の外国からの対内直接投資額(FDI)は前年比23.5%増の51億ドル(約5100億円)となったが、過去の平均の成長率7%増を達成するには不十分だとしている。ただ、ベトナムの国際競争力と外国人投資家の対ベトナム投資の意欲が引き続き維持されていると指摘している。

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ポーランド中銀、主要政策金利を過去最低の2.75%に引き下げ

ポーランド中銀は5日の金融政策委員会(RPP)で、景気を刺激するため、主要政策金利の7日物レファレンス金利を0.25%ポイント引き下げて過去最低水準の2.75%とすることを決めた。6日から実施される。

また、中銀は他のロンバート金利と預金金利、再割引金利もそれぞれ0.25%ポイント引き下げて4. 25%、1.25%、3%とした。7日物レファレンス金利は昨年11月の会合で3年5カ月ぶりに利下げに転換して以降、今回で7回連続の引き下げとなる。

中銀は政策決定会合後に発表した声明文で、「最新の経済データは、ポーランドの経済成長率が思ったより弱いことを示している。その一方で、インフレ率は3月時の予測よりも大きく低下している。また、ユーロ圏の景気回復の時期や程度が依然として先行き不透明で、ポーランド経済に悪景況を与える恐れがあることから、追加利下げを決めた」と述べている。

これより先、中銀の金融政策委員会のメンバーであるエルジュベータ・ホイナ・ドゥフ氏は5月22日のポーランド通信社(PAP)のインタビューで、「市場からのシグナルははっきりしないが、景気回復の兆しは全く見られていない」と述べ、景気刺激の必要性を指摘。その上で、6月4-5日の会合で追加利下げについて議論するとの見通しを明らかにしていた

中央統計局が発表した4月の鉱工業生産指数は前年比2.7%上昇と、市場予想の2.6%上昇を上回った。しかし、前月比では2.3%低下となった。また、4月のPPI(生産者物価指数)は前年比2%低下(前月比0.6%低下)と、市場予想の1.4%低下からさらにマイナス幅が拡大している

次回の金融政策決定会合は7月2-3日に開かれる予定。

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ブラジル政府、外国人投資家の国債・債券取引への課税撤廃へ―レアル高に

ブラジルのギド・マンテガ財務相は4日の記者会見で、最近の外国からの対内証券投資の低下に対応するため、外国人投資家によるブラジル国債や他の債券の売買に対する金融取引税(IOF)の税率を現行の6%から0%に引き下げることを明らかにした。中南米専門の通信社メルコプレス(電子版)が5日に伝えた。

ブラジル政府のIOF撤廃によって、今後、外国からの対内証券投資が活発することが予想され、ここ3カ月間で7.6%も下落している自国通貨レアルの上昇を促し、輸入物価の上昇によるインフレ懸念も解消されることが期待されている。同財務相は、「ブラジルへの海外からの資金流入が減少していることから、資本流入の阻害要因を取り除く考えだ」と述べている。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは5日付電子版で、ブラジル政府のIOF撤廃のニュースを受けて、レアルが買われ、グリニッチ標準時の5日12時06分時点で、1ドル=2.0920レアルと、前日終値の2.1348レアルから急速にレアル高へと反発した。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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