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主な新興国経済ニュース(5月23日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ポーランド中銀、次回6月会合で追加利下げ議論する―ドゥフ委員

ポーランド中央銀行の金融政策委員会のメンバーであるエルジュベータ・ホイナ・ドゥフ氏はポーランド通信社(PAP)のインタビューで、6月4-5日の次回会合で追加利下げについて議論するとの見通しを明らかにした。地元週刊紙ワルシャワ・ボイス(電子版)が22日に伝えた。

中銀は8日に景気を刺激するため、主要政策金利の7日物レファレンス金利を0.25%ポイント引き下げて過去最低水準の3%とすることを決め、9日から実施している。また、ポーランドを訪問したIMF(国際通貨基金)代表団のジュリー・コザック代表も16日の会見で、中銀は景気を刺激し経済成長率を高めるため、一段の金融緩和を実施すべきと提言している。

ドゥフ氏は、「市場からのシグナルははっきりしないが、景気回復の兆しは全く見られていない」と述べ、景気刺激の必要性を指摘している。これより先、中央統計局が発表した4月の鉱工業生産指数は前年比2.7%上昇と、市場予想の2.6%上昇を上回った。しかし、前月比では2.3%低下となった。また、4月のPPI(生産者物価指数)は前年比2%低下(前月比0.6%低下)と、市場予想の1.4%低下からさらにマイナス幅が拡大している。

他方、もう一人の金融政策委員、ヤン・ビニエッキ氏は20日の地元テレビ局TVN・CNBCのインタビューで、「一段の利下げを実施しても投資は拡大せず、景気刺激効果は期待できない」との否定的な見方を示し、一段の金融緩和には反対している。ビニエッキ氏はタカ派(インフレ重視の強硬派)として知られる。

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ロシア格付け、近く据え置きか変更かを発表へ―財務次官

ロシアのセルゲイ・ストルチャク財務次官は21日の記者会見で、世界的な大手信用格付け機関が近いうちに、ロシアのソブリン債格付けの据え置きか、あるいは変更を発表するとの見通しを明らかにした。ロシアのプライム通信(電子版)が伝えた。

同次官は、「最初に発表するのはどの信用格付け機関とは言わないが、現行の格付けを据え置くかどうか、また、格付けに対する見通し(アウトルック)について発表することになる」と述べている。現在のロシアの格付けは、フィッチとS&Pはいずれも「BBB」、ムーディーズは「Baa1」となっている。アウトルックは3社とも「安定的」。

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インドネシア医薬品最大手カルベ、M&Aと生産拡大で150億円調達へ

インドネシア最大の医薬品メーカーのカルベ・ファルマは21日、M&A(企業の買収・合併)と海外進出を含め医薬品の生産拡大に必要な資金として、年内に最大1兆5000億ルピア(約150億円)を調達する方針を明らかにした。ジャカルタ・グローブ(電子版)が伝えた。

計画によると、今年の投資額は1兆‐1兆5000億ルピア(約100億‐150億円)で、これは当初計画の8000億ルピア(約80億円)を大幅に上回る。同社のビドヨンゲリウスCFO(最高財務責任者)は、調達した資金のうち、M&Aに5000億ルピア(約50億円)、残りを工場の拡大や新製品の開発に充てるとしている。

また、同社は今年度決算で、売上高と純利益を前年比15‐18%増とすることを目指している。昨年の売上高は13兆6000億ルピア(約1360億円)だった。

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インドネシア家電大手エレクトロニック・シティ、年内に60店舗に拡大へ

インドネシア家電大手エレクトロニック・シティ・インドネシアは今年末までに国内の店舗数を現在の34店舗から60店舗にまで急拡大する計画だ。同社は国内消費をけん引している中間所得層にターゲットを当てるため出店を強化する方針。ジャカルタ・グローブ(電子版)が21日に伝えた。

同社は21日に国内34店舗目となる新店舗を南ジャカルタのショッピングモール「ポンドック・インダー・モール」内にオープンした際、同社のアニタ・アンジェリーナ業務企画部長が年内に60店舗まで出店数を拡大する考えを明らかにした。昨年末時点での出店数は23店舗だったので、この1年間で約3倍となる。今後の出店先としてはジャカルタのほか、カリマンタンやスマトラも視野に入れているという。

また、同社は一部報道によると、6月に発行済み株式の最大25%を新規株式公開(IPO)し、1億5000万ドル(約150億円)の資金調達を行う計画だ。ただ、同社はこの報道についてはノーコメントとしている。

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韓国航空宇宙産業、ベトナムにエアバス向け部品工場建設で調査開始

韓国航空宇宙産業は、ベトナム中央部ダナンにあるダナンハイテクパークに、欧州航空最大手エアバスの航空機用コンポーネント(構造部材)の生産工場を建設するための調査を開始した。これは同パークの関係者が明らかにしたもの。地元オンラインメディアのベトナムネットが21日に伝えた。

これより先、2010年にも同社とエアバス、その親会社である欧州航空防衛大手EADSの3社は共同で、ダナンに航空機部品を生産する工業団地を造成するための調査を行っていた。ダナンでは2009年から三菱重工業<7011.T>傘下のMHIアエロスペースシステムズがタンロン工業団地で、米航空・宇宙大手ボーイングの航空機部品(動翼部分)の組み立て工場の操業を開始しており、航空関連プロジェクトとしてはそれ以来2番目となる。

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ベトナム政府、1月から法人税減税へ―景気刺激のため

ベトナムのブー・バン・ニン副首相は21日の議会の公聴会で、政府は景気を刺激するため、来年1月から法人所得税の税率を現行の25%から22%へ引き下げる方針を明らかにした。地元日刊紙タンニェン(電子版)が伝えた。

これは同副首相が法人所得税の改正法案について説明したもの。税率22%への減税は来年1月1日から施行される。このほか、今年7月からは従業員数が200人未満で年間売上高が200億ドン(約1億円)を下回る企業に対する税率は20%に引き下げられる。さらに、住宅建築業界にも7月から10%に引き下げられる。

また、政府は2016年には法人税は20%に引き下げるほか、20%の税制優遇措置を受けている企業の税率も17%に引き下げられる。これらの減税措置で政府の税収は来年だけで22兆2000億ドン(約1110億円)の減収となる見通しだ。

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ブラジルのインフレ率、下期に物価目標上限を下回る―中銀総裁

ブラジル中央銀行アレシャンドレ・トンビニ総裁は21日の議会公聴会で、インフレ対策について、中銀は十分に警戒しながら、あらゆる手段を用いて、今年下期(7-12月)に物価目標(2.5-6.5%上昇)を達成したいとの考えを示した。オ・エスタド・ジ・サンパウロ紙(電子版)が伝えた。

同総裁は、「利下げサイクルが始まったことや一部食品価格からの物価上昇圧力も緩和することから、今後、インフレが手に負えなくなるような状況にはならない」とした。その上で、「中銀は4-6月期からインフレ低下に注力しており、インフレ率は4-6月期には前期(1-3月期)より上昇ペースが後退する。今年下期の早い時期に物価目標の上限(6.5%上昇)を下回る」との見通しを示した。

また、同総裁は、「利下げサイクルが始まったが、これは今年の経済成長を阻害することはない」との認識を示し、「景気の緩やかな回復と一致する」とも述べている。さらに、同総裁は、「インフレとの戦いによって経済の信頼性を高め、労働者の賃金を(物価上昇による目減りから)守ることに役立つ」とし、今年のGDP(国内総生産)伸び率見通しも従来の3.1%増を維持した。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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