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主な新興国経済ニュース(5月16日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ロシアのプーチン大統領、天然ガス自動車普及で振興策の策定を指示

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は14日、エネルギー省など関係省庁に対し、天然ガス自動車の振興策を策定するよう指示した。同大統領は、天然ガス燃料で駆動する新車購入者に対し、税制優遇措置や購入価格の割引などの支援制度を確立する必要があるとしている。ロシアのプライム通信(電子版)が伝えた。

プーチン大統領は14日の関係省庁の大臣を集めた政府会合で、各種の割引や恩典の制度を導入することによって、天然ガス駆動車の経済性や技術性の高さを広く知ってもらい、天然ガス車への関心を高める必要がある、と述べている。

支援策として、エネルギー省では天然ガス車に対する通行税を来年1月から廃止、または、大幅減税のいずれかを提案している。アレクサンドル・ノワク・エネルギー相は2030年までに天然ガス車を現在の約206台から250万台に拡大したいとしている。また、同相によると、ロシア国営石油大手ロスネフチは600億ルーブル(約2000億円)を投じて、全国約1000カ所に天然ガス供給スタンドを建設するほか、国営天然ガス大手ガスプロムも今年は10億ルーブル(約30億円)を投じて10地域に17カ所のガス供給スタンドを開業する計画だ。

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インドネシア預金保険公社、ムティアラ銀行の業績悪化で売却計画に支障か

インドネシア預金保険公社(LPS)の監督下で経営再建中のムティアラ銀行(旧・センチュリー銀行)は今年1‐3月期決算で最終利益が前年比57%減と大幅減益となったことから、今後、同行の売却計画に支障が生じる可能性が出てきた。ジャカルタ・グローブ(電子版)が14日に伝えた。

同行は2008年に経営危機に陥ったため、LPSから6兆7000億ルピア(約670億円)の緊急金融支援を受け経営再建中となっている。現在、LPSは同行の株式99%を保有しており、救済から3年以内に同行の持ち株のすべてを売却することが義務づけられているため、2011年と2012年に売却先を模索した。しかし、売却額をめぐって折り合わず合意に至っていない。今年は買収価格にかかわらず、最高額を提示した売却先に売却しなければならない状況で、これまでのところ、ヤワドウィパの複数の企業や有料道路建設・運営大手チトラ・マルガ・ヌサファラ・プルサダが同行の買収に関心を示しているという。

ムティアラ銀行が14日に発表した1‐3月期決算は、営業費用が前年比97%増となったため、最終利益は同57%減の186億ルピア(約1億9000万円)にとどまっている。

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ベトナム航空、2カ月以内に、新規株式公開に向けて書類手続き開始か

国営ベトナム航空は今後2カ月以内に、新規株式公開(IPO)に向けて、必要な書類手続きの準備に入るもようだ。ベトナム通信(電子版)が15日に地元紙地元証券新聞ダウ・トゥ・チュン・コアンの報道を引用して伝えた。

同航空はすでに4月に、IPOに関するコンサルティング契約を米証券大手モルガンスタンレーや米金融大手シティグループ、ベトナム投資開発銀行(BIDV)傘下のBIDV証券、企業価値算定サービス大手ベトナム・バリュエーション・ファイナンス・コンサルタンシーと結んでおり、6月までに目論見書や業績評価所など必要な書類を作成する。そのあと、正式に投資家に向け、具体的なIPOのスケジュールを発表するもよう。同航空はIPOで発行済み株式の20‐30%を売却し、少なくとも2億ドル(約200億円)の資金を調達すると見られている。

同航空はIPOの実施時期については明らかにしていないが、ディン・ラ・タン交通運輸相は3月に、同航空に対し、IPOは今年末までに完了するよう要請している。一方、市場関係者は書類準備に着手したとはいえ、IPOが必ずしも近いうちに行われる保証はないと慎重な見方だ。

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ベトナム民間航空局、交通運輸省に空港事業への外資参入を要請

ベトナム民間航空局(CAAV)はこのほど、交通運輸省に対し、国内の空港ターミナルの管理・運営に外国企業が参加できるよう資格要件などの規制を緩和するよう要請した。ベトナム通信(電子版)が15日に伝えた。

これはCAAVのライ・スアン・タイン局長がベトナム紙トイチェーに対し明らかにしたもので、同局長は、外国企業の空港ターミナル運営への参入が認められれば、地方航空市場のテコ入れに寄与すると指摘している。

政府は2012-2020年の空港整備基本計画で、全国の空港ターミナルの補修工事や近代化工事で221兆ドン(約1.1兆円)の資金が必要になるとしているが、同局長は全額を国に依存することはできないとし、その上で、「最新の技術と空港ターミナルの管理・運営ノウハウ、さらには強い財務力を持った外国の投資家からの資金支援が必要だ」と述べている。

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ブラジルのイタウ・ウニバンコ、米シティ傘下のクレディカードを買収へ

ブラジル金融大手イタウ・ウニバンコは14日、米金融大手シティグループ傘下のブラジルのクレジットカード会社クレディカードを27億7000万レアル(約1400億円)で買収することで合意した。これによって、シティグループはクレディカードの売却により税引き後で3億ドル(約310億円)の売却益を計上するとしている。

今回の合意に基づいて、イタウ・ウニバンコはクレディカードの昨年末時点で480万人のカード利用者と32億6000万ドル(約3300億円)の消費者ローン残高と96カ所の営業店舗を引き継ぐ。この中にはクレディカードのブランドを使っている他のクレジットカードや個人ローンのポートフォリオも含まれる。ただし、コーポレットカードとシティカード、ダイナースクラブカードのポートフォリオは除外される。

また、プラチナカードとアメリカン・エアラインズカードはシティブランドに移管され、シティが引き続き管理する。さらに、シティバンク銀行のブラジル国内の支店網(128店舗)は今回の合意の影響は受けないとしている。

クレディカードのブラジル市場(契約者数)のシェアは5%で、この買収により、イタウ・ウニバンコのクレジットカードシェアは現在の35%から40%となる。

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ロシア中銀、リファイナンス金利を据え置き―長めのオペ金利は再引き下げ

ロシア中銀は15日の理事会で、主要政策金利であるリファイナンス金利を現行の8.25%のまま据え置いた。

また、資金吸収のための預金金利(翌日物、1週間物、1カ月物)も現行の4.50%、資金供給のための翌日物通貨(ルーブル)スワップ金利やロンバードローン金利も6.50%のまま据え置かれた。他方、それ以外の資金供給のための3‐12カ月の長めの公開市場操作(オペ)金利と90‐365日の市中銀行への有担保貸付金利は、前回に続いて再び、各0.25%ポイント引き下げられた。引き下げは16日から実施される。

同中銀は声明文で、据え置きについて、「インフレと景気の両方のリスクを検討した結果だ」としている。ただ、資金供給のための長期の公開市場操作(オペ)金利の引き下げについては、「マネーマーケットの金利水準に及ぼす影響は大きくはないにしても、金融機関が中銀から調達する資金のコストを主要な資金供給のためのオペ金利の水準にまで引き下げ、金融政策の効果を強めるのに役立つ」と述べている。

インフレリスクについては、同中銀は声明文で、「4月と5月初めのインフレ率は依然、物価目標(5-6%上昇)を上回っており、5月13日時点のインフレ率は推定7.2%上昇となっている。これは食料品などの物価上昇によるもので、長期にわたって物価目標を上回ればインフレ期待に影響を及ぼしインフレリスクになる」と、前回4月会合と同様にインフレ懸念を示した。

しかし、その一方で、「中銀は、現在の金融政策のスタンスが維持され、インフレ期待も安定し、食料品物価に急激な変化も起きないことを前提条件として、インフレ率は今年下期(7‐12月)に物価目標に戻ると予想している」と述べ、楽観的なインフレの先行き見通しを示した。この文言は前回会合時からは変わっていない。

一方、景気リスクについては、声明文では、「1‐3月期の経済成長は依然として減速しており、特に世界経済の後退によって、ロシア経済の成長が一段と鈍化するリスクが依然として残る」と、引き続き景気の先行きに懸念を示している。

その上で、中銀は、「インフレリスクと景気後退リスクを引き続き注視し、金融政策決定はインフレ目標と経済成長見通しの両面で判断して行われる」と、前回会合と同じ文言を使っている。

また、次回の金融政策会合の開催時期については、6月前半に開かれるとしている。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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