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主な新興国経済ニュース(5月15日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ブルガリア総選挙、GERB党が第1党の座を維持も議席減らす

今年2月にブルガリアのボイコ・ボリソフ首相(当時)が電気料金の値上げに反対する市民の抗議デモが全国規模に拡大し社会混乱が生じた責任を取って内閣を総辞職したのを受けて、今月12日に実施された議会総選挙は、選挙前で政権与党だったGERB党が予想通り、30.74%の得票率を獲得し、全240議席のうち97議席を占め、再び第1党の座に確保する見通しだ。ソフィア通信社(電子版)が13日に伝えた。

GERB党は第1党となる見通しだが、前回2009年選挙時の獲得議席数116議席からは20議席近くも減らしている。それとは対照的に、選挙前で第2党だった中道左派・ブルガリア社会党(BSP)は得票率27.06%で、2005年選挙時の82議席を上回る87議席を獲得する見通し。これは1994年の125議席以来となるもので大躍進した。さらに、第3党のトルコ系政党「権利と自由運動」(MRF)は得票率10.46%で2009年選挙時の37議席を下回る33議席を獲得する見通し。

ボリソフ前首相は、チェコ電力大手CEZの現地法人ブルガリアCEZによる電気・暖房料金の大幅引き上げに抗議する大規模な市民デモが2月中旬から首都ソフィアなど全国20都市余りで起きた事態を重く受けとめ、早期の混乱収拾を図るため、2月21日に内閣を総辞職している。

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ハンガリー1‐3月期GDP伸び率、前年比1.3%減か―市場予想

ハンガリー中央統計局(KSH)は15日に同国の今年1‐3月期GDP(国内総生産)伸び率(速報値)を発表する予定だが、ハンガリー経済専門サイト、ポートフォリオが13日までにまとめた13人のアナリストによる事前予測によると、市場予想のコンセンサスは前年比1.3%減(予想レンジは0.7%減~1.6%減)となっている。これは前期(昨年10‐12月期)の同2.7%減に続いて5四半期連続のマイナス成長となる。

しかし、今回のエコノミスト調査では、年初来の鉱工業生産が改善してきていることから、米金融大手シティバンクでは1‐3月期は前期比ベースでは0.3%増となり、リセッション(景気失速)を脱したといえる、と指摘している。

また、工場休止など一時的要因で大幅なマイナス成長となった昨年10‐12月期のGDP伸び率2.7%減(速報値)についても、シティは前年比1.3%減と、減少幅がほぼ半減したと予想しており、KSHは15日のGDP統計発表の際、昨年10‐12月期GDP伸び率を大幅に上方改定する、と見ている。

エコノミスト調査では、今年の成長率のコンセンサスは0.2%増(予想レンジは0.2%減~0.8%増)、来年の成長率のコンセンサスは1.5%増(同1%増~2.6%増)となっている。

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インドネシア大統領、新財務相にバスリ投資調整庁長官任命か

インドネシアのスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領は、今月23日に中央銀行の新総裁に就任する予定のアグス・マルトワルドヨ前財務相の後任として、投資調整庁(BKPM)のハティブ・バスリ長官を任命するもようだ。これは暫定的に財務相を兼任しているハッタ・ラジャサ経済担当調整相が明らかにしたもの。ジャカルタ・グローブ(電子版)が14日に伝えた。

ラジャサ経済担当調整相は、新財務相候補について、「我々は内閣から(新財務相を)選びたい考えで、政治家の起用は考えていない。バスリ長官はその道の専門家だ」と述べている。新財務相の当面の課題は、財政赤字の抑制となる。ユドヨノ大統領は先月、今年の財政赤字は、燃料補助金を削減しなければ、政府目標の対GDP(国内総生産)比2.4%を上回る3.8%に達し、法律で規制されている3%を超える可能性がある、と警告している。

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ベトナム自工会:4月新車販売台数、前月比4.8%増の8780台

ベトナム自動車工業会(VAMA)がこのほど発表した4月の新車販売台数(乗用車とトラック、バス)は前月比4.8%増(前年比26%増)の約8780台となり、ベトナムの自動車販売は新車登録料の引き下げなど政府の自動車振興策に支えられてここ数カ月、好調を持続している。1‐4月の累計販売台数も前年比3%増の3万0410台となった。ベトナム通信(電子版)が14日に伝えた。

4月の新車販売をリードしたのはトヨタ自動車<7203.T>で、前月比14%増の2772台、次いで、地場のチュオンハイ自動車が同11.2%増の2270台、米自動車大手フォード・モーターが同38%増の約700台となった。

また、VAMAでは今年の新車販売台数の見通しを従来予想の前年比8%増の約10万台から10万3000台に上方修正した。

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ブラジル石油大手ペトロブラス、1.1兆円のグローバル債を発行

ブラジル国営石油大手ペトロブラスは13日、新興国の企業としては過去最高額の110億ドル(約1.1兆円)のグローバル債を発行した。今回のグローバル債の発行は、同社が3月中旬に発表した2013-2017年の5カ年中期事業計画の総額2367億ドル(約24兆円)の投資に必要な資金を調達するために行われたものだ。オ・エスタド・ジ・サンパウロ紙(電子版)が伝えた。

このグローバル債は6種類のドル建て債券で期間は3‐30年となっている。関係筋によると、同社のグローバル債には投資家から募集予定額の約4倍の450億ドル(4.6兆円)に達した。今年初め、同社のアウミール・バルバッサCFO(最高財務責任者)は今年だけで社債発行や銀行借り入れで約200億ドル(約2兆円)の資金を調達する意向を明らかにしているが、同社は4月に今回のグローバル債に先行して、資本市場以外で70億ドル(約7100億円)を調達している。

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ブラジル財務省ナンバー2のバルボサ次官、6月退任へ

ブラジルのギド・マンテガ財務相の後継者として知られる財務省ナンバー2のネルソン・バルボサ次官が6月に退任する見通しとなった。これは財務省が13日に同省のウェブサイト上で明らかにしたもの。オ・エスタド・ジ・サンパウロ紙(電子版)が伝えた。

同次官は、表向きは、「一身上の理由」として、マンテガ財務相に辞表を提出したとされているが、バルボサ氏のポストを狙うブラジル国庫庁のアルノー・アウグスティン長官との確執があったと見られている。バルボサ氏は2003年に政府入りし、マンテガ財務相が企画・予算・運営相だった当時にマンテガ・チームに参加し、主に経済政策畑を経て、2011年に前任の次官だったネルソン・マシャード氏の跡を継いでいる。

バルボサ氏は次官となった当初は、ジルマ・ルセフ大統領の側近として、頻繁に外遊に同行していたため、マンテガ財務相との関係が一時悪化したが、その後は同行する頻度も減り、マンテガ財務相との関係は良好だったといわれる。今後、マンテガ財務相はバルボサ次官の後任として、暫定的にディオゴ・オリベイラ次官補を任命するもようだ。

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インドネシア中銀、インフレ警戒示す―金利据え置きでも

インドネシア中央銀行(BI)は14日の理事会で、政策金利である翌日物BI金利を現行の5.75%のまま据え置くことを決めたが、理事会後に発表した声明文で、インフレに対する警戒感を示している。

声明文では、インフレの現状認識について、「BI金利は依然として、中銀の2013年と2014年の物価目標(4.5%プラスマイナス1%)と整合性のある水準となっている」と、述べたものの、インフレの先行き見通しについては、「4月の消費者物価指数(CPI)は低下(前月比0.1%低下、前年比5.75%上昇)したとはいえ、燃料補助金の削減に伴うインフレ期待の上昇によるインフレ圧力を依然警戒している」とし、インフレを意識した文言に変わった。

実際、前回4月会合の声明文では、「政府はすでに輸入規制によって生じた食料品供給の混乱を鎮める対策を講じていることや、これから農産物の収穫期に入ることから、インフレ圧力は緩和すると見られる」と、楽観的に見ていた。

一部のエコノミストは、4月の会合時でも3月のCPIが物価目標を超えたことから、また、自国通貨ルピアが昨年の対ドルで約6%低下し、今年1‐3月期はさらに約0.7%低下してルピア安に歯止めがかからないため、早晩、インフレ抑制とルピア安阻止を狙って、利上げに転換するとの見方を示している。

一方、中銀は景気の現状認識について、声明文で、「1‐3月期GDP(国内総生産)伸び率が6.02%増となったが、前期の6.11%増から伸びが鈍化しており、中銀予想の6.2%増を下回った。これは内需の低迷と輸出の回復も限定的となったため」とした。その上で、「4‐6月期GDP伸び率は従来予想を下回り、1‐3月期の伸び率とはかなり異なるものになると見ている」とし、先行きに悲観的な見方を示した。これより先、中銀は、前回4月の会合で、今年の経済成長率見通しを3月予想時の6.3‐6.8%増から6.2‐6.6%増へ下方修正している。

次回の金融政策決定会合は6月13日に開かれる予定。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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