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主な新興国経済ニュース(5月9日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

露インターネット最大手ヤンデックス、自社株買い規模を20%に拡大か

ロシアのインターネットサービス最大手ヤンデックスは米証券取引委員会(SEC)に提出した報告書で、今後1年半以内に発行済み株式の3.65%を対象に自社株買いを実施するという現行の計画を変更し、自社株買いの規模を20%に拡大する方針を明らかにした。ロシアのプライム通信(電子版)が7日に伝えた。

同社では、この規模拡大について、21日の株主総会で議論するとしている。同社はすでに3月に1200万株の自社株買いプログラムを開始し、これに対し株主から7.38%相当の株式が売りに出された。先月24日に発表された1‐3月期決算では合計で200万株を買い戻したとしている。

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カナダ最大の年金基金PSP、ハンガリー・ブタペスト空港の49%取得

カナダ最大の年金基金PSPインベストメンツはこのほど、ハンガリーの首都ブタペストのリスト・フェレンツ国際空港の株式49%をスペイン建設大手ホフティフの空港運用子会社ホフティフ・エアポートから買い取ったもようだ。ハンガリー経済専門サイト、ポートフォリオが7日に地元紙ネープサバッチャーグの報道を引用して伝えた。

これまで市場ではホフティフがブタペストのほかにシドニーやデュッセルドルフ、ハンブルグ、アテネ、ティラナ(アルバニア)の5空港の株式売却も検討しているとの憶測が広がっていた。リスト・フェレンツ空港の残りの株式51%はカナダのケベック州投資信託銀行やシンガポール政府投資公社GIC傘下のプライベートエクイティ(PE)ファンド、GICスペシャル・インベストメンツなど4社が引き続き保有する。

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インドネシア政府、今年の経済成長率目標を6.2‐6.3%増に引き下げへ

インドネシアのハッタ・ラジャサ経済担当調整相は7日の会見で、同国の今年のGDP(国内総生産)伸び率の政府目標を従来予想の6.8%増から6.2‐6.3%増へ下方修正する方針を明らかにした。地元経済紙ビジネス・インドネシア(電子版)が8日に伝えた。

同相はこの政府達成目標は今年度の補正予算案に盛り込まれるとしている。また、今度の補正予算には懸案となっている燃料補助金の削減も含まれる見通しだ。同相は当面の経済政策については、スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領の指示に従って、経済成長率を加速させるため、今後は財政支出を拡大していく考えも明らかにした。ちなみに、1‐3月期GDP伸び率は前年比6.02%増にとどまっている。

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インドネシア1-4月期新車販売、18%増―ホンダとスズキが好調

インドネシアの地元紙インベスター・デイリー(電子版)がこのほど、独自にまとめた同国の1‐4月の新車販売台数は、前年比18%増の39万79991台となり、今年の新車販売台数の伸びが前年並みと予想される中で、好調な滑り出しを見せていることが明らかになった。

特に、日本勢ではホンダ<7267.T>が前年比182%増の3万3479台、また、スズキ<7269.T>も同78%増の4万9839台と、群を抜いた高い伸びを示した。トヨタ自動車<7203.T>は同10%増の14万3667台、ダイハツ工業<7262.T>は同7%増の5万7623台、三菱自動車<7211.T>は同8%増の5万2411台となっている。

インドネシア自動車工業会(ガイキンド)は、今年の新車販売台数は昨年並みの約110万台と予想しているが、米市場調査会社フロスト&サリバンでは自動車メーカー各社が低燃費の格安車を導入すれば今年の新車販売台数は前年比7.5%増の120万台になる可能性があると指摘している。

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シンガポール小売最大手NTUC、ベトナムにハイパーマーケット進出へ

シンガポール小売最大手NTUCフェアプライスはこのほど、ベトナムの同業大手地元紙サイゴンコープと合弁会社を設立し、ベトナム国内の2カ所にハイパーマーケット(郊外型の大型スーパー)を近くオープンする。すでに両社はベトナム当局から事業認可を取得している。ベトナム通信(電子版)が7日に伝えた。

両社はベトナム国内で、「コープエクストラ(Co.opXtra)」と「コープエクストラ・プラス(Co.opXtra Plus)」のブランド名で事業展開する計画。第1号店はホーチミンに600万ドル(約5億9000万円)を投じて建設され、今月中旬には営業を開始する予定だ。

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ブラジル4月自動車生産台数、前月比7%増-販売も同16%増

ブラジル自動車工業会(ANFAVEA)が7日に発表した4月の国内自動車生産台数(乗用車・バス・トラック)は乗用車が工業製品税(IPI)減税で堅調となったことから、前月比6.8%増(前年比30.7%増)の34万0865台と、3月の同39.2%増に続いて2カ月連続の増加となった。

内訳は、乗用車と商用車は前月比6.9%増の31万9038台となった。前年比も29.4%増と前年水準を上回った。他方、トラックは前月比7%増(前年比56.5%増)の1万8136台。バスも前月比2.9%減(前年比42.2%増)の3691台となった。

この結果、1-4月期の全自動車生産台数は前年同期比17%増の116万8592台。自工会では2013年全体では前年比4.5%増の約350万台になるとの予想は変えていない。

一方、自工会が同時に発表した4月の新車販売台数(バス・トラック含む)も前月比16.4%増(前年比33.5%増)の26万6342台と、2カ月連続の増加となった。内訳は、乗用車と商用車は同16.9%増(同33.8%増)の24万9841台、トラックは同14.2%増(同29.6%増)の1万3716台。バスは同8.4%減(同27.3%増)の2785台となった。また、1‐4月期の全体の販売台数は前年比33.5%増の92万3881台だった。2013年全体では3.5‐4.5%増の390万‐400万台を見込んでいる。

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ポーランド中銀、政策金利を過去最低水準に引き下げ

ポーランド中銀は8日の金融政策委員会(RPP)で、景気を刺激するため、主要政策金利の7日物レファレンス金利を0.25%ポイント引き下げて過去最低水準の3%とすることを決めた。9日から実施される。

また、中銀は他のロンバート金利と預金金利、再割引金利もそれぞれ0.25%ポイント引き下げて4. 5%、1.5%、3.25%とした。

7日物レファレンス金利は昨年11月の会合で3年5カ月ぶりに利下げに転換して以降、今年3月の会合まで5回連続で引き下げられ、前回4月の会合で初めて据え置かれた。しかし、今回の会合では再び引き下げられた。市場予想ではアナリストやエコノミストの7割近くが据え置きを予想していた。

これより先、中銀の金融政策委員であるアンナ・ジェリンスカ・グウェンボカ氏は4月中旬の地元テレビ局のインタビューで、「金融政策委員会は現在、様子見の姿勢を維持しており、これは1‐2カ月続く可能性がある。しかし、インフレが抑制される見通しがあれば、中銀は再利下げを行う余地がある」と述べ、早ければ5月の再利下げに含みを残していた。

実際、3月のCPI(消費者物価指数)は前年比1%上昇と、2006年6月以来、約7年ぶりの低水準にまで鈍化している。このため、一部のエコノミストは、同国のインフレ率は今後数カ月間、中銀の物価目標レンジ(1.5-3.5%上昇)内にとどまる可能性があることから、中銀は景気回復を支えるため、利下げを続ける可能性があると見ている。

次回の金融政策決定会合は6月4-5日に開かれる予定。

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三井住友銀行、インドネシア金融大手BTPNに最大40%出資で合意

三井住友銀行は8日、インドネシアを含むアジアでの事業の多角化を目指すため、インドネシア金融大手、タブンガン・ペンシウナン・ナショナル(BTPN)に最大40%出資して提携関係を結ぶことで合意したことを明らかにした。

合意では、まず、同行がBTPNの株式24.26%に相当する14億1685万株を1株当たり6500ルピア(約65円)で今月8‐10日の期間で取得する。取得総額は約9兆2100億ルピア(約920億円)。その後も同行はBTPNの株式を追加取得し、最終的には40%にまでを出資比率を引き上げるとしている。

今回、合意した取得価格はBTPNの株価に対し、14%のプレミアム(上乗せ額)となっており、その大半はBTPNの71.6%を保有している米プライベートエクイティ(PE)ファンド大手TPGキャピタルから買い取る。

同行は発表文で、「世界4位の人口と中間層の拡大により、今後も継続的に高い経済成長が見込まれるインドネシアでリテール業務に強みを持つBTPNに出資することで、インドネシアを含めたアジアでの業務の多様化を進める」としている。

BTPNの本店は首都ジャカルタで、総資産は59兆0901億ルピア(約5910億円)。国内拠点数は1140カ所となっている。

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ロシアのスルコフ副首相兼官房長官が辞任-内部の権力闘争との声も

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は8日、大統領府のストラテジスト(国内政策担当)と知られるウラジスラフ・スルコフ副首相兼官房長官の辞任届を受理し、これを了承した。ノーボスチ通信などが伝えた。

スルコフ氏は2011年にドミトリー・メドベージェフ大統領(当時、現在は首相)によって副首相に任命されている。大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、スルコフ氏の辞任について、「これはプーチン大統領が昨年5月に決定したことを粛々と実行に移した」とだけ述べ、詳細については明らかにしていない。

一部の政治アナリストは、スルコフ副首相の辞任は、ロシア政権内部で長く続いている権力闘争と関係していると指摘する一方で、プーチン政権寄りのアナリストは、最近の政府運営の不甲斐なさと関係があり、プーチン大統領がスルコフ副首相の職務遂行に不満を持っていたためだ、との見方がある。他方、プーチン大統領のシロヴィキ(治安・国防関係省庁の職員とその出身者)重視の右傾化が進む可能性が出てきたと危惧する声もある。

今後、スルコフ氏の副首相としての職務(国家近代化政策担当)はアルカディ・ドボルコビッチ副首相、また、官房長官の職務は当分の間、アレクサンドラ・レビツカヤとセルゲイ・プリホジコの両副長官に引き継がれる。  (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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