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主な新興国経済ニュース(3月18日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

【ロシア‐3月18日】3月11-15日のRTS指数、1537.66―2週続伸=BRICs市況

前週(3月11日-15日)のロシア株式市場で、RTS指数(ドル建て)は15日終値が前週比0.4%高の1537.66となり、2週連続で上昇した。

週初11日のRTS指数は、前週末に発表された米国の2月雇用統計(8日)が強い結果となったことを受けて米株市場が上昇したことから、前週末比0.5%高の1539.87と上昇した。翌12日もスペインとイタリアの国債入札が順調だったことから原油先物が上昇したのを受けて5営業日連続の続伸となった。しかし、13日は国営天然ガス大手ガスプロムが天然ガスの対中輸出拡大のニュースで2.4%高となったものの、欧州の経済指標の悪化やイタリア国債の入札不調などでRTS指数は反落。

14日は米国の新規失業保険給付申請件数やEU(欧州連合)サミットでキプロスとギリシャに対する金融支援策が決まったことでRTS指数は反発し、週末15日も米株高や黒田東彦アジア開銀総裁の日銀新総裁就任の人事案が国会で同意されたことからアジア株も上昇するなどロシア株にとっては追い風となり、RTS指数は続伸となった。

今週(3月18日-22日)のロシア市場は、米国の2月住宅着工統計(19日)やFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会、19-20日)などの重要イベントが予定されているが利食い売りや調整売りが予想されるため、ロシア株も売りが先行すると見られる。

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【ロシア‐3月18日】中銀、主要政策金利を据え置き―バイアスはハト派寄りに

ロシア中銀は15日の理事会で、主要政策金利であるリファイナンス金利を現行の8.25%のまま据え置いた。市場の予想通りだった。また、資金吸収のための預金金利(翌日物、1週間物、1カ月物)も現行の4.50%、資金供給のための翌日物通貨(ルーブル)スワップ金利も6.50%のままに、それ以外の資金供給のための各種の公開市場操作(オペ)金利も据え置いた。

同中銀は声明文で、据え置きについて、「インフレと景気の両方のリスクを検討した結果だ」としている。しかし、前回2月の会合と比べ声明文では景気に対する懸念が一段と強まり、バイアス(金融政策に対する姿勢)はインフレに対しハト派(景気リスク重視の金融緩和派)寄りとなった。

インフレリスクについては、同中銀は声明文で、「2月のインフレ率は(前月比引き続き)前年比7.3%上昇と、物価目標(5-6%上昇)の上限を大幅に上回った。これは食料品などの物価上昇によるものだが、今年上期(1-6月)のインフレ率は物価目標を上回るとの中銀予想と一致した動きとなっている。長期にわたって物価目標を上回ればインフレ期待に影響を及ぼしインフレリスクとなる」と、前回2月会合と同様にインフレ懸念を示している。前回2月会合時との違いは「上期のインフレ率は物価目標を上回るとの中銀予想と一致した動き」の文言が追加されている点だ。

他方、景気リスクについては、前回2月の会合時では、「GDP(国内総生産)は潜在成長率に近い水準を維持しており、依然として銀行貸し出しの伸びが比較的高水準となっていることを考慮すると、(過去に実施された)金融引き締めの影響で景気が今後著しく後退するリスクは小さい」とし、景気の先行きについて楽観的に見ていたが、今回は、「潜在成長率に近い水準」や「景気が今後著しく後退するリスクは小さい」という文言が削除され、インフレに対しハト派寄りとなっている。

また、中銀は声明文で、「現在の政策金利はインフレと経済成長の両リスクのバランスを維持する上で適切な水準だ」とし、その上で、「インフレリスクと景気後退リスクを引き続き注視し、金融政策決定はインフレ目標と経済成長見通しの両面で判断して行われる」としている。

ロシアのプライム通信(電子版)によると、この点に関し、6月に任期満了に伴い退任する同中銀のセルゲイ・イグナチェフ総裁は2月に、インフレ率は今後数カ月以内に低下すると見られ利下げに転じる可能性があると指摘しているが、アナリストはインフレ率が6月までに相当程度低下する可能性はないとし、早期の利下げには否定的に見ている。

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【インドネシア‐3月18日】三菱東京UFJ、商業銀行BTPNの株式取得目指す

三菱東京UFJ銀行(三菱UFJフィナンシャルグループ<8306.T>)はインドネシアの商業銀行バンク・タブンガン・ペンシウナン・ナショナル(BTPN)の株式取得を検討している。ジャカルタ・ポスト(電子版)が15日に三菱東京UFJの林哲久ジャカルタ副支店長の話として伝えた。

BTPNの買収をめぐっては、一部報道(米ブルームバーグ)で三井住友銀行(三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>)も米プライベートエクイティ(PE)ファンド大手のTPGキャピタルからBTPNの保有株58%を17億ドル(約1620億円)で取得するため、協議に入っており、争奪戦の模様を呈してきている。三菱東京UFJ銀行もTPGキャピタルからBTPNの保有株58%を16億ドル(約1530億円)で取得する提示を行っているもようだ。

三菱東京UFJは2007年12月にインドネシアでのリテール金融事業の拡大を狙って、地場銀行のバンク・ヌサンタラ・パラヒャンガンの発行済み株式20%を取得(現在の持ち株比率は15%)しており、今回の地場銀行の買収はそれ以来となる。

現在、三菱東京UFJは首都ジャカルタ市内に7店舗を保有するほか、ジャワ島西部のバンドンや東ジャワ州スラバヤにも店舗を保有。同行は海外、特にアジア市場への進出を強めており、守村卓副頭取(国際部門担当)によると、同行はフィリピンでも複数の銀行の買収を検討しているという。

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【インドネシア-3月18日】トヨタ、西ジャワ州の第2工場の操業を開始-年産2倍増に

トヨタ自動車<7203.T>のインドネシア法人、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・インドネシア(TMMIN)が3兆3000億ルピア(約320億円)を投じて、インドネシアの西ジャワ州カラワンに建設中だった第2工場が完成し、15日から操業を開始した。ジャカルタ・グローブ(電子版)が16日に伝えた。

新工場では市場の拡大が見込めるファミリー中間層向けの新型ハッチバック車「エティオス・バルコ」(排気量1.2リットル)」を生産する。年間生産能力は第1工場の11万台と合わせ、現在の2倍超の25万台となる見通し。

ただ、新工場の当初の生産台数は7万台で、その後、段階的に生産を拡大し、2014年初めまでに12万台に引き上げる計画。また、新工場の稼働に合わせ、新規に約1100人の従業員を採用する。

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【ベトナム‐3月18日】財務省、2020年を最終年度とする国内債券市場の規模拡大計画を策定

インドネシア財務省は金融システムの安定を図るため、2020年を最終年度とする国内債券流通・発行市場の規模拡大計画を策定した。ベトナム通信(電子版)が15日に伝えた。

債券流通市場については、債券発行残高の規模を2011年の対GDP(国内総生産)比18%から2020年までに約2倍の38%に拡大する。このうち、国債は同22%、社債は同7%、残りの同9%は政府保証債や地方債とするとしている。

また、政府は国債発行年限も2013-2015年は4‐6年、2016‐2020年は6‐8年にするほか、保険会社が保有する国債と政府保証債の比率も2011年の12%から2020年までに20%に高めるとしている。

政府はこうした目標を達成するために、債券投資がしやすくするような減税や手数料の軽減や、ハノイ証券取引所での国債と政府保証債の取引の透明性を高めるため、銘柄別の利回り情報の提供などの対策を講じる。

他方、債券発行市場の拡大では、債券発行体を拡大する一方で、投資家の需要に合わせた債券発行計画の策定も行う。また、財務省国庫局も今年の国債発行額を昨年の141兆ドン(約6500億円)から過去最高の150兆ドン(約6900億円)に引き上げる方針をすでに明らかにしている。

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【ブラジル-3月18日】中銀1月経済活動指数、前年比1.29%上昇-約5年ぶり高い伸び

ブラジル中央銀行(BC)が15日に発表した1月の経済活動指数(IBC-Br、2002年=100)は季節調整後で、前月比1.29%上昇の144.64と、昨年12月の同0.45%低下(改定前は0.26%上昇)から上昇に転じた。1月のデータとしては2004年1月の同1.99%上昇以来9年ぶりの高い伸び、また、単月でも2008年6月の同3.17%上昇以来4年7カ月ぶりの高い伸びとなり、今年に入って景気回復のペースが速まったことを示している。

また、2012年全体の同指数(季節調整前)は前年比1.64%上昇から同0.65%上昇に下方改定された。

前年同月比(季節調整前)では3.84%上昇の138.20となり、12月の同3.32%低下から上昇に転じたものの、市場予想の中央値である4.5%上昇を下回った。

同指数は製造業と非製造業、農業の3部門のデータで構成されており、中銀の政策金利(セリック)である翌日物金利誘導目標を決定する際に、ブラジルの経済活動の動向を評価する上で重要な指標となっている。

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【ブラジル‐3月18日】大統領、農業・労働・航空の経済3閣僚を更迭

ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は先週末、内閣改造の一環として、経済関連の3閣僚を更迭した。中南米専門の通信社メルコプレス(電子版)が16日に伝えた。

更迭された3閣僚は、まず、脳腫瘍の手術を受け療養中のメンデス・リベイロ農業畜産食糧供給相とブリゾラ・ネト労働雇用相、バグネル・ビッテンクール民間航空庁長官で、それぞれアントニオ・アンドラデ下院議員(ミナスジェライス州選出)、連立与党の民主労働党(PDT)のマノエル・ディアス幹事長、モレイラ・フランコ大統領府戦略担当長長官が指名された。

もう一人の重要な経済閣僚であるギド・マンテガ財務相は、同国の昨年のGDP(国内総生産)伸び率がわずか0.9%増にとどまったものの、留任する。このほか、ルセフ大統領は新設が決まった中小・零細企業相を与党内から選出する予定だ。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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