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ブラジル中銀、早ければ4月にも利上げに転換か―インフレ加速警戒で

増谷栄一The US-Euro Economic File代表
ブラジル中銀のアレシャンドレ・トンビニ総裁=中銀サイトより
ブラジル中銀のアレシャンドレ・トンビニ総裁=中銀サイトより

ブラジル中央銀行(BCB)は6日の金融政策決定委員会で、政策金利(セリック)である翌日物金利誘導目標を7.25%に維持することを全員一致で決めたが、会合後に発表された声明文で、インフレ加速に対する警戒感を強めていることが明らかになった。このため、市場関係者は早ければ次回の金融政策決定委員会(4月16-17日)にも中銀は利上げに転換するかもしれないとの見方が出てきた。

中銀は昨年8月にセリックを12.5%から12%に引き下げて以降、利下げキャンペーンに転換している。昨年10月の会合まで10回連続で引き下げ、セリックの引き下げ幅も合計で5.25%ポイントに達した。ただ、その後、11月の会合で初めて政策金利を据え置き、利下げサイクルに終止符を打ち、今回を含め3回連続で据え置いた。前回同様、アレシャンドレ・トンビニ総裁ら7人の委員が全員一致で現状維持を決めている。

前回1月の会合後に発表された声明文では、ブラジル中銀は、「インフレリスクが短期的に悪化する一方で、景気回復は思ったほど強くはない。こうしたインフレリスクと景気回復の両リスクのバランスと今日の複雑な世界情勢を考えれば、十分に長期にわたって金融状況を安定させることがインフレを物価目標に近づける上で最も適切な戦略だ」と述べたことから、市場では今年末まで現状のまま据え置かれると予想していた。

しかし、今回の声明文では、この文言がそっくり削除され、その代わりに「中銀は次回会合時までマクロ経済のシナリオがどう推移するかを見てから、次の金融政策の戦略を定義する」と述べている。この点について、ブラジルのアナリストらは、中銀は前回1月の会合以降、インフレ見通しが悪化していることから、政策金利を長期にわたって据え置く戦略は取らないことを示唆したとし、早い時期に利上げに転換する可能性が高まったと見ているのだ。

また、今回の声明文では、「the convergence of inflation to the target(インフレ目標に向かわせる)」という文言が削除された。1月24日に発表された金融政策決定委員会の議事録(1月15-16日開催分)では「金融政策委員会の戦略はインフレ率を物価目標と一致する軌道に確実に乗せることであり、それには軌道から外れた場合にはすぐに是正することが求められる」とし、 “均一に(linear way)”に物価目標が達成される必要性を強調していた。

しかし、前回会合後からインフレ見通しは中銀の物価目標(2.5-6.5%)の上限である6.5%に一段と接近しており、アナリストは今年半ばごろまでには物価目標を超える可能性があると見ている。1月のIPCA(拡大消費者物価指数)は過去12カ月間で6.15%上昇と、昨年12月時点の5.84%上昇から加速している。

他方、中銀が4日に発表した先週の経済週報「フォーカス・ブルティン」によると、同中銀の委託を受けた民間アナリストが予想したIPCAで見たインフレ見通しは、2013年は前週予想の前年比5.69%上昇から5.7%上昇に下方修正(悪化方向)された。また、2013年末時点の政策金利がどうなっているかという予測は、前週予想の7.25%に据え置かれた。2014年末時点の政策金利も従来予想の8.25%上昇に据え置かれた。しかし、市場では今回の声明文を受けて、中銀が年内の早い時期に利上げに転換するという見方を強めている。次回の金融政策決定委員会は4月16-17日に開かれる予定だ。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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