津波被災地で手作りの自然エネ発電:仙台市

「きらきら発電・市民共同発電所」の第1号機(2017年9月10日筆者撮影)

 自然エネルギー発電は「電気」以上に大切な何かを作り出すことがある。

 「今では年間計40万円の固定資産税を塩竃市と仙台市に払っています。『脱原発』を趣味で叫んでいるわけではない。電気を作り、税金を払い、地元経済に寄与しているんです。自信をもってモノを言えるようになった。自然エネルギーは地元活性化になる。」

 そうにこやかに語ってくれたのは、宮城県仙台市を本拠地とするNPO法人「きらきら発電・市民共同発電所」の広幡文(ひろはたあやる)事務局長だ。

 2014年11月にNPOを設立し、各地の太陽光や風力発電所を見に行って、研究を重ね、2016年までに3箇所の太陽光発電所を設置した。

 3000万円の基金が必要と見積もり、一口1万円以上の無利息債(借入金)を有志に呼びかけた。借入金は15年後に返す。2015年4月までの半年で、100人から2000万円の申し込みを受けた。「私たち退職世代は小金を持っていますから。もし本人が死んだら家族に返す。そういう契約です。」

 第1号機の設置は2015年9月。場所は2011年3月11日に津波で被災した仙台市若林区井土浜(いどはま)。36名の犠牲者の名前を刻んだ鎮魂の碑にほど近い平らな土地にある。発電容量は76kW。

 「井土浜は、仙台市が『災害危険区域』(*1)とする案を出したので、ほとんどの人が住宅を解体して移転した場所なんだそうです。ところがその後、指定しないことになり、約100世帯のうち10世帯は戻りましたが、他に住居を確保して戻って来ない地権者から、この土地を使わせてもらえることになりました。」(広幡さん)。

「数日前に草刈りをやったばかりです。」と語る広幡事務局長(2017年9月10日筆者撮影)
「数日前に草刈りをやったばかりです。」と語る広幡事務局長(2017年9月10日筆者撮影)

 第2号機は同太白区の「柳生もりの子保育所」の屋根の上となった。発電容量は30kW。広くて傾斜の緩やかな、おあつらえ向きの屋根だ。

 「保育所の土地は仙台市のもので、私たちが屋根を借りることになった年から、保育所は市に賃料を払うことになっていた年でした。私たちが屋根に払う賃料はその足しになる。また、FIT(固定価格買取制度)が終わる20年後には、その賃料を太陽光パネルの撤去費または更新するための費用にするということで、私たちにとっても助かる契約となりました。」(広幡さん)

保育所の屋根を使った発電(2017年9月10日筆者撮影)
保育所の屋根を使った発電(2017年9月10日筆者撮影)

 第3号機は2016年11月に「塩釜あゆみ保育所」の屋根に付けた。発電容量は17kW。

 FITにより、第1号機~3号機を合わせて現在年間450~490万円の売電収入がある。現在、第4号機目として、小風力発電所の設置を目指していると言う。

 人々の知恵と縁をたぐり寄せて始まったこの取り組みのきっかけは、福島第一原発事故だったという。

 「市民共同出資による自然エネルギー発電所の発電量は、大手電力会社のそれとは比べようもない微々たるものですが、やがては100%自然エネルギーによる電力の時代が来る」(NPO法人「きらきら発電・市民共同発電所」の水戸部秀利理事長)との確信も生んでいる。

 一夜にして実現する夢はない。また、企業が進めるメガソーラー発電についてはトラブルも珍しくなく、その推進には検証も必要だ(*2)。しかし、分散型の自然エネルギーの小さな一歩は、次の確実な一歩を生むヒントを私たちに示しているのではないか。

(*1)災害危険区域:「建築基準法」に基づいて、「地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができる」。また、国は「防災のための集団移転促進事業に係る国の財政上の特別措置等に関する法律」に基づいて、災害危険区域からの集団移転を促進するために、自治体が住宅用地を取得する経費などを補助する仕組みを持つ。仙台市建築指導課によれば、「井土」地区の中でも災害危険区域に指定した場所としなかった場所がある。(参考:仙台市災害危険区域条例の改正及び沿岸部の災害危険区域の指定について

(*2)メガソーラーを巡るトラブル

鬼怒川の無堤地帯「若宮戸」の溢水の真相(2)Y!ニュース (2015年10月18日)

霧ヶ峰南麓に東京ドーム40個分!メガソーラーが地域社会を破壊する!?ハーバービジネスオンライン(2017年03月08日)