北朝鮮への国連決議に背いたのは安倍首相でもある

国連で北朝鮮を「決議2375」のインクも乾かぬうちと批判した安倍首相(写真:ロイター/アフロ)

 9月20日、安倍首相は、国連総会における一般討論演説で「安保理が通した「決議2375」のインクも乾かぬうち、9月15日に北朝鮮はミサイルを発射した」と批判し、次のように述べた。 

 対話による問題解決の試みは、一再ならず、無に帰した。なんの成算あって、我々は三度、同じ過ちを繰り返そうというのでしょう。北朝鮮に、すべての核・弾道ミサイル計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で、放棄させなくてはなりません。そのため必要なのは、対話ではない。圧力なのです。(太字は筆者加筆) 

 ところが、インクも乾かぬうちに「国連安保理決議第2375号」に背いた1人は安倍首相自身ではないか。

 確かに、「決議2375」では、次のように表現されている。

1 北朝鮮が、安全保障理事会の決議に違反し、甚だしく無視して、2017年9月2日に核実験を実施したことを最も強い表現で非難する。

 次のような文言も並ぶ。

14.全ての加盟国が、自国の領域を通じて若しくは自国の国民による、又は自国の旗を掲げる船舶若しくは航空機を用いて北朝鮮への全ての石油精製品の直接又は間接の供給、販売又は移転を禁止することを決定する(略)。

 人道の観点からの文言もある。

25.北朝鮮の乏しい資源が核兵器及び多数の高価な弾道ミサイル計画開発に大量に流用されていることを遺憾とし、栄養失調の危険がある非常に多くの妊娠中の及び授乳中の女性並びに5歳未満の児童さらには慢性の栄養失調に苦しんでいる総人口の4分の1近くを含む、北朝鮮にいる半数を大きく上回る人々が食糧及び医療の大きな不足に苦しんでいるとの国連人道問題調整事務所(OCHA)の調査結果に留意するとともに、この文脈において、北朝鮮にいる人々が受けている深刻な苦難に対し深い懸念を表明する。

 だが、終盤は、以下のように「6者会合」の再開、「対話を通じた平和的かつ包括的な解決」、「緊張を緩和する更なる作業」、「平和的な方法」が強調されている。

28.6者会合への支持を再確認し、その再開を要請するとともに、中国、北朝鮮、日本、大韓民国、ロシア連邦及びアメリカ合衆国によって2005年9月19日に採択された共同声明に定める約束(六者会合の目標は平和的な方法による朝鮮半島の検証可能な非核化であること、アメリカ合衆国及び北朝鮮は相互の主権を尊重し、平和裡に共存することを約束したこと、6者は経済協力を推進することを約束したことを含む。)並びにその他の全ての関連する約束への支持を改めて表明する。

29.朝鮮半島及び北東アジア全体における平和と安定の維持が重要であることを改めて表明し、事態の平和的、外交的かつ政治的解決の約束を表明し、対話を通じた平和的かつ包括的な解決を容易にするための理事国及びその他の国による努力を歓迎するとともに、朝鮮半島内外の緊張を緩和するための取組の重要性を強調する。

30.包括的な解決のための見通しを進展させるため、緊張を緩和する更なる作業を要請する。

31.平和的な方法による朝鮮半島の完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な非核化の目標の達成が必要不可欠であることを強調する。

 さらに、「決議2375」の前文には次のように書かれている。

 憲章に従い、全ての国の主権、領土保全及び政治的独立への約束を強調するとともに、国際連合憲章の目的及び原則を想起し、

 事態の平和的かつ外交的な解決に対する要望を更に表明するとともに、対話を通じた平和的かつ包括的な解決を容易にする理事国及びその他の加盟国の努力に対する歓迎を改めて表明し、

 つまり、「対話」を否定するのであれば、安倍首相自身が「決議2375」に反していることになる。まして、日本は「28」で表明されている「6者」の一員なのだ。

 

 インクも乾かぬうち「決議2375」を守るべき立場を忘れているのは安倍首相である。

自らの「外務大臣談話」と矛盾

 また、河野太郎外務大臣は、「北朝鮮と国交のある160以上の国々に対し「外交関係・経済関係を断つよう強く要求する」と述べた(時事通信)と報じられている。

 しかし、本当にそうするのであれば、それは、9月12日に自らの名前で発した「北朝鮮による核実験等に関する国連安全保障理事会決議の採択について(外務大臣談話)」に矛盾する。そこでは次のように述べたのだ。

 我が国としては、引き続き、「対話と圧力」、「行動対行動」との原則の下、核、ミサイル、拉致といった諸懸案の包括的解決に向けて、米国、韓国を始めとする国際社会と緊密に連携し、積極的に取り組んでいく考えです。

 自らは「対話」と国内外に言いながら、他国に断交を求めるのは、自らの談話にも決議2375にも矛盾することになる。

 決議2375は、その前文で「核、化学及び生物兵器並びにその運搬手段の拡散が、国際の平和及び安全に対する脅威を構成することを再確認」するとしている。

 それならば、日本が取るべき道は、対話の対象を北朝鮮に限定せず、「唯一の戦争被爆国である我が国として」(外務大臣談話の文言)、核兵器禁止条約参加への取り組みを進め、それを北朝鮮との対話のツールに加えることではないか。

核兵器禁止条約の日本語訳全文 署名50カ国 (朝日新聞2017年9月21日)

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons(国連)

関係配信

「米朝:平和協定と非核化に橋を架けるのは誰か」(8月15日)