小児甲状腺がん、把握の必要性:福島県と環境省にズレ

委員と取材・傍聴者を遠く隔てる4列の「医科大学関係者」席(6月5日筆者撮影)

 福島県の小児甲状腺がんの多発と東電事故との因果関係を、国も県も認めていない一方、1次検査の結果、2次検査が必要になった子どもが「経過観察」とされると、その後にがんの摘出手術を受けても検査結果に反映されていない問題についての続報。

 OurPlanet-TVが報じた、福島県立医科大学の研究グループが手術症例の登録データベースを構築していたことについて、環境省に3つの質問をしたが、その回答は次のようなものだった(環境保健部放射線健康管理担当参事官室から翌日に来た回答を9月7日に聞き取り)。

1)環境省は知らなかったのか。

 OurPlanet-TVのホームページなどで(報道が)なされているものだと思うが、文科省の科研費事業(「科学研究費助成事業」の略)で実施されていたものを指していると思う。文科省の事業については環境省の方には報告は受けていない。

2)この報道後にデータベースの中身を入手したか。

 こちらの事業自体は福島県立医科大学が行っているので、個人情報保護の観点からも環境省が入手できるデータではないと考えている。

3)今後の対応をどうするのか。

 6月5日に開催された検討委員会においても、報告の必要性について指摘がされております。今後も環境省としては引き続き福島県民の健康を見守るためにも福島県に対して必要な支援を継続していく。

 ところが、肝心の福島県県民健康調査課では、手術症例を把握するすべを持っているにもかかわらず、筆者の6月時点の取材では「把握する・しないは次の検討会で(の)継続審議となったと理解している」と述べていた(*1)。

 そこで、回答をくれた放射線健康管理担当参事官室の寺原朋裕参事官補佐に、その旨を指摘すると、「そういうふうに県は仰っているのですか、そうですか」と反応。また、「検討委員会で議論されたときは、多くの委員からしっかりと手術症例を把握しておく必要があるという意見があったと記憶をしています。その中で、当省の梅田環境保健部長も医大の手術症例についてはしっかり報告をしていただいた方がいいという旨の発言をした」と強調した。

ブラックボックスという「誤解」?「相当数」?

 確かに、委員の一人として参加している梅田珠実・環境保健部長は、「機会を捉えて手術症例を統計として求めて報告していただくというのが重要だ」と発言した。しかし、以下のようにも述べていた。

梅田珠実・環境保健部長:先ほど大津留先生がさらっと御説明されたんですが、このA1・A2相当以外というところがブラックボックスに行ってしまうんではないかという誤解が世の中にあるみたいなんですが、そのA1・A2相当以外で診療といった人も含め、全員に受診の案内が送られて、相当数の方が次回検査を受けておられると。(議事録より)

 だが、口頭で「さらっと」説明した福島県立医科大の大津留晶甲状腺検査部門長は、以下のように「相当数」とは言っていない。

大津留晶甲状腺検査部門長:診療に移行した場合でも、県民健康調査甲状腺検査の対象から外れたわけではありません。この方々にも次回の一次検査の御案内をしており、実際に保険診療と判断された方の半数以上が次回の一次検査を受診しております。(議事録より)

 この点を指摘すると、寺原補佐も「『半数』と県立医大の大津留先生が発言されたのは記憶しています」と述べた。

 「半数」と「相当数」には開きがある上に、県は様子見をしている。「国はどうするのかと思ったが、何もしないということですね」と問うと、寺原補佐は、「『しない』とは私、一言も言っていない。検討委員会の公式の場で、梅田部長の方からも、手術症例の報告の必要性について発言させていただいています」と繰り返した。

 大津留・甲状腺検査部門長が口頭で述べた「半数以上」が次回検査を受けているとした場合、「半数」とはどれほどか。

 福島県の県民健康調査「甲状腺検査」の1巡目2巡目3巡目の各2次検査で「A(A1・A2)相当以外」のうち、細胞診の受診数を引けば2152人(2910人-758人)。その半数なら1076人。細胞診受診者数も含めた数(2910人)の半数なら1455人だ。

福島県の県民健康調査「甲状腺検査」1巡目、2巡目、3巡目の各2次検査結果から筆者作成(単位:人)
福島県の県民健康調査「甲状腺検査」1巡目、2巡目、3巡目の各2次検査結果から筆者作成(単位:人)

 手術症例を「把握する・しないは次の検討会で継続審議」と県がその意向を忖度した委員たちは、その6月5日をもって任期(7月9日)切れとなり、国と県の認識はズレたまま、今後の議論は改選委員に委ねられる。

新潟県が検証委員会を設置

 環境省の「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」は2014年12月に「中間取りまとめ」を出して以来、今日までに、座長の長瀧重信・長崎大学名誉教授と、終盤で事務局を担当した北島智子環境保健部部長(*2)は死去。寺原補佐によれば再開の予定はない。

 一方、2017年9月11日に新潟県が「新潟県原子力発電所事故による健康と生活への影響に関する検証委員会」を開始、「福島第一原子力発電所事故による健康と生活への影響について検証する」としている。

 東電が事故当初からメルトダウン(炉心溶融)の判断基準を書いたマニュアルを持っていたこと(*3)を事故後5年間も隠蔽していたことを(東電は「気づかなかった」と)突き止めたのは新潟県だった(*4)。

 果たして今回の新潟県の検証委員会がどのような役割を果たすことになるのか、おのずと注目されることになる。

第28回「県民健康調査」検討委員会で委員改選となるが・・・(2017年6月5日筆者撮影)
第28回「県民健康調査」検討委員会で委員改選となるが・・・(2017年6月5日筆者撮影)

(*1)「小児甲状腺がん発症数を把握できないカラクリ」まさのあつこ(週刊金曜日2017年6月30日号)

(*2)「厚労省キャリア女性刺され死亡殺人未遂容疑で弟逮捕東京・高輪」2017.8.12産経ニュース

(*3)「炉心溶融判断基準:丸5年「気づかなかった」謎と過小報道」(まさのあつこ)- Y!ニュース 2016/3/8

(*4)「炉心熔融判断基準(2):新潟県の追及」(まさのあつこ)- Y!ニュース 2016/3/10