原発輸出:国際協力銀行・貿易保険は主体的な安全確認をとNGO声明

NGOが内閣府、経産省と行った会合(2017年7月19日筆者撮影)

 企業による原発輸出に対する融資や貿易保険については、「国際協力銀行」や「日本貿易保険」の主体的な安全確認が必要だと、国際環境NGO「FoE Japan」ら4団体が声明を発した。

 政府は「原子力施設主要資機材の輸出等に係る公的信用付与に伴う安全配慮等確認の実施に関する要綱」を2015年10月に定めた。

 「安全確認」とは、原発輸出や関連技術の提供を行う企業に「国際協力銀行」(JBIC)や「日本貿易保険」(NEXI)が融資や貿易保険を付けるにあたって、政府が行うとしているものだ。

 ところが、NGOが7月19日に政府と行った会合で、政府の述べる「安全確認」とは、原子力規制の体制があるかどうかのみであり、個別案件の具体的な確認ではないことが明らかになった。

 「これでは、日本は、危険な原発を誰も明確な形では『安全確認』を行わないまま輸出する『原発事故輸出国』になりかねません」(FoE Japanの満田夏花さん)というのである。

「政府の安全確認は不十分かつ形式的」

 東京電力の福島第一原発事故以前は、旧原子力安全保安院、経済産業省産業機械課、資源エネルギー庁原子力政策課がJBICやNEXIの申請を受けて安全確認を行っていた。

 事故後は、原発推進官庁である資源エネ庁もその任務から外れたが、日本国内の原子力規制を担う原子力規制委員会もまた「原子力規制委員会設置法にその役割が書き込まれなかったから」(内閣府参事官)という理由でその任務から抜けた。

 代わって産業政策を担う経産省や原子力政策を担う内閣府、および財務省が構成する「原子力施設主要資機材の輸出等に係る公的信用付与に伴う安全配慮等確認に関する検討会議」(以下、検討会議)が行う(下図)。

旧原子力安全保安院は負っていた責務を原子力規制委員会は負わない(筆者作成)
旧原子力安全保安院は負っていた責務を原子力規制委員会は負わない(筆者作成)

 7月19日に FoE Japan、原子力規制を監視する市民の会、原子力資料情報室らが、福島瑞穂参議院議員の仲介で、その検討会議の体制を質す会合を持った。

 政府側からは、検討会議の構成メンバーである内閣府原子力政策担当室の政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付の島上聖司参事官(原子力担当)と遠藤充・参事官補佐および経済産業省貿易経済協力局通商金融課の笠井康広課長補佐と産業機械課の潮崎雄治課長補佐が出席した。JBIC担当者らもオブザーバー参加した。

 会合後に、NGO側は「今日分かったこと」として以下のようにまとめた。

・政府が行う安全確認は、相手国が原子力安全条約などに加入しているか、原子力規制の体制があるなどうかを「Yes/No」方式の調査票でチェックする形式的で不十分なものだ。

・個別事業の内容や特性に応じた安全確認ではない。

・確認実施プロセスの透明性はきわめて低い。事後的な「議事要旨」の確認のみに留まっている。

「要綱」をもとに安全確認の主な手続を筆者作成
「要綱」をもとに安全確認の主な手続を筆者作成

 これに対して、内閣府の島上参事官は「これが実質的な安全確保になっているかどうかということが今回の論点だと認識をした。意見の隔たりはあったとしても貴重な機会をいただいた」と語った。

事故前から求められていた安全確認と情報公開

 この会合を踏まえて、FoE Japanら4団体は、翌日7月20日に、JBICとNEXIは融資者・保険を付与する者の責任で、主体的に安全確認を行うべきだとの声明を発表した。

 

 それには次のような10年近い背景がある。

 原発関連事業の輸出などについては、東電事故以前から、安全確認や事故時の対応などの情報が住民に適切に公開されていない場合には、貸付等を行うことのないよう質問主意書で求められていた。これに、政府は「プロジェクトの安全確保、事故時の対応、放射性廃棄物の管理等の情報が適切に住民に対して公開されていない場合には、貸付等を行うことのないよう、今後指針を作成する」と答弁書を閣議決定していた。

 ところが、指針は未作成であり、2012年3月27日の参議院政府開発援助等に関する特別委員会で吉田忠智議員(当時)が「福島事故の知見を踏まえ」て作成すべきだと求めた。これに、財務省国際局次長が「現在政府において行われている原発輸出に係る安全確認の取組を踏まえまして、JBICにおいて透明性にも配慮した形でこれが形成されることが重要」と答弁した。

 それから3年し、ようやくJBICNEXIが合同で、2015年12月に、「原子力関連プロジェクトにかかる情報公開指針(仮称)」の作成に向けたコンサルテーション会合を開始した。

国際協力銀行らは「主体的に安全確認を」

 この問題を注視してきた満田さんは、「JBICもNEXIも原発の『安全確認』は国がやるとして、指針の内容を『情報開示』にとどめようとしてきました。しかし、今回の会合で、政府が確認するのは輸出先の原子力規制の体制だけであり、個別プロジェクトの安全確認は行わないことがはっきりしました」と述べる。

 7月20日に発表したNGO声明では、「JBICおよびNEXIは自らが行う融資や付保が、海外において環境破壊や人権侵害を起こしてはならないという観点から、『環境社会配慮ガイドライン』を策定し」、火力・水力発電所などを含めて他の事業においては安全確認を行っているとし、「最もリスクが高い原子力事業のみ、安全配慮等確認を行わないことは、融資・付保を行う側としての責任を放棄したこととなる」として、主体的な安全確認を求めた。

 JBICおよびNEXIは、指針作成のための論点整理を終えて、8月29日(第8回)と9月7日(第9回)のコンサルテーション会合で審議する予定だ。それぞれの指針案(JBIC「原子力プロジェクトにかかる情報公開配慮確認のための指針案」、NEXI「貿易保険における原子力プロジェクトにかかる情報公開配慮のための指針」案)も事前に公開した。

 他の事業種ではJBICとNEXIが自ら行っている「環境社会配慮」を原発輸出では誰がきっちり行うのか、国内外からの監視が必要である。