「会食もします。ゴルフもします」では一般職未満:「盗人に鍵」状態の安倍内閣の倫理

利害関係者と「会食もします。ゴルフもします」と開きなおる前に法改正を(写真:アフロ)

ある大臣秘書官経験者がこう語る。

どうして野党は安倍さんを『国家公務員倫理規程』で攻めないのだろうか。倫理規程には『利害関係者とゴルフをしてはいけない』とハッキリ書いてある。安倍さんは加計学園の理事長とゴルフをしていますよね。それに飲食ですら『1万円を越えたら届け出』が要る。安倍さんは理事長とご飯も食べていますよね

その通り、安倍首相と加計孝太郎氏のゴルフは何度も報じられ(日刊ゲンダイ)、それどころか、3月13日の参議院予算委員会(参議院動画)では、福島瑞穂議員の質問に逆ギレして、自ら「彼は私の友人ですよ。ですから会食もします。ゴルフもします」と答弁したぐらいだ(★)。

また、元大臣秘書官が言うように、国家公務員倫理規程第3条と第8条には次のようにある。

(禁止行為)

第3条 職員は、次に掲げる行為を行ってはならない。

7 利害関係者と共に遊技又はゴルフをすること。

8 利害関係者と共に旅行(公務のための旅行を除く。)をすること。

(利害関係者と共に飲食をする場合の届出)  

第8条 職員は、自己の飲食に要する費用について利害関係者の負担によらないで利害関係者と共に飲食をする場合において、自己の飲食に要する費用が1万円を超えるときは、次に掲げる場合を除き、あらかじめ、倫理監督官が定める事項を倫理監督官に届け出なければならない。(略)

国家公務員倫理規程は、「国家公務員が国民全体の奉仕者であってその職務は国民から負託された公務であることにかんがみ、国家公務員の職務に係る倫理の保持に資するため必要な措置を講ずることにより、職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招くような行為の防止」を目的に制定された国家公務員倫理法に基づいた政令だ。3条や8条に違反した場合には、人事院規則で処分の対象ともなる。

「特別職」が「一般職」未満でよいのか

冒頭の元大臣秘書官は、「もちろん、国家公務員倫理規程の対象は一般職だけだけど、一般職ですら禁じられていることを首相が守らなくていいのか。しかも、 国家戦略特区諮問会議の議長という直結した権限がある首相がどうして、一般職にさえ禁じられていることをやって良いのかという話ですよ」と言う。

確かに国家公務員倫理法の対象は、第2条で「一般職に属する国家公務員」と限定し、内閣総理大臣を筆頭にした特別職を対象から外している。しかし、本来は、それ自体が「おかしい」と考えるべきだというのだ。

特別職に対しては、別途、「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」(いわゆる「大臣規範」)が定められているが、一般職に求めている「利害関係者と共に遊技又はゴルフをすること」などの禁止規程がない。ゴルフに関して言えば、以下の規範しかない。

国務大臣等としての在任期間中は、株式等の有価証券(私募ファンドを含む。)、不動産、ゴルフ会員権等の取引を自粛することとする。

違反行為が常態化

しかも、安倍政権下では違反しても「おわびする」と言えば済まされてしまっている。麻生財相は、自分が首相時代には、財務副大臣がそれに抵触して辞任した経験を持つが、同様の大臣規範抵触が明るみに出ても自らは辞任していない(日経新聞)。

既報した安倍首相自身の1人5万円朝食会も同様だ。年3回計6700万円、1207人の大規模な政治資金パーティを開催したが、ホテルへの支払い金額(出席者1人分約5千円)から計算をすると、年間5400万円もの政治資金を集めるパーティであり、本来、大臣規範で「自粛」が定められているものだ。

(5)パーティーの開催自粛

政治資金の調達を目的とするパーティーで、国民の疑惑を招きかねないような大規模なものの開催は自粛する。

この大臣規範には、これまでに他9閣僚も違反したことが安倍政権下で明らかになっており(毎日新聞)、違反行為が常態化して、倫理感が麻痺したようだ。

「盗人に鍵を預ける」を地で行く大臣規範

国家公務員倫理法ができたのは、1999年の小渕恵三内閣の時代。大臣規範は、2001年の森喜朗内閣の時代にできた。本来、最高に高い倫理感が求められる国家公務員特別職が、法律より一段低い閣議決定で、しかも一般職よりも遥かに緩く甘い規範に安寧し続けた。歴代内閣は「盗人に鍵」状態で放置してきたのだ。

預けられた鍵で立法府と行政府に入って、酒盛りを楽しんでいる中で起きたのが、安倍首相が議長としての決定権を持っている国家戦略特区諮問会議が決定した獣医学部新設である(既報)。

出典:「はぎうだ光一の永田町見聞録」GW最終日(2013年5月10日)
出典:「はぎうだ光一の永田町見聞録」GW最終日(2013年5月10日)

大臣規範の厳格化と法定を

一般職未満の大臣規範で、しかもその抵触を繰り返す安倍内閣の姿勢は、国民の政治不信を深めている。その支持率はついに時事通信の7月7~10日の世論調査で29.9%に急落したというが、説明責任を果たすというのであれば、憲法53条で「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」と定められている臨時国会を安倍内閣として即刻開催し、自らを律するために、国家公務員倫理法の対象に特別職を含める改正案と共に、大臣規範で「自粛」とした事項を「禁止」事項へと厳格化してその法律案を国会に提出すべきである。

これは、安倍内閣のみならず、大臣規範の形骸化をここまで許してしまった与野党の責任である。

(★)首相自ら「彼は私の友人ですよ。ですから会食もします。ゴルフもします」と答弁した3月13日の参議院予算委員会から4カ月が経過したが、議事録は未掲載だ。このような未掲載ケースは他にもある。特定の発言の削除要請(既報)があった2017年1月25日の山本太郎議員によるほめ殺し本会議質問(既報)も2017年7月15日現在、議事録検索未掲載だ。