国有地売却権限がありながら記録を残さない 財務省の仕事の仕方を変えたい:三木由希子さん

三木由希子理事長(情報公開クリアリングハウスにて6月23日筆者撮影)

森友学園への国有地売却の交渉記録を「不存在」とした財務省、近畿財務局、大阪航空局に対し、その決定を取り消すための情報公開法訴訟が、情報公開クリアリングハウスによって提起された。7月19日(水)に東京地裁でその第1回口頭弁論が始まる前に、その経緯と見通しについて、理事長の三木由希子さんに話を聞いた。

5月19日に提起。どんな訴訟ですか?

2月の終わりに、財務省の財務局長が森友学園への国有地売却記録を「廃棄しました」と国会答弁したという話を聞きました。しかも、「保存期間が1年未満の文書だから問題はありません」と。その話を聞いて、一つは「あるはず」だと、もう一つは「廃棄しましたと言えば、やったもの勝ちになるのはおかしい」と思いました。

政治的、社会的に批判を浴びても、「やったもの勝ち」になる傾向は一般的にある。

そこで、情報公開請求をして「不存在」という決定が出ることも織り込んだ上で、あえて請求しました。そうすれば、その決定に対して裁判を起こしたり、不服申立を起こしたりすることができる。

そうであれば、やったもの勝ちではなく、「本当にないのか」、「そういう仕事の仕方が妥当なのか」と二つのことを、少し長く、普遍的な問題として問い続けることができる。だから、訴訟にしようと。当初からそういう設計をして考えて始めた訴訟なんです。

その裁判の準備を始めている中で、財務省が行政LANシステムを更新するとか、パソコンも廃棄するかもしれないという話が出てきました。すると、財務省が「ない」と言い、こちらが「あるはずだ」と言う文書が、本当に物理的に失われる可能性がある。情報公開訴訟を提起しただけでは、それ(更新・廃棄)が止められないかもしれないということで、「証拠保全」の申立ても同時に行いました。

なぜ森友学園を?いつ準備を始めましたか?

「森友学園だから」というより、「森友学園の問題が示している問題」だからです。それは、「国有地売却のプロセスの記録が早々に失われている」という問題です。

財務省は「森友学園だから廃棄しました」とは一言も言っていない。「国有地の売却に関する交渉記録は、1年未満の保存期間だから、その契約締結後に廃棄をしても問題がない」という認識を一貫して示しているというのが、私の認識です。そういう仕事をした結果が、森友学園問題を生んでいる。

森友学園は一つの象徴的なケースとして、財務省の仕事の仕方そのものがおかしいということを問いたい。そういう仕事の仕方を問う手段として、情報公開請求が使えると思いました。

交渉記録を廃棄したという国会答弁があったのが2月24日で、2月27日には、財務省近畿財務局と国土交通省大阪航空局に情報公開請求書を出し、いろいろ考えて、本省にも出しておいた方がいいと思い、本省にも3月2日に請求しました。交渉記録が廃棄していないという答弁が出てすぐに準備を始めました。

財務省は「森友だから」出さないのでは?

現実はどうか分からない。ただ、理財局長は「1年未満だから契約締結後に問題はない」と国会で答弁した。だから、その認識は、財務省のスタンダードだと位置づけてしまっていいと思う。

つまり、国有地売却は、私たち国民に代わって財産を売るという話ですから、その公正性や透明性、アカウンタビリティは必要だと思う。財務省は、森友学園をはじめ、「公共随意契約」という形で年間に数百件の国有地売却をしているわけですよね。それについては、財務省自身が、透明性が必要だということで、情報公表制度を設けている。それは、いつどこの土地をどれぐらいの広さで、建物があればどのぐらいの面積で、いくらでどこに売却して、定期借地なのかどうか、森友に限らず減額売却したのかどうか、一覧にして公表する仕組みです。

そういう情報の公表制度を設けて、一定のアカウンタビリティを果たさなければいけない、そういう業務なんだ、という位置づけにしているはずなんですね。

だから少なくとも、「どうして減額したんですか」というときに、「こういう交渉の経緯がありました」ということが示せないと本当はいけないし、筋が通らない。にもかかわらず、財務省は公共随意契約や減額売却ができる権限をもっているのに、交渉記録を残さない、という仕事をしている。

しかも、会計検査院に検査を受ける期間も持っていないと。それは、説明責任を果たす必要な期間も持っていないことを問題ない、と言い張っているということだと思う。

だから現実はどうかという問題よりも、財務省がそういうスタンスなのであれば、それをスタンダードにしちゃいけないでしょう、と。

スタンダードは、なぜこういう契約になったのかという記録を、最低限でも5年間は残さなきゃいけませんよと。政府として説明責任を果たすために必要な期間は持っていないとおかしいですね、という話にしないと。

あの件がどうだったか」という話にしてしまうと、結局、「問題がないと言いたい財務省」対「問題があると言いたい人たち」の対立になっちゃう。その間に、「どの件でも」記録がドンドン捨てられても文句が言えない状態に陥っちゃうので、そこはなんとかしたい。

スタンダードな問題として提起し、ここが、「これからは5年は保存します」となれば、少なくともこの先の問題は抑えられる。そういう問題の立て方をしないと、結局、構造が変わらないまま、時間の経過とともに、「特定の件」への関心が、政治的にも世論的にも落ちてくると、大元の財務省のスタンダードすら変えられないということになるので、それは避けたい。

一方で、「1年未満で破棄しても問題がないという仕組みを変えましょう」ということも一緒に言わないといけない思っています。

制度改正に必要な情報を、情報公開法をフル活用して開示させるので、情報公開クリアリングハウスの机は資料で一杯だ(6月23日筆者撮影)
制度改正に必要な情報を、情報公開法をフル活用して開示させるので、情報公開クリアリングハウスの机は資料で一杯だ(6月23日筆者撮影)

「証拠保全」の申立とは? 結果は?

「証拠保全」という民事訴訟法に基づいた制度です。

民事訴訟法(証拠保全)第234条

裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、この章の規定に従い、証拠調べをすることができる。

物を証拠として保全する(抑える)というよりは、「証拠として調べた結果を残す」。たとえば、売却にかかわった職員が文書をパソコンで作って、一定期間は個人のパソコンや共有フォルダーでデータ保管をしていただろうということで、こういう交渉記録という特定をして、あるかないかの結果を残す手続きです。

証拠保全の東京地裁への申立ては、情報公開の不存在決定の取り消しと同時に5月19日に行い、証拠保全の方だけ、30日に却下の決定が出ています。

その短い期間に2往復半、意見書や補充書のやり取りがありました。

証拠保全は基本的に、証拠隠滅が図られるので、相手方に教えないで行われることが多いんですけど、今回はおおっぴらに行っているので、裁判所から「国側にも意見を聞いていいか」と問い合わせがありました。「裁判所の裁量の範囲内で」と回答したので、裁判所がこちらからの理由の補充と、国に意見書の提出を同じ締切で求めて、「双方それを見た上で補充があれば」と裁判所からまた締め切りが指定されてきて、それで互いに意見を出し2往復。こちらが出した最後の補充理由に、国がさらに意見書を出してきたので2往復半。

その2日後に、却下の判断が出ました。

「証拠保全」は過去の最高裁判例で「裁判所と原告が立ち会って行う」ことを原則とした手続です。却下の理由は二つあります。

一つが探索的証拠調べだということ。実際に何を持っているか分からないので、ある程度探索的(物理的に動いてどこに何があるかを探すこと)にならざるを得ない。どこまでそれが許容範囲かという話になりますが、対象が十分に特定されておらず、探索的だというのが、却下の一つの理由。

もう一つの理由は、今回の訴訟は、文書を「公開するしないか」の争いではなく、「不存在」を取り消せという争いなので、文書があるかないかの証拠調べをすれば足りる。ところが、証拠調べで、その文書がこちらが求めているものかを確認するという方法でやると、行政機関が公開非公開を判断していない情報を公開したことと同じ意味になる。そこまで行政機関に受忍させるものではないという判断です。

その引用された最高裁判決とは?

引用された最高裁決定は、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落したときに、沖縄県民が外務省に開示請求をした文書の多くが非公開となった決定が争われた裁判でした。

裁判では、裁判所だけ非公開文書を実際に見て審査する「インカメラ審理」という手続がないので、どんな情報が非公開とされているのかを確認できない仕組みになっています。

大学生時代から「情報公開」一筋で、緻密な話を分かりやすく伝えることに、常に心を砕いている三木理事長。
大学生時代から「情報公開」一筋で、緻密な話を分かりやすく伝えることに、常に心を砕いている三木理事長。

そこで、米軍ヘリの裁判では、原告が立ち合いを放棄して裁判所だけ非公開文書を「検証物」として証拠調べしてもらおうと、「検証物提出命令」の申立てというものがされました。

その結果、福岡高裁は証拠調べの申立てを認めたのですが、国が抗告して、最高裁が最終的に申立てを却下しました。

その理由は、「民事訴訟では、原告と被告双方が等しく証拠調べをするという原則なので、原告が立会を放棄してもその原則は覆せない。だから、個別の立法上の措置なしには、裁判官だけで調べることができない」というものです。ただし、立法上、措置をすれば、憲法の規定する裁判公開の原則に反するものではない、という個別意見もついていてた。

その後も立法措置が行われていないという問題はありますが、しかし、今回は「不存在」の取り消しなので、「有無」を調べをして保全してくれれば事足りる。それでも、「結局、中身を見ないと分かりませんよね」という話になり、過去の最高裁決定がこちらに不利に働いた状態です。

この東京地裁の判断は不服ですので、6月6日に高裁に「抗告」をしました。

財務省に対して行った要請とは?

結局、6月からパソコンの入れ替えを行うことが分かったので、具体的な効力があるわけではありませんが、「訴訟で争っているんだから、捨てないでね」という要請を、東京高裁の抗告の申立てと同時にしたのです。特定記録郵便で出しました。

国はその要請についての答えは何も言ってくれません。ただ、証拠保全を巡って、地裁と高裁で同じ主張を繰り返し、そもそも「パソコンはもう有りません」ということは、言っていない。

7月19日に口頭弁論が始まります。見通しは?

実は「不存在」の争いは難しい。「非公開」だと非公開にする立証責任は行政側にあるが、「不存在」は立証適任が原告の側に来る。何故持っていると言えるのかを主張していかなければいけない。そんなに楽観できる話しではない。

ただ、実際にどんな記録が作られ、具体的にいつどう廃棄したのかなど、うまく主張したり、立証上必要だとして、相手から求釈明させたり反証させたりすることはできるので、少なくとも一体、財務省として何をしているのか、裁判の経過を通じて分かってくると思う。

「ある」と言えるところまで主張が展開できるかどうか、「証拠保全」による「証拠調べ」ができれば簡単な話ですが、そこまでいけるかどうかで、7月19日以降に始まる裁判は、展開が変わってくると思います。

財務省は通達「未利用国有地等の管理処分方針について」に基づいて文書を作ねばなりません。目下、出してきたものは籠池さん側が提出したものだけで、財務省側の審査や手続きの文書はあるが出していないと言われています(既報)。

あるみたいですよ。現在、近畿財務局に情報公開請求をしているので文書の特定でやり取りをしている。森友学園の国有地売却に関する資料で、2017年1月までの国有地売却等に関する文書を請求したら、開示を受けた文書の「特定ができない」と電話がかかってきて(笑)。

話を聞いて、突き詰めていえば、「貸付」と「売却」は違う手続きなので二つのファイルがあるようです。「貸付」のほうで2016年3月の売却の交渉が始まるまでの記録がカバーしてあって、「売却」になったら別ファイルになっているという言い方をしていた。だから、「どこまで出てくるか」という問題があるが、「ある」という確認はした。それと、関東財務局、北海道財務局、金沢の財務局に類似性のある国有地売却の案件を調べています。

(了)

公文書管理法に基づいて作られたにもかかわらず、公表されていない「標準文書保存期間基準」を全省庁に開示請求したら、こんなに量になった、と三木さん(6月23日筆者撮影)
公文書管理法に基づいて作られたにもかかわらず、公表されていない「標準文書保存期間基準」を全省庁に開示請求したら、こんなに量になった、と三木さん(6月23日筆者撮影)

第1回の口頭弁論は、 2017年7月19日(水)13:30から、東京地裁522号法廷で開かれる。

三木さんが述べる通り、財務省の国有地売却を巡る仕事の仕方(透明性、妥当性、アカウンタビリティの確保)、「捨てたもの勝ち」にさせない行政文書の管理、そして最高裁によって国会に求められた立法措置の実現まで、「森友学園」を一過性の問題にしてはならない。

「森友学園の問題が示している問題」として、丁寧に確実に直さなければならない問題だ。

特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウスの関係文書

森友学園国有売却交渉経緯文書不存在事件 不存在決定取消・国家賠償請求・証拠保全申立てを提起(2017 年 5 月 19日)

森友学園国有地売却経緯記録文書 証拠保全申立て却下(2017年5月31日)

財務省におけるパソコンの廃棄凍結に関する申し入れ(2017年6月7日)

森友学園国有地売却経緯の交渉記録 証拠保全却下に抗告申立て(2017年6月6日)

1年未満保存文書の包括的廃棄同意について一時凍結し、公文書管理法の見直しを求める要望(2017 年 6 月 19 日)