行政文書の「定義」に隠蔽なし

6月16日参議院予算委員会 加計学園問題で集中審議中の萩生田光一官房副長官(写真:つのだよしお/アフロ)

行政職員が「作成または取得、組織共有、保有」(ここまでが行政文書による定義)していたにも関わらず、それに反して「隠蔽」されていた一連の「行政文書」が、明らかになった。

しかし、政策決定過程の解明はこれからだ。焦点は、「岩盤規制に穴」(安倍首相答弁)を開けたのは誰かだ。なぜなら、その「穴」は、加計学園しか通れない穴だったからだ。そんな小さな穴をあけたのは誰か。それが焦点だ。

文部科学省の官僚(の勇気)が明らかにした「行政文書」を見れば、それはすでに自明だが、その解明を阻んでいるのは政治家のウソだ。今回、文科省が明らかにした「穴」の決定過程の一端は、以下の通りだ。

文科省の行政文書(*)赤線は筆者加筆
文科省の行政文書(*)赤線は筆者加筆

数行に多くの情報が詰まっている。「穴」の決定のプロセスを分解すると次のようなものだ。

1.(獣医学部のWGについて)打合せがあった。

2.打合せの後の原委員との情報共有のためのWGがあった。

3.藤原審議官(内閣府)が文科省とのみの打合せを依頼した。

4.別室で(藤原審議官が文科省が)打合せした。

5.藤原審議官が「手書き部分」の直しを指示した

6.指示は藤原審議官いわく「官邸の萩生田副長官からあった」ようだ。

7.メールをした時点(14:51)で、文科省専門教育課が手書きの通りに直した

8.15:00から文科大臣レクをする。

9.文科大臣レクの後に内閣府に報告する。

登場人物が多いが、整理すると、調整役を果たしているのは「藤原審議官」と「官邸の萩生田副長官」。できあがったものの報告を受けるのが「文科大臣」。その内容を確認するのが「内閣府」=「藤原審議官」。あちこちにお伺いを立ててハンドリングしている裏方は「内閣府」だ。

一人だけ、異質なのは「官邸の萩生田副長官」(後述するように本人は国会で否定口調だが、否定しきれていない)だ。なぜ、異質なのかを解説すると、次のようになる。

通常の政策決定プロセスに最初から入っている人物であれば、「獣医学部のWG」の中で正当な役割と発言権がある。上記の番号で言えば「1」までが正当なプロセスだ。

すると「3~7」は何か。通常の政策決定プロセスから外れている人物の存在があり、だからこそ、「WG」の外で行ったと考えられる。「2」はWG外での修正を委員に情報共有するためのものだと推測される。「8と9」は、「WG」の外で行われた「3~7」の調整を文科大臣に報告し、「3~7」の異質な調整が滞りなく了承されたことを内閣府で最終確認することを物語っている。

「5~6」に出てくる「手書き」とは以下のものだ。「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」とすることで、この特区に手を挙げようとしていた京都産業大学をふるい落とす条件となった。手を挙げていた中で加計学園に「限り」通れる穴となったのだ。

文部官僚の勇気で明らかにされた決定過程(*)
文部官僚の勇気で明らかにされた決定過程(*)

「間にいる人は誰?」

この文書を巡って国会でやり取りが行われたのは、文科省がその文書を公開した翌日、6月16日の参議院予算委員会だった。中でも注目したいのは、福島瑞穂議員と萩生田光一官房副長官の問答である。

二人はおそらく、その時にツイッター上を賑わせていた1枚の写真のことなど知るよしもなかったと考えられる。1枚の写真は「はぎうだ光一の永田町見聞録~永田町の時勢に合ったトピックをはぎうだ光一がするどい感性でお伝えします」という、萩生田官房副長官のブログが出典だ。2013年5月10日に撮られたものだ。

萩生田氏と安倍首相の「間にいる人は誰?」の渡辺輝人さんの問いかけに、リンク先に飛んだ人々から「加計孝太郎」氏の名前や写真が入ったコメントがズラズラと並んだ。ブログと写真を見れば、誰の目にも、3人は仲良しであることが分かる。

出典:「はぎうだ光一の永田町見聞録」GW最終日(2013年5月10日)
出典:「はぎうだ光一の永田町見聞録」GW最終日(2013年5月10日)

官僚は瞬時に誤魔化すのが上手

そんな写真がツイッター上を駆け巡っていることを知らずに行われた福島瑞穂議員の質問と萩生田官房副長官の答弁は次のようなものだ。冒頭の「3~7」を念頭に読んでいただきたい。関連する質疑を抜粋し、問答ごとに分ける。

2017年6月16日参議院予算委員会(抜粋)

福島議員:藤原審議官は11月1日、自分の手書きを付け加えた、そして交渉したというふうに話をしていらっしゃいます。「指示がありました。指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです」と書いてあります。萩生田さん、指示をしたんじゃないですか。

萩生田官房副長官:特区諮問会議の取りまとめ文案に、私が指示をしたことはございません(*1)。

藤原審議官(内閣府):先程も(他議員に)答弁させていただきましたが、10月28日に原案を文科省に提示させていただきました。11月1日にワーキンググループ委員と文科省の折衝でございます。先程も申し上げましたが、山本大臣が獣医師会からの理解が得られる観点から、「広域的に限ると追加する」とご指示を受けて(*2)、文案に修正を加えたものでございます。

(*1)福島議員は11月1日の手書き箇所の指示について質問。萩生田官房副長官は「特区諮問会議の取りまとめ文案」について答弁、問答にズレがあり、手書きの指示を萩生田官房副長官は否定できていない。

(*2)「山本大臣『』獣医師会からの理解が得られる観点から、『広域的に限ると追加する』と『ご指示を受けて』」は官僚の誤魔化しの骨頂だ。

さらりと聞くと、これは、萩生田官房副長官ではなく、山本大臣が指示したように聞こえてしまう。しかし、特区を担当する地方創生担当である山本幸三大臣は、通常の政策決定プロセスの正規ルートのトップなので、わざわざ脇の「3~7」ルートを辿る必要はない。実際、文字起こしをすると、山本大臣『が』誰かから『指示を受け』たことが分かる。誰なのか。

指示をしたのは「山本大臣」ではない。藤原審議官は、瞬時に、かつ巧みに、ウソは言わずに誤魔化した。

なお、山本大臣は、他の議員の質問に、手書き部分は自分が指示したような答弁をしたが、上記と照らし合わせれば、それらは異なっている。

萩生田「官邸の私の仕事」

上記に続いて、福島議員に「じゃ、なんで萩生田官房副長官の名前が出てくるんですか。萩生田官房副長官、あなたが獣医学部の国家戦略特区獣医学部の件で果たした役割、調整や横串的な役割を果たしていたと、農水委員会などで発言されていますが、どういう役割を果たして来られたか、言って下さい」と聞かれると、1度は質問をかわしたが、福島議員が食い下がった2度目の質問で、真実を曝露させてしまった。

2017年6月16日参議院予算委員会(抜粋)

福島議員:このことで調整機能を果たしていたんじゃないですか。

萩生田官房副長官:各省からのですね、さまざま問題があれば、その調整をするのは、官邸の私の仕事でありますから、このことに限らず、調整を行っております。

「このことに限らず」という言い回しで、「調整」役を果たしたことは認めた。しかも、日頃の認識が露呈したのであろう。「官邸の私の仕事」であると答えている。

「はぎうだ光一の永田町見聞録」との齟齬

続いて、福島議員に「萩生田官房副長官、加計孝太郎さんと安倍総理が腹心の友であるっていうのは知っていましたね」と問われ、萩生田官房副長官は「最近、盛んに報道されますので、承知をしております」と答え、さらに福島議員が次の質問に移ろうとして何かピンと来たように、その点を突っ込む場面がある。そこで出てくる萩生田官房副長官の答弁は、中盤で紹介した写真が物語ることとは齟齬があることに、解説は要るまい。

2017年6月16日参議院予算委員会(抜粋)

福島議員:当時、国家戦略特区で議論になっているとき・・・ちょっとすいません、萩生田官房副長官、「加計孝太郎さんと安倍総理が腹心の友であるっていうのは知っていましたか」と聞いたら、「最近、知った」という答えでしたよね。

でも、あなたが客員教授をしていた千葉科学大学で、まさに10周年の時に、「腹心の友」って安部総理が言っているじゃないですか。総理動向を見て下さいよ。1年間の間に6回以上食事し、別荘にいき、ゴルフをし、それだったら、副官房長官は、最側近じゃないですか。親しいかどうか知らなかったんですか。あなた千葉科学大学で客員教授をやっているときに知らなかったんですか。

萩生田官房副長官:千葉科学大学で客員教授で務めていた時はですね、別に安部総理とは全く関係ないルートで要請を受けて、私は承認(就任?)致しました。報酬をいただいていましたけど、きちんと授業をもってさまざまな業務に携わっていました。

側近と御指摘をいただきましたけど、総理のプライベートも含めてですね、どなたとどういう関係で、どういう食事をするとか、どんな話をするとか、すべてを私が承知をしているわけではございませんので。そういったことを今、この場で指摘をされても、私としてはお答えのしようがございません。

今後、隠蔽されていた行政文書が出れば出るほど、それらは、無言で事実を語り始める。もしも、それが政治家のウソによって妨げられなければだが・・・。

日本における行政文書の定義は「行政職員が作成または取得、組織共有、保有」するものであり、その定義に「隠蔽するもの」とは含まれていない。

(*)OurPlanet-TV「怪文書」じゃなかった!~文科省「総理のご意向」文書確認(2017年6月16日)より