玄海原発避難訓練 コロコロは除染効果がないので「車を置いて徒歩で避難を?!」-原子力規制庁

玄海原発事故を想定した避難訓練で、車の除染にコロコロを使った自治体がある

九州電力の玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働を巡っては、伊万里市、嬉野市、神埼市、松浦市、平戸市など周辺自治体の首長や議会から反対や慎重意見が相次いでいる(*1)。佐賀県知事は来週にも再稼働に同意すると見られるが、事故を想定した避難計画は絵に描いた餅だと言わざるをえない。

国際原子力機関(IAEA)は放射能汚染から人々を守る防護を5層に分け、第1~3層は施設の設計などで、第4層は事故が起きた際の原子力施設内の対策で、そして、第5層は敷地外の対策で確保するよう求めている。

「緊急事態に対する準備と対応」まで揃ってこその安全だが・・・

今国会ですでに成立した改正原子炉等規制法は、福島第一原発事故後の規制体制をIAEAが評価したことがきっかけだが、その評価対象からは、第5層に相当する敷地外の「緊急事態に対する準備と対応」は外されていた。原子力規制委員会の所管外であることが理由だったが、本来は、避難計画が機能するよう事業者に責任を課すところまでを規制に含めるべきだ。

4月12日に国際環境NGO「FoE Japan」が「原子炉等規制法などの改正に関する勉強会」を参議院議員会館で開催した際、筆者は、玄海原発取材(*2)で見知った事例を、原子力規制庁にぶつけてみることにした。

4月12日「原子炉等規制法などの改正に関する勉強会」にて筆者撮影
4月12日「原子炉等規制法などの改正に関する勉強会」にて筆者撮影

その事例とは、ある自治体の避難訓練の模様だ。避難経路に設けられたスクリーニング地点で、この自治体は車の除染訓練も行った。基準を超えて車が汚染されたことを想定し、水で洗浄する訓練だった。そこで市民が、実際の事故時にも水が確保できるのかと問うと、次の訓練では、水で洗浄する代わりに、「コロコロ」で車やタイヤに付いた放射性物質を取る訓練に変わったという。実際にあった話であり、学習会の参加者からは「掃除に使うコロコロ?」とのささやきと共に、失笑がこぼれた。

筆者がその事例を示したのは、避難計画の実効性までを原子力規制委員会が確認すべきだと思ってのことであり、「どうするのか」と尋ねて期待した答えは、今後の原子炉等規制法改正で、オフサイトの避難計画までを規制に含める見込みについてである。

「コロコロは有効か」→「車を置いて避難」?

ところが、規制庁が反応したのは、驚いたことに、コロコロの話だった。大まじめにこう回答した。「確かに、自治体から、『コロコロは有効なのか』と問い合わせあってですね、『車にはちょっとアレですが、人の衣服に付いている分については、ある程度の除染効果はある』と回答はしています。」

自治体が「コロコロ」の除染効果について問い合わせたこと自体も驚きだが、さらに驚いたのは、そのことについて規制庁担当者が加えた説明だ。車が汚染され、除染する水がない場合は、「車を置いて人が避難をしていくことになる」「そういうことを含めて、避難訓練のあり方をしっかり指導していかないといけないというのは反省点ではある」と述べたのだ。

避難先は車で1時間半だが・・・

しかし、例えば、玄海原発のある玄海町から避難の受け入れ先である小城市までは、車で1時間半かかる。その距離を、車が除染基準を超えるほど汚染された中、車を置いて徒歩で避難することはあまりにも非現実的だ。しかし、これが、原発の敷地内の規制だけを行い、避難計画を自治体に丸投げする規制庁の限界だ。

内閣府が定め、自治体が従う「原子力災害対策指針」は当初から多くの批判があった。事故時の緊急対応を5キロ圏内(PAZ)と5~30キロ圏内(UPZ)に分けて、5キロ圏内の住民は冷却機能が喪失してから避難。5~30キロ圏内の住民は、事故が起きて逃げたくても屋内退避することが求められているからだ。

しかし、一端、500μSv/時以上の放射性物質が実測されると、その放射性物質が降り注ぐ中、即刻避難せよという。

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玄海原発事故による放射性物質放出想定は1Fの2千分の1

こうした避難の前提は、玄海原発の場合、事故が起きても放射性物質の放出は「4・5テラベクレル」(セシウム137換算)に抑えられるというものだ。福島第一原発事故で放出された放射性物資はその約2千倍の「1万テラベクレル」だったが、原子力規制委員会は、事故が起きたときの放射性物質の放出の目標値を1基あたり「100テラベクレル以下」とし、それをクリアすることを求めている。

そんな前提で避難計画が立てられて、その訓練で「コロコロ」が登場した。そのコロコロは車の除染には向かないから、水がなければスクリーニング地点で車を置いて、放射性物質が降り注ぐ中、徒歩で避難せよ、というのが、現在の日本の原子力防災の到達点だ。

佐賀県知事が玄海原発の再稼働に同意をするということは、この馬鹿げた避難計画を住民に押しつけることを意味しているが、そのことにどれだけの佐賀県民が気づいているだろうか。

佐賀市文化会館で行われた県主催の「玄海原子力発電所に関する県民説明会」(2月27日筆者撮影)
佐賀市文化会館で行われた県主催の「玄海原子力発電所に関する県民説明会」(2月27日筆者撮影)

(*1)「佐賀・玄海原発3・4号機、来週にも再稼働同意 反対の嵐、知事突進」毎日新聞2017年4月20日

(*2)「避難指示の発令待っては、子どもたちを守れない 玄海原発 破綻した『避難計画』」週刊金曜日(2017年3月31日号)