安倍内閣総理大臣夫人付FAX「個人で保有」:行政文書の定義逃れには無理がある

3月24日参議院予算委員会福山哲郎議員パネルより

安倍内閣は、籠池証人喚問で暴かれた内閣総理大臣夫人付職員のFAXを「個人で保有していた」言わば私的なメモであり、財務省への問い合わせは「公務」ではなかったという理屈で、乗り切ろうとしている。

夫人付職員から財務省への問い合わせが「公務」であるとすれば、それは安倍内閣が質問主意書答弁で閣議決定した夫人付職員の職務、すなわち、「安倍内閣総理大臣の夫人が内閣総理大臣の公務の遂行を補助することを支援」したことになってしまうからだ。

この場合の「内閣総理大臣の公務遂行補助の支援」とは、土地取引に関する財務省への問い合わせである。このままでは、安倍首相自身が国会で明言した国会議員すら辞める条件(冒頭および下パネル参照)、すなわち、国有地の払い下げに「私や妻が関係していた」ことになってしまう。

3月24日参議院予算委員会福山哲郎議員パネル(*1)より
3月24日参議院予算委員会福山哲郎議員パネル(*1)より

そうならないためには、夫人付職員の対応は、「個人」がやったことにしたい。そのためには籠池氏に曝露されたFAXは「行政文書ではない」と言い切るしかない。これが安倍内閣の頼みの綱であることを順を追って記録する。

自分の首を自分で絞め始めた3月1日答弁-「私人」

今国会で安倍首相はすでに「妻」という言葉を何回使ったのか。3月1日の参議院予算委員会でも、森友学園問題で追及された安倍首相は「私は、妻はですね。妻は、私は公人でありますが、妻は私人なんですよ」としどろもどろで答弁した。

翌2日も、同委員会で「確かに妻は総理夫人というふうに呼ばれるわけでございますが、これは言わば役職があるわけでもありません」と答弁。

その翌3日に逢坂誠二衆議院議員が提出した内閣総理大臣夫人の法的地位に関する質問主意書に対する14日の答弁で、改めて内閣総理大臣夫人を「私人」とし、その「私人」に配属された国家公務員について、次の重要な答弁を行っていた。

首が絞まり始めた3月14日主意書答弁-「総理公務補助支援」

経済産業省と外務省で採用された5人の「内閣総理大臣夫人付」の所属や法的根拠などを問われ、2名は内閣官房、他は各省庁に勤務しながら内閣官房を併任し、「安倍内閣総理大臣の夫人が内閣総理大臣の公務の遂行を補助することを支援する」と、その職務を定義した。「総理公務補助支援」が「内閣総理大臣夫人付」の職務である。

本来、国家公務員や行政組織の職務は、国家公務員法や各府省の設置法などで規定されている。だが、「私人」に国家公務員5人を配属する法的根拠がないため、「内閣法第12条第2項第1号に規定する内閣の庶務」だと閣議決定で凌いだ理屈である。

この政府解釈が通るなら、たとえば、森友学園の講演に安倍内閣総理大臣夫人付の国家公務員が2人も同行したことは「総理公務補助支援」であり、森友学園の講演は安倍内閣総理大臣夫人による「総理公務の補助」、つまり、森友学園で講演することが「総理公務」の補助になることを意味してしまう。

平たく言えば「公私混同」かもしれないが、そうと認めるわけにもいかない政府は、これを後付けの理屈で「公私」を切り分けた。

当初、安倍内閣総理大臣夫人付が森友学園での講演に同行したのは、夫人付の「私的な行為」だと説明(*2)。

しかし、一転、菅官房長官の3月8日会見(*3)では、夫人の講演は「私的な活動」だが、夫人付の同行は「総理夫人の総理の公務の遂行を補助するための活動スケジュール調整や種々の連絡調整等のサポートを行うため」のものとした。にもかかわらず、その交通費は昭恵夫人が負担したことになっている。

常識で考えれば、電話でもメールでも可能な「活動スケジュール調整や種々の連絡調整等のサポート」のために、2人の官僚が大阪まで同行するわけがない。また、同行が本当に「総理公務補助支援」なら、なぜ夫人のポケットマネーで支払うのか。

そして、この時の「人払い」や「100万円寄付」「謝礼10万円」の受け渡しの有無が問題になるという結果を今になり招いている。

首が絞まった3月23日-「ゼロ回答」演出

23日に籠池証人喚問で、土地取引に関する安倍内閣総理大臣夫人付からのFAXの存在を曝露されたことに対し、「私(安倍首相)も妻も一切この認可にも、国有地の払い下げにも関係ない」と逃げ切りたい安倍内閣の官房長官が打った弥縫策は2つあった。

一つは、FAXそのものが他から発表される前に、慌てて菅官房長官会見で配布し、1枚目にあった「現状ではご希望に沿うことはできない」を強調することだ。「ゼロ回答」の演出だ。

安倍内閣総理大臣夫人付作成2015年11月送信記録FAX(*1)より。下線は福山氏
安倍内閣総理大臣夫人付作成2015年11月送信記録FAX(*1)より。下線は福山氏

しかし、その演出は失敗に終わった。

24日の参院予算委員会では、福山哲郎議員(民進党)、小池晃議員(共産党)や福島瑞穂議員(社民党)も指摘したように、「ゼロ回答」どころか、籠池氏という一私人の問いに、「総理公務補助支援」が職務である安倍内閣総理大臣夫人付が動き、「財務省国有財産審理室長の田村嘉啓氏」が回答、それを夫人付職員が文書にして、「総理公務補助」を理由に国家公務員5人が配属されている昭恵夫人に連絡し、籠池氏にFAXで「回答」したのだ。その「回答」そのものが「ゼロ回答」ではないことを示している。

さらに、重要なのはFAXの二枚目だと予算委員会では再三指摘された。そこには平成27年度の予算はつけることができなかったが、「平成28年度での予算措置を行う方向で調整中」と書かれていた。「総理公務補助支援」が職務である安倍内閣総理大臣夫人付と財務省が動き、成果の途上を籠池氏と昭恵夫人に報告した内容であり、段取りと内容の両方で、「ゼロ回答」ではなかったのだ。

安倍内閣総理大臣夫人付作成2015年11月送信記録FAX(*1)より抜粋
安倍内閣総理大臣夫人付作成2015年11月送信記録FAX(*1)より抜粋

首が絞まって3月24日-「行政文書の定義」でしか逃げられない

菅官房長官が打った弥縫策のもう一つが、夫人付職員のFAX文書作成が「私的」に勝手に行われたもので、「公務」でもなければ「行政文書」でもないという筋書きの展開だ。

翌24日の参院予算委員会では、夫人付職員によって官邸から籠池さん対応が行われた(との福島瑞穂議員の指摘を否定せず)にも関わらず、また、福山議員の質問で、安倍首相は勝手に行われたものではないと答弁して自らそのストーリーを壊してしまったが、少なくともその筋書きを展開しようとした。

福山哲郎議員は、菅官房長官に内閣総理大臣夫人付が作成したFAXを「いつ入手されたか」と問い、菅官房長長官が「一週間前前後だったと思います」と答え、FAXは政府内部で一週間程度、共有、保有されていたことが明らかになった。

この点を福山議員は、次のように確認をした。

福山議員:昨日のFAXを官房長官が入手をされたのは一週間前でよろしいですね。

菅官房長官:全体の話を聞いたのは一週間ぐらい前の話であって、その後、そんなに時間が経たないで入手をしました。

つまり、官邸の過去一週間の対応は、このFAXを自分達だけが保有した中での対応だったことが分かる。

さらに、福山議員は、「財務省をはじめ政府は、もう面談記録も含めて、ことごとく廃棄したと」「森友関係の面談その他については、財務省はことごとくない、国交省もことごとくない、と言われています。じゃ、谷さんだけが保管していたということでよろしいんですか」と繰り返し指摘。

菅官房長官は、「谷さんだけかどうかは分かりませんけれども、少なくとも対森友に対してこういう封書があってそれについてこのように財務省に問い合わせをしてこのように答えましたということは、私はそこだけ実は、報告を受けていた」と、他にも保管されているものがある可能性を示唆した。

次に福山議員から「他の省庁はどうなのかということは官房長官から指示を出していただけませんか」と、これも繰り返し「指示」を要請されると、菅官房長官は、次のように回答した。

菅官房長官:私は少なくともですね、この問題があって財務省とか、国交省から、それは話を聞きました。まぁ、そういう中で、その後にやはり、夫人の問題が出てきましたんで、夫人付の谷さんから聞きました。そういう中で、その、要請があって、こういう答えをしていますということの紙をもらったわけでありまして、ですから、少なくとも、政府全体の中で私、しっかり聞いておりまして、財務省、航空局についてはですね、今まで国会で議論された通りであります。

つまり、政府全体の中で話を聞く中で、籠池喚問証人で明らかになったFAXが、森友問題対応のために、証人喚問以前から用いられていたとが分かる。

次の福山議員の質問に対し、菅官房長官は、満を持したように、かつ唐突に、「行政文書の定義」を持ち出した。

福山議員:谷さんは(もうすでに)内閣官房官邸にいないんですね。どこにあったんですか。谷さんから入手されたのか、財務省とやり取りして入手されたのか、どちらですか。

菅官房長官:そりゃ、あの、谷さんからです。それでですね。籠池氏に対して対応したものであり、個人で保有していたということであります。情報公開法並びに公文書管理法で行政文書というのは、「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているもの」を指していると。送られた文書は行政文書に当たらないと考えています。

あまりの唐突さに、福山議員は「行政文書にあたらないなんて聞いていません」とムっとして見せたが、この唐突な答弁こそが、菅官房長官がわざわざメモを準備して答弁したかったことなのだ。

菅官房長官が読み上げた、「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているもの」とは、行政文書を定義する「3要件」である。

(1)職員による作成または取得

(2)職員が組織的に用いる

(3)行政機関が保有

言葉を選びはしたが、菅官房長官は、福山議員の繰り返しの質問に答えることで、内閣総理大臣夫人付職員が作成したFAXがこの3要件を満たしていることを証明してしまった。

そして「内閣総理大臣夫人付」の職務は、「安倍内閣総理大臣の夫人が内閣総理大臣の公務の遂行を補助することを支援」であることを政府答弁で確定してしまっている今、土地取引を巡る財務省との連絡や籠池氏との連絡は、自動的に内閣総理大臣の公務だったことになる。「私や妻が関係していたということになれば、まさにこれはもう私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめる」という条件に自らハマってしまったことになる。

それ故に、安倍内閣は政府を上げて、内閣総理大臣夫人付職員が「個人で保有していた」という無理なストーリーを今後も展開していくしかない。しかし、繰り返すが、言葉を選んだはずの菅官房長官は、以下を証明してしまっており、否定をしても、まったく説得力を持たないのではないか。

(1)職員による作成または取得 Yes

(2)職員が組織的に用いる Yes

(3)行政機関が保有 Yes

情報公開先進国に比べれば、この行政文書の3要件による定義は極めて狭いものではあるが、この狭い「法の支配」からでさえ、今回は逃れられないと言わざるを得ない。

(*1)出典: 2017年03月24日民進党広報局【参院予算委】夫人付職員ファクスを急きょ公開した官房長官会見「いかに重要かの示唆」福山議員の文末「参院予算委員会福山哲郎議員配布資料」

(*2)2014年3月3日朝日新聞「昭恵氏の森友学園講演、官邸職員同行 「私的な行為」」

(*3)菅官房長官3月8日会見

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