事故後6年「原子力緊急事態宣言」未解除のまま、避難区域は縮小:首相答弁書

福島第一原発3号機(中央)2011年3月21日、東電の写真・映像ライブラリーより

2011年3月11日に原子力災害対策特別措置法に基づいて発せられた「原子力緊急事態宣言」は未解除のまま、避難指示区域だけが縮小していることが、糸数慶子参議院議員(沖縄選挙区)が提出した質問主意書に対する安倍晋三内閣総理大臣の答弁書で明らかになった。

同質問主意書は、原子力災害対策特別措置法で公示するよう定めている以下3点の変化を尋ねたもので、次の様なことが分かった。

・「原子力緊急事態の概要」について

「原子力緊急事態の概要」とは、「既に発生した事故そのものを表現し(略)、現在まで、変更はされていない」。つまり、事態発生の日時(2011年3月11日16時36分)と発生場所(東京電力株式会社福島第一原子力発電所)が記されているのみだ。

・「緊急事態応急対策を実施すべき区域」について

「緊急事態応急対策を実施すべき区域」は、2017年2月3日現在までに、「南相馬市の一部の区域、川俣町の一部の区域、富岡町、大熊町、双葉町及び浪江町の区域、葛尾村の一部の区域並びに飯舘村の区域」に変化した。

質問主意書で問われた変化の「理由と根拠」については、「現在までに空間放射線量が低減する等」と概念で答弁、「避難指示の解除等に併せて」、緊急事態宣言の「区域の見直しを行い、公示している」とした。

なお、「緊急事態応急対策」とは同法で、「原子力緊急事態解除宣言があるまでの間において、原子力災害の拡大の防止を図るため実施すべき応急の対策」と定義されている。

「緊急事態応急対策を実施すべき区域」内の「居住者、滞在者その他の者及び公私の団体(中略)に対し周知させるべき事項」について

周知させるべき事項(2017年2月3日現在)は、川俣町の居住制限区域と避難指示解除準備区域が2017年3月31日午前零時に解除され、その他の避難指示区域は維持されることだとしている。

3点を総じて言えば、「原子力緊急事態宣言の概要」は変化なし。一方、「避難指示の解除等に併せて」「緊急事態応急対策を実施すべき区域」だけが縮小中だ。

専門家の見解

この運用について、1977年から環境放射能の測定を開始し、チェルノブイリ原発事故後、福島第一原発事故後を通じ、2014年に京都大学大学院工学研究科(原子核工学専攻)を退職後も、汚染地域での土壌採取と放射能測定を続けている河野益近氏は、次の様に見解を述べる。

「原子力緊急事態の概要」が、発生した事故と日時のみであるとすれば、「緊急事態応急対策を実施すべき区域」をどのように定めたのか。

本来なら、「緊急事態応急対策を実施すべき区域」は、内閣が事故の状況や汚染の拡がりから判断すべきもので、その根拠となるのが「原子力緊急事態の概要」のはずだ。

ところが、実際は「原子力緊急事態の概要」は、原子力発電所内での事態(事故の発生)だけで、所外で生じた事態が含まれていない。「緊急事態応急対策を実施すべき区域」から外れた多くの区域が、必要な応急対策を受けることなく放置されていたことを意味するのではないか。

一方で、不思議なのは、「緊急事態応急対策を実施すべき区域」に指定されていない区域にまで、除染基準が定められたり、農産物や水産物に対して放射能汚染の基準が定められたことである。

私はこうした対策の根拠こそが、原子力災害対策特別措置法が定めた「原子力緊急事態の概要」であると考える。そして、「原子力緊急事態の概要」が変化することにより、「緊急事態応急対策を実施すべき区域」が変化するものと考えるのが素直だと思う。

今回の政府答弁で、「緊急事態応急対策を実施すべき区域」がドンドン縮小されていることがわかったが、その区域内外で、除染基準も農水産物の基準は残っている。つまり、区域と対策にズレがある。

もし、こうした対策の根拠が、「原子力緊急事態の概要」で示すべき汚染状況とは無関係であるとすれば、避難指示区域を縮小するにあたっての法律根拠はなんなのか。

【関係文書】

■2017年1月24日、糸数慶子参議院議員提出「原子力災害対策特別措置法に基づく原子力緊急事態宣言に関する質問主意書」と「政府答弁

■2016年3月3日、逢坂誠二衆議院議員提出「原子力緊急事態宣言に関する質問主意書」と「政府答弁

■2014年3月27日、柿澤未途衆議院議員提出「原子力災害対策特別措置法に基づく原子力緊急事態宣言の発出に関する質問主意書」と「政府答弁

平成23年3月11日(金)午後 原子力緊急事態宣言について