東電事故由来の「月間降下物」続く

東京電力本社におけるテレビ会見画像(2016年8月25日筆者撮影)

「甲状腺がん「地域ごとの詳細なデータ分析が必要」と全摘の男性」を発信したところ、読者からさまざまな情報が寄せられてきた。その一つは未だに続いているフォールアウトのデータである。

原子力規制委員会「都道府県別環境放射能水準調査(月間降下物)(平成25年7月分」より抜粋
原子力規制委員会「都道府県別環境放射能水準調査(月間降下物)(平成25年7月分」より抜粋

原子力規制委員会が「月間降下物」として毎月公表しており、読者がくれたデータは、2013年7月分のまとめだった。見ると、福島県双葉郡では1平方kmあたり268メガ・ベクレル、つまり2億6800万ベクレルが降下したことになる。

原子力規制委員会「都道府県別環境放射能水準調査(月間降下物)(平成28年6月分」より抜粋
原子力規制委員会「都道府県別環境放射能水準調査(月間降下物)(平成28年6月分」より抜粋

そこで最新の2016年6月分を見ると、福島県双葉郡では、3年前よりも多く1平方kmあたり6億5000万ベクレルも降っている。また、フォールアウトする地域は3年前と比べると縮小したが、少なくとも未だに岩手県から神奈川県まで続いている。

「月間降下物」の正体は?

この「月間降下物」とは「降水採取装置により定時降下物を採取し、ゲルマニウム半導体核種分析装置を用いて核種分析調査を行い、自治体に報告を求め」て、原子力規制委員会が公表している。

その汚染源は何で、なぜ増加しているのか、東電はどう考えているのか8月25日の「中長期ロードマップの進捗状況」会見で尋ねることにした。

白井部長代理「追加的な放出量は18万ベクレル/時」

東電は毎月、原子炉建屋から新たに放出される放射性物質を推計して、福島第一原発の敷地境界に1年中立っていたらどの程度、被ばくするかを公表している。中長期ロードマップの進捗状況(概要版)の4/8頁では、2016年7月の値は「0.00025mSv/年」だと発表していた(下図)。これを取っかかりに質問した。

原子炉建屋からの放射性物質の放出 出典 2016年8月25日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第33回事務局会議 資料2
原子炉建屋からの放射性物質の放出 出典 2016年8月25日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第33回事務局会議 資料2

筆者の質問に答えたのは白井功原子力・立地本部長代理だった。

まず、原子炉建屋から新たに放出される放射性物質として、「原子炉建屋上部でダストを計測して、発電所の建屋の排気をするときの排気の出口でのダストを計測して、トータルの計測量ということで報告をさせていただいています。今月の分は手元にありせんが、5月は追加的な放出量として18万ベクレル/時といった評価の結果を出しています」とし、その結果が先述の4/8頁だと回答した。

この元のデータである「原子炉建屋からの追加的放出量の評価結果」は毎月公表されており、最新の2016年7月分を見ると、白井部長代理が述べた5月の毎時18万ベクレルより下がり、計毎時約3万ベクレルだ(下表)。これは、24時間30日で計算すれば、月に2000万ベクレルが新たに放出されている計算だ。

出典:原子炉建屋からの追加的放出量の評価結果(2016年7月)
出典:原子炉建屋からの追加的放出量の評価結果(2016年7月)

岡村部長代理「放出管理の目標値はクリア」

この点について、会見後に岡村祐一・部長代理に聞くと、「事故前から法律で定められている放出管理の目標値はクリアしている」とは言う。その目標値とは、毎時1000万ベクレルである。5年にもわたって毎日、毎時、出続けることが想定されていた目標値だとすれば、そのこと自体に首を傾げざるを得ない目標値ではある。

出典:原子炉建屋からの追加的放出量の評価結果(2016年7月)
出典:原子炉建屋からの追加的放出量の評価結果(2016年7月)

白井部長代理「舞い上がりがほとんど」

ダストサンプリング用機材(水盤)出典・撮影:東電(2011年8月22)
ダストサンプリング用機材(水盤)出典・撮影:東電(2011年8月22)

会見中に白井部長代理はこうも回答した。

「いろいろな場所で水盤等を使って、中にどれぐらい入ってきているかといった評価をしているということは存じていますけど、当社としては申し訳ありませんが、一つひとつ等の確認はできていません」

「すでに放出されたものが、舞い上がってそれが水盤等に入ってくるということになりますので、発電所から出たものが新たに出てそれが検出されているというものだけのものではなくて、以前に落ちたものが風等で舞い上がって、水盤などでフォールアウトとして評価されているものが多々ある。そういったものがほとんどであるというふうに予想されます」

ちなみに、1時間18万ベクレル放出している計算で、福島県で月6億5000万ベクレル、神奈川で月22万ベクレルといった収支が合うか計算してみていただけないかと会見で要望してみたが、「非常に困難で不可能」なのでご要望として受けかねるとの即答があった。

事故後6年目も続く舞い上がり

そこで単純計算をすることにした。18万ベクレル×24時間×30日で計算をすると、東京電力福島第一原発からの放出量は月に1億2960万ベクレルとなる。

他県で検出されている降下物を端数として切り捨て、もしも福島県双葉郡(865.7平方km)全体に一律に月6億5000万ベクレル/平方kmが降下すると計算すれば、5600億ベクレル以上が舞い上がり、再汚染が起きていることなる。

福島第一原発から月に1億ベクレル程度が出ていることが正しいとすれば、「舞い上がりがほとんど」だという白井部長代理説は正しいことになる。

一方、福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは、敷地外で今も起きているフォールアウトについての質問であることを理解できていない様子で、「今のプラントから出しているものということで考えると、さきほど申し上げた敷地境界で液体、固体、気体、合わせて1ミリシーベルト(*)というのが、我々のその、皆さんに与えている影響という認識です」と回答した。(*未満の意味と思われる。)

そこで、筆者は「月間降下物ということで原子力規制委員会が公表している資料を見ると、3年前よりもむしろ増えている。その汚染原因というのは、なんなんだろうか、ということを聞きたい」と再質問。

中央が増田尚宏プレジデント(筆者撮影)
中央が増田尚宏プレジデント(筆者撮影)

すると、増田氏は、「多分、理解ができていないと思いますので、我々の方で勉強します」と述べた。

各都県と国がまとめる「月間降下物」データが間違っているとも思えない。そして、東電による放出量評価もまた正しいのだとすれば、事故から5年が過ぎても、内部被ばくの原因となる汚染物質が、福島県内外で舞い上がり、降下し続けていることを意味してしまう。

安倍首相をはじめとする政府は、来年3月末までに避難指示を解除する地域を広げる帰還政策を進めているが、少なくとも舞い上がりによる再汚染の実態を福島第一原発のトップと同様、勉強すべきである。そして帰還に伴うリスクを考えてみるべきだ。

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