発足から2年 川内原発審査プロセスに見る原子力「寄生」委員会ぶり

発足後2年で形骸化か? 2012年9月19日筆者撮影

9月10日、原子力規制委員会は、九州電力の川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)に関わる1万7819件のパブコメを整理した原子力規制庁の説明に沿って、その設置変更申請を許可すると決定した。同委員会はすでに7月16日に、その1、2号炉が新基準に適合するとの審査結果を出していたため、結論が変わらなくても驚きではない。

驚いたのは原子力規制委員会の「原子力規制庁」への「寄生」ぶりである。8月15日までに寄せられた1万7819件パブコメを整理して13頁に凝縮したのは「原子力規制庁」である。意見に対する原子力規制委員会としての「考え方」(案)を作ったのも「原子力規制庁」。審査書類を修正して1125頁もの資料を用意したのも「原子力規制庁」である。

ここからが原子力規制委員会の仕事のはずだった。ところが全くそうではなかった。原子力規制庁の市村知也・安全規制管理官(PWR担当)が説明した中からコアキャッチャーを例に挙げて説明する

コアキャッチャーに代わる機能とは?

コアキャッチャーとは、過酷事故でメルトダウンが起きることを前提に、格納容器の下部に取り付けて、メルトスルーが起きないようにする設備である。テレ朝の報道ステーションが欧州の事例を紹介して広く知られるようになった。

寄せられた意見には、(1)「コアキャッチャー」を付けることを求めない原子力規制委員会の新基準自体の不備を指摘するものと、(2)九州電力がコアキャッチャーを設置しないことについて不適切であるとする双方の指摘があった。

これについて、「5ページをごらん下さい」と説明した市村管理官による考え方案は、「新基準では(特定の設備ではなく)機能を求めているので(コアキャッチャーがなくても)問題ない」というものだった。「規制要求を満たすのであれば、ご指摘の設備に限らず、他の方法でも問題ありません」というのである。

ただ、川内原発がその機能をどう果たすのかという説明もない。それもそのはず、寄せられた意見の通り、「新基準」自体がメルトダウンを前提としていないからだ。「新基準」は正式名称を「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」と言う。これには「基準に関する規則の解釈」なるものがセットで定められている。

「格納容器への下部注水」という妄想に基づいた曲解

まず、規則第37条(重大事故等の拡大の防止等)では「炉心の著しい損傷を防止する」ために必要な措置が求められている。つまりメルトダウンを防止できることが基本的には前提だ。しかしその次にどうするかは定められていない。

東京電力の福島第一原発では、メルトダウンが起きて、そのままメルトスルーして、今や炉心がどこへ行ってしまったのか分からないまま、高濃度汚染水が海へ垂れ流され、汚水タンクが増加し続けている状況を引き起こしているのにである

次に、「基準に関する規則の解釈」だが「規則」に毛を生やした存在なので、「溶融炉心による侵食によって、原子炉格納容器の構造部材の支持機能が喪失しないこと」と「溶融炉心が適切に冷却されること」(第37条2-3(i))と、やはりメルトダウン防止が前提だ。

これに対し、市村管理官が示した考え方案は、メルトダウンした場合は、「格納容器への下部注水により溶融炉心・コンクリート相互作用を抑制し、格納容器破損を防止するとしており、その有効性を確認しています」というもので、九州電力の願望を鵜呑みにしただけでなく、「有効性」を誰がどう確認したのか説明もなかった上に、審査書には記載もない。

しかし、繰り返すが、福島第一原発では、「格納容器への下部注水」などコントロール不能に陥っており、繰り返してはならない愚策である。

誰も審査しなかった?

市村管理官の説明が終わると、田中俊一委員長は「審査にあたっていただいた島崎委員と更田委員」にコメントを求めたのである(余談ながら、筆者思うに「いただいた」ではなく「くださった」と言うべきところ)。つまり、他の3人は審査しなかったことを暗に述べている。島崎委員は「すべてに目を通したわけではない」が、「今後の審査に役に立つ」との感想を述べ、更田委員は、何かの解析方法についての原子力規制庁の誤解を指摘しただけで終わってしまった。

次に田中委員長が「ついでに」というノリで大島委員の意見を尋ねると、大島委員は「膨大な数のパブコメが寄せられた」「国民の皆さんは極めて強いセンシティビティをお持ちなのだろう」「一つひとつに丁寧に審査して事務局が準備しれくれた」と他人事である。そして、「さらにもう一歩踏み込んだらどうか。具体的な提案、安全基準の変更を求めるものも含まれている。安全確認に終わりはない。反映すべきものも中長期的に見ればあるんだろうと思うことが気になります」と感想を言って終わった。どこまでも誰か他に仕事をしてくれる人がいるかような言いっぷりだ。

最後に田中委員長が「中村委員もちょこっとお願いします」と促すと、中村委員は「審査書に対するコメントというより、科学的な論文のレビューをすると考えた場合」とたとえて言いながら、原子力規制庁がパブコメに対して「どういう形で答えているかを見させていただいた。自分の専門とするものに対して、こちらの事務局、規制庁は科学的な判断をしていると判断をしました」と学会の論文審査手法で、原発の再稼働を審査したことを明かした。

安全神話にNOと言わない委員たち

誰1人、「コアキャッチャー」に代わる「機能」も不在でも違反とはならない<安全神話>が前提の「規則」や「規則の解釈」であることを見直そうと言わない。それ以前にメルトダウンした状態で格納容器へ下部注水するという九州電力の妄想を妄想と認識した発言がない。「安全基準の変更を求めるものも含まれている」「反映すべきものも中長期的に見ればある」と言った大島委員も、具体的にそれと結びつけては言及しなかった。

コアキャッチャーに限らず、委員たちが「審査」と考えるものは、このようにして終わった。

感想が一巡し、田中委員長が「この審査書で了承するということでいいでしょうか」と言うと、「許可に賛成です」(島崎邦彦委員)、「私も賛成します」(更田豊志委員)、「1号および2号について許可をいたします」(中村佳代子委員)、「異存ありません」(大島賢三委員)とそれぞれが言い放って決定した。

原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、2012年9月19日に独立した独立委員会として発足した。どこかの官庁の「お墨付き機関」と揶揄される「審議会」とは一線を画した「規制」者である。

しかし、川内原発の審査は実質、密室のランチミーティングで開始されたのを始め、何から何まで官僚にお膳立てをしてもらってヨキニハカラエという従来の審議会とさほど変わらない。

これでは、原子力規制委員会ならぬ原子力規制庁「寄生」委員会(*)である。原子力規制委員会の各委員にスーパーマンとなれとは期待しない。得手不得手のある人間の集まりに過ぎない。しかし、少なくとも、常識で考えて、福島第一原発で起きたことが防げるのかどうかぐらいは考えられる常識人であって欲しい。そう思うのは高望みし過ぎなのか?

(*)通常は原子力規制委員会のウェブサイトから中継を見られるはずだが、今日は「Youtube側の原因で中継できない」(原子力規制委員会広報部)とのことでニコニコ動画を見ていると、画面を「原子力寄生委員会」との視聴者によるコメント文字が横切った。「言い得て妙!」だと思い、タイトルに使わせていただいた。