親が死んだら、収入のない子はどうなるのか?「8050問題」で事例検討

12月2日に都内で開かれた第1回OSDよりそいネットワーク(筆者撮影)

 親が死んだら、残された子はどうなるのか?――収入のない子と親の高齢化が進み、親子が80代(70代)と50代(40代)になって突然、煮詰まる「8050(7040)問題」が最近、注目されている。

 そんな「親子共倒れ」を懸念する家族の切実な声が増えてきたことから、親が元気なうちに、様々な立場の専門家と一緒に具体的な相談事例を検討しようと、ひきこもり家族団体の「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」は、新たに一般社団法人「OSDよりそいネットワーク」(池田佳世理事長)を発足させた。

 OSDとは、「(O)親が、(S)死んだら、(D)どうしよう?」の略。社会福祉士、産業カウンセラー、行政書士、不動産コンサルタント、司法書士、不動産鑑定士、一級建築士、税理士、保険・FP、CFPといった専門家が無報酬で「OSDよりそいネットワーク」をつくり、具体的に直面しているケースごとに、できることを一緒に考えていく。

 12月2日に開かれた第1回ネットワークのパネルディスカッションでは、8人の専門家が登壇。親亡き後に備え、事前にできることは何なのか。兄弟姉妹は家を出て独立し、年老いた両親と残された収入のない子どもが生活する一般的な家庭の事例について、様々な専門家の立場からの検討が行われた。

 不動産鑑定士の馬場佳子さんは「今所有している不動産の価値を知った上で、残せばいいということではなく、子どもの思いを確認してほしい」と話す。

 保険・FPの丸山拓児さんは「保険金は受取人固有の分割済みの財産。相続が発生すると金融機関の口座は凍結されますが、すぐに現金化できて生活費に使える。相続税の非課税枠もある」とメリットを説明する。

 しかし、たとえ財産を残せたとしても、管理できるのかという問題もある。

 コーディネーターを務めた司法書士・行政書士の元木翼さんは「後見制度は、専門職が選任されればコストがかかるし、誰がなるかわからない。本人が亡くなるまで財産管理が続くことになる。事前に任意後見を準備しておいたほうがいい」と注意を呼びかける。

 信頼する家族に財産管理を託す家族信託という方法もある。

 また、親亡き後の子どもの住まいと収入の確保について、一級建築士の吉田正志氏は、「自宅等を賃貸マンションに建て替えることで収益を得る方法がある。建て替えの資金調達に、リバースモーゲージの制度を使うのも選択肢の1つ」とアドバイスする

 リバースモーゲージとは、不動産を持っていれば、一軒家の持ち家に住み続けながら金融機関からお金を借りられる制度だ。

 馬場さんは「社会福祉協議会などの公的機関なら、生活困窮者向けにマンションでも借りることができます」と補足する。

  吉田さんによると、相続税対策としても、賃貸用の建物を建てることによって相続税評価額を下げることができるという。

 1人っ子の40代長男は、大学卒業後、大手企業に入ったが、職場になじめずに離職し、ここ10年余りは外との交流がない。自宅の評価額は6千万円だが、父親も高齢で、貯金は少なく、日々の生活が厳しくなった。そんな事例では、当事者へのサポートや家のメンテナンス、住み替え、生命保険の見直し、公正証書遺言、家族信託など、チームの強みとして、1つの窓口で相談に乗れることも紹介された。

 不動産や相続、遺品整理といった問題は、ふだん関わることのない領域。元木さんは「それらがどうなっているのか、ご相談に乗ってあげられただけでも、お父様は安心されていた」と話す。

 第2回ネットワークは、2018年1月8日の午後、豊島区生活産業プラザ(エコとしま)で開催され、引き続いて事例検討のパネルディスカッションが行われる。

 一方、ひきこもる当事者の目線から考えようという「親の老化や死後について情報や感情を共有するひきこもり当事者たちのミーティング(ひ老会)」も、第2回が1月20日の午後2時から、東京都練馬区内で開催される。

「根っこにあるのは、お金でなく気持ち。元気なうちに、まともに子に向き合って欲しい」

 当事者たちは、そう口々に訴える。

 2018年は、「8050」時代の家族クライシスに備えて、多方面からの事例検討が本格化しそうだ。