ひきこもり経験者だから語れる世界がある。もうひとつの当事者メディア「ひきポス」“爆誕”

第2回ひきポス編集会議。右端が石崎編集長(12月23日、都内で)筆者撮影

 ひきこもり経験者だから語れる世界がある。そんな当事者メディアが新たに誕生した。

「ひきこもり新聞」の実務を担っていたメンバーたちが独立し、「生きづらさ」をテーマに据えた新しいメディア「HIKIPOS」(ひきポス)を創刊したのだ。「ひきポス」では、すでにWEB版を公開していて、冊子版も2018年2月に出版する。

「ひきポス」は、ひきこもり当事者や経験者の生の声を発信する情報発信メディアだ。メンバー全員がひきこもり当事者や経験者によって運営され、毎月開かれる編集会議で記事のアイデアを練ることにしている。

「ひきポス」編集長には「ひきこもり新聞」で副編集長を務めていた石崎森人氏が就任。他の主要メンバーも、これまで同新聞の制作に関わってきた。

 ネーミングの由来は、「ハフィントンポスト」や「ワシントンポスト」からヒントを得て皆で決めたそうで、「ひきこもりという言葉の定義に左右されたくない。いろいろフォーカスできるように、広がりあるイメージにしたかった」という。

「生きづらさ」という括りでつながり、お互いの存在は意識し合って、自分を出さなくてもいい。そうした緩やかな「ひきこもりクラスタ」のような関係の構築を目指すことで、「ひきポス」は、「メディアのひきこもり像を払拭したい」をコンセプトに掲げた「ひきこもり新聞」との違いを打ち出そうとしているのだろう。

「ひきこもり新聞」の木村ナオヒロ編集長が切り開き、牽引してきた当事者発信の時代の流れは、今や爆発的にすそ野を広げつつある。

 WEB版には12月26日現在、『ひきこもりは終わらない~「ふつう」に見える当事者たち~』や『減点法で長所を潰さない。ひきこもり当事者の長所を活かす、”ニュータイプ”の企業が誕生』など、7本の記事がアップされている。

 中でも、『ここがちがう 日本とイタリアのひきこもり』という記事では、ひきこもり当事者の編集スタッフが、世界に目を向け、イタリアの社会心理学者マルコ・クレパルディ氏の「ひきこもりは、日本だけに見られる現象ではなく、世界の先進国すべてに関係している」という持論を発見し、翻訳、紹介してみせた。

「純文学の代表である芥川龍之介や、太宰治も生きづらさ当事者でした。その彼らが残した作品は、今でも多くの人たちの心に響いています。それと同じように、当事者の持つ癒やしの力は計り知れない可能性を持っています」

 経験者が言葉にしていくことの価値や強みを、石崎編集長は、そう説明する。

 2018年2月15日には、冊子版でも、18ページの創刊号を発売する予定で、今後、3カ月ごとの発行を目指す。

 これによって、2つの当事者性を持ったメディアが誕生することとなり、読者にも発信する側にも、当事者媒体を選べる時代がやって来た。