「本人が自覚していないと周りが振り回される」「事務作業が苦手」大人の発達障害当事者会で見えた課題

初めて開催された発達障害当事者会フォーラム(7月17日、東京都北区で)

 「大人の発達障害」の当事者主体では初めての「発達障害当事者会フォーラム」が、7月17日に都内で開催され、約230人が参加した。

 当事者主体のフォーラムには珍しく、超党派の国会議員でつくる「発達障害の支援を考える国会議員連盟」事務局長の高木美智代衆院議員(公明党)も駆けつけ、「発達障害があるかもしれないと気づいてから、ライフステージに応じた支援で連携していく」ことの重要性を訴えた。

 19の支援団体などが加盟する、一般社団法人「日本発達障害ネットワーク」の市川宏伸理事長も「人口の1割近くいる発達障害のことがまだあまり知られていない。まず当事者が団結して声を上げるべき」などと指摘した。

 とはいえ、今回の主催者である「発達障害当事者協会」が発足してから2年。発達障害の当事者ならではの紆余曲折を経て、協力する当事者団体も「4分裂」状況にある中、ようやく開催にこぎつけたという。

 実際、フォーラムでは進行上で、上手くいっていない感じもいくつか垣間見られた。そうした課題をあえて参加者に見える形で話し合えて、結果的に行き詰る。そんな実態を見ていると、未来思考の必要性が伝わってくる。

 第1部では、全国の当事者会に質問票を送付した一般社団法人「発達・精神サポートネットワーク」(川島美由紀代表理事)の

調査結果

出典:https://news.yahoo.co.jp/byline/masakiikegami/20170705-00072937/

が報告された。

 調査を取りまとめた東京大学社会科学研究所の御旅屋達助教によると、意外なことに、当事者会に必要な支援について、就労支援は十分に行われているものの、居場所的な支援はあまり行われていないという。

 地域によって、「大人の発達障害」支援に対する温度差も感じられた。

学会行くと、発達障害は大人気

 こうした報告を受け、第2部では、調査に協力した当事者団体のうち、関東地区にある12団体の代表が発言した。

「周囲の人たちの理解が得られない。できにくかったりするだけで、ふざけてるんじゃないかと受け取られる」

「職場で自分の障害をオープンにするべきか、隠したまま勤務するほうがいいのか、悩んでいる」

 そんな一般の人の知らない日常生活における生きづらさや、人には言えない苦しみなどの生の声が交わされた。

 各地での当事者会の運営については。

「交通機関で人から見られるのを気にして、なかなか集まれない現状がある」

「財政的な問題があって、個人の持ち出しでは続かない。体力面、経済面、メンタル面などを抱える中で、ボランティアで運営を継続するのは難しい」

 といったように、継続の難しさを指摘する声が上がると、うなずく参加者の姿が多く見られた。

「事務作業が苦手。マニュアル化、手順化を進めて、誰でもできることを集約している」

「地方ではITが使えないと、つながることも難しい。ファシリテーターやピアサポーター養成講座などを開催することで、地域で当事者会を始めたいと思っている人たちのコミュニティになると思う」

そんな工夫も共有された。一方で、

「運営を手伝ってくれた人から2年にわたってネットで中傷を受けた。直接、指摘すると“事実を書いているだけだから”と言われ、認知をどうしても変えられない。会を閉じるしかなかった。本人が障害特性を自覚していないと周りが振り回されてしまう」

などと、大小様々な当事者特性の人たちがいる中で、自分で客観的にわかっていないことが、会をつぶしていくこともあるという悩みも明かされた。

「主催者の機嫌を損ねて居場所が減ることを防ぐためにも、対等な立場での紛争調停機関や第3者機関の設立、運営側が対応不能と判断した当事者へのフォローや他への紹介などもお願いしたい」

 周囲の人たちに対して、つなぐ側のフォローアップやサポートの窓口を求める意見も出された。

 参加者席でやりとりを聞いていた診療所の開業医も発言を求められ、、「学会に行くと、発達障害のシンポジウムは大人気。どこも立ち見が出るほど若い医師が勉強している。ところが、こうした生の当事者の声を全然聞いていない」と指摘した。

 大分で発達障害当事者会をつくっている詫磨一紫さん(36歳)は、どこの状況も変わらないんだと感じつつ、

「あれだけ生き生きと話されていると、ああ、自分も頑張ろうって、勇気をもらえる」

 という希望も大分に持ち帰りたいと語った。

当事者の声がこれからの制度を変えていく

 自らも精神疾患の経験を持ち、当事者や家族と一緒に各地でピアサポート養成講座を開いている聖学院大学人間福祉学部の相川章子教授は、調査報告後の講演で「当事者の声が、これからの支援や政治、制度を変えていく」と訴え、こう指摘した。

「1人の声だと聞いてもらえなくても、集団になれば誰かが聞いてくれる。自分と同じような経験の語りを聞くことで、私もできるかもしれないという希望を得る。明日のことなど考えたくもなかった人たちが集まって、未来を描ける。コミュニティインクルージョン(地域包摂)とダイバシティー(多様性)の架け橋が、ピアサポートなのです」

 様々な大小の特性によって、いろいろなことができなくてトラブルにもなる。それでも生きていくしかない。

 今回のフォーラムは、当事者が自分たちの拠り所をつくったと社会に提案していくためのプラットホームだ。

 偶然ながら、専門家や支援者が違うセクターで出会う。そんな奇跡のような場になっている。

 しかも、敢えて課題を見せる形で、催しを開催したことだけでも意義がある。そして、それを実現できた背景には、トラブルがあっても諦めない当事者たちの思いがあった。