都知事選の争点「築地市場の豊洲移転」を巡って進む土壌汚染裁判の行方

2007年2月頃の豊洲新市場予定地。基準値4万倍以上のベンゼンなどが検出された

11月7日の新市場開場を間近に控え、築地市場の移転問題が、再び都知事選の争点として注目され、メディアでも連日報道されている。

この問題は、築地が生鮮食品を扱う市場であるにもかかわらず、東京都が移転先に決めた江東区豊洲の新市場予定地が東京ガスの製造工場跡地だったことから、発がん性物質のベンゼンなどによる土壌や地下水への汚染の実態が次々に表面化した。

また、2020年の東京五輪に間に合わせるための環状2号線工事完了から逆算して、繁盛期の11月に開場日が設定されたことから、多くの仲卸業者が反発。ここにきて、新市場施設の床積載荷重の不備などの構造的な欠陥も浮き彫りになった。

筆者は2004年頃から、この築地市場移転問題を取材してきた。ところが、あれから10年以上経っても、当時の土壌汚染問題がいまだに解決していないことに驚かされる。

当時の石原慎太郎知事ら10数人を証人申請

そんな中で、豊洲新市場の土壌汚染を巡って、裁判が進んでいることは、メディアの間でさえあまり知られていない。

この裁判は、2010年1月に朝日新聞が調査報道で1面スクープした「汚染処理費用は都だけが負担。東京ガスに負担義務はない」という記事を知り、仲卸業者らが「都知事らは重大な汚染の残存を知っていながら、翌11年に土壌汚染を考慮しない高い価格で土地を購入し、都民に損害を与えた」と訴えているものだ。

6月9日に東京地裁で開かれた弁論では、今後の証人尋問に対し、被告の都側が、当時の合意に署名し、2011年土地購入の経緯を知るという担当者2人を証人申請した。

一方の原告側は、2011年当時の石原慎太郎都知事をはじめ、都の知事本局長から東京ガス執行役員を経て2014年に練馬区長に就いた前川燿男氏、土壌汚染の存在が土地価格に与える影響について立証するために不動産鑑定士の釼持一郎氏ら10数名の証人尋問を申請している。

被告の都は、「東京ガス等は行うべき行為をすべて行っており、都が法令を上回る土壌汚染対策計画を策定した際の費用の一部の負担にも応じた経緯などから、土壌汚染を考慮しない価格で買い受けた行為は何ら違法ではなく、裁量の範囲である」などとして、請求の棄却を求めている。

「都民を騙す押し売り商法」

仲卸従業員の東京中央市場労働組合委員長の中澤誠氏は、こう指摘する。

「土壌汚染対策法も、汚染されて誰も買ってくれない土地をどうやって行政に売りつけるか…の発想から生まれた話だと思う。だから“法律通りにやっている”が錦の御旗になる。しかも、汚染対策工事後、本当にきれいになったのかどうかも検証しないまま、施設を建ててしまった。このような都民を騙す“押し売り商法”は、見えないように日本中で行われているのではないか」

この新市場問題は、都知事選の争点にもなったことで、11月7日に予定されている開場日も一旦、延期になる可能性が現実的になってきた。延期ということになれば、裁判にも大きく影響してくるだろう。

東京五輪という名目のゴールを焦るあまり、形だけを取り繕ってきたツケが、気づかないうちに当事者である仲卸業者や都民に押し付けられていく。裁判は、そんな都のブラックボックスの象徴的な構図の1つを明らかにしているのではないか。

次回は、9月8日に口頭弁論が開かれ、早ければ年内に証人尋問が行われる。