世界一健康なのに『自分は不健康だ』と思う日本人 ~OECDデータが示す日本の現状は

Health at a Glance 2019より引用

「日本は世界で最も平均寿命が長いなど、健康状態において優れた指標を多く有している。それでも多くの国民が健康に関して悲観的である」

去年11月、OECD(経済協力開発機構)が、医療・健康に関するデータを国際的に比較したレポートを発表しました。冒頭の文は、日本の特徴として指摘された内容です。わかりやすく言えば、「日本は世界的に見て健康的な人が多いのに、『自分は不健康だ』と思っている人が多い」というのです。

世界トップレベルに健康なのに、「自分の健康状態」に自信がない日本人

実際にデータを見てみましょう。

このレポートでは、「健康状態」を評価するのに、4つの指標を比較しています。

1)平均寿命

2)回避可能な死亡率

3)慢性疾患の罹患(発生)率

4)健康状態の自己評価

まず1)「平均寿命」に関して、日本は84.2歳と、比較されたOECD諸国のなかでは世界最長でした。

また2)「回避可能な死亡率」とは、簡単に言えば「医療サービスがきちんと機能していれば避けられた病気などによって亡くなった人の多さ」ですが、日本はOECD平均(10万人当たり208人)よりかなり少なく(10万人当たり138人)、この点でも世界トップクラスの成績を挙げています。

そして3)慢性疾患の罹患率(高血圧、糖尿病などに新しくなる人の率)もOECD平均(6.4%)に対し5.7%と低くなっています。

なお、このレポートでは喫煙・飲酒・肥満・大気汚染など「病気を引き起こすような危険因子」についても国際比較しています。その結果、日本はすべてにおいてOECD平均を下回りました(喫煙率だけは平均とほぼ同じ)。

特に、肥満率については平均が55.6%なのに対し、25.6%とはるかに低く、世界で最良の成績となっています。

こうしたデータからは、日本人は「世界でトップレベルの健康状態」にあると言えそうです。

それにもかかわらず、世界で有数の悪い結果が出たのが4)「健康状態の自己評価」についてでした。多くの人に「あなたは、ご自分の健康状態についてどう感じていますか?」というような質問を行い、その回答を国際的に比較した結果です。

下図は、「良い」「とても良い」と答えた人の割合です。

自分の健康状態が「良い」「とても良い」と答えた人の割合 赤丸が日本(筆者追加) Health at a Glance 2019より 
自分の健康状態が「良い」「とても良い」と答えた人の割合 赤丸が日本(筆者追加) Health at a Glance 2019より 

35か国の平均では68.1%の人が「良い」「とても良い」と答えました。最も高いカナダやアメリカでは、その割合は90%近くにのぼっていました(※1)。

一方で日本は35.5%で、35か国中、韓国についで低い結果でした。

続いて、自分の健康状態が「悪い」「とても悪い」と答えた人の割合です。

自分の健康状態が「悪い」「とても悪い」と答えた人の割合 赤丸が日本(筆者追加) Health at a Glance 2019より
自分の健康状態が「悪い」「とても悪い」と答えた人の割合 赤丸が日本(筆者追加) Health at a Glance 2019より

平均が8.7%に対し、日本は14.1%とずいぶん多いことがわかります。日本人は、自分の健康状態を「悪い」と思っている人が多いということは言えそうです。

画像:Pixabay
画像:Pixabay

国際的な位置づけを知っておくことの大切さ

なぜ、このような結果になったのでしょうか?OECDのレポートが指摘しているのは、言語・文化的な影響です。日本では伝統的に、礼節を重んじ謙遜することが美徳とされる傾向があると言われますが、そうした文化的な背景があるのかもしれません。

とはいえ、それを割り引いて考えたとしても、せっかく世界有数の「健康優良国」でありながら、国民自身は自分を「不健康だ」と考えているのは、少し不思議な状態ではないでしょうか。

もちろん、自己の健康評価が低いことが、生活習慣の改善や早期受診のモチベーションとなり、健康状態をより良く保つことにつながっている可能性も否定できません。

しかし自分が不健康だと思っていると、特に必要がないときでも「念のため医療機関に行っておこう」と考えたり、「大事をとって入院させてください」というような要望が働きがちになったりするのでは、とも思ってしまいます。

メディアの記事やSNSなどの投稿で「日本の医療の○○は遅れている」「日本人の健康寿命は短い」というような情報を目にすることがあるかもしれません。一方で今回のような、日本の医療や健康の状況が国際的に高く評価されていることを指摘するニュースを目にすることは少ない気がします(筆者だけかもしれませんが)。

もちろん個別に見た場合、改善すべき点がたくさんあることは間違いないでしょうし、少子高齢化の中で現状の医療・介護システムの持続可能性は危ぶまれています。その点を指摘するのは大切なことです。

しかし現状を全体的に見た場合、日本人の健康状態は「世界トップクラス」であり、医療や介護に関するシステムも高く評価されています(※2)。

「日本スゴイ」と短絡的に喜ぶのは意味がないことですが、医療や健康に関する政策やニュースを冷静に評価するためにも、データから見る日本の位置づけについては知っておいて良いのかもしれません。

※ご紹介したレポートは、概略が日本語で公開されています。興味がある方は読んでみてください。

図表でみる医療 2019 日本(Health at a Glance 2019: OECD Indicators)

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※1 アメリカやカナダで自分の健康状態を高く評価する人が多かった理由として、調査方法の違いも指摘されています。多くの国では、「あなたの健康状態は」という質問に対し、「とても良い、良い、ふつう、悪い、とても悪い」という選択肢で聞いていますが、アメリカやカナダなどは「素晴らしい、とても良い、良い、ふつう、悪い」という選択肢で質問しています。この場合、「とても良い」「良い」が多くなりやすいと推測できます。

※2 OECDのレポートでは、日本の医療の状況について「医療へのアクセスは堅調であり、公的財源によって支払われる医療費はOECD諸国内で3番目に高い。医療の質も全般的に高く、例えば、脳卒中後の30日死亡率は2番目に低く、様々ながんの5年生存率も高く、慢性疾患による回避可能な入院率も低い。」と評価しています。

また介護の状況については「介護従事者が比較的多いことや、その教育レベルが高いことから(OECDにおいて、高齢者人口あたりの介護従事者数は9番目に多く、高学歴の介護従事者の割合は4番目に高い)、介護サービスへのアクセスは良く、質は高いことが示唆される。」と評価しています。

【参考資料】

Health at a Glance 2019 OECD Indicators

Published on November 07, 2019