日本人は「妊娠」について知らなさすぎ?国際調査が示すものは

Bunting L, et al.(2013)より

いきなりですが、問題です

以下の文章は、正しいでしょうか?

〇か×かでお答えください

  1. 女性の妊娠能力が低下するのは40代から
  2. 性感染症は不妊のリスクになる
  3. 喫煙は妊娠能力と関係がない

正解は・・・

1)× 2)〇 3)×

※女性の妊娠率は30代から緩やかな低下が始まる、性感染症は不妊のリスクになる、喫煙習慣により妊娠率は低下する

いかがでしたか?「簡単だよ」と思われた方が多いかもしれません。しかし意外にも上記の質問、間違った知識を持っている人が少なくないんです。

例えば過去の調査では、将来妊娠を希望する34歳以下の未婚女性の約7割が「 女性の妊娠能力が低下するのは40代から」と回答したと報告されています。

「妊娠力の知識」が世界最低レベルの日本

いま世界でFertility Knowledge(妊娠能力の知識)という概念が注目されています。Fertilityとは「妊孕性(にんようせい)」とも訳されますが、要は「妊娠する能力・妊娠しやすさ」という意味です。

「どんな条件のときに妊娠しやすいのか」という知識が広く知られているかどうかが、その国の子どもの生まれやすさと関係しているのではないか?と考えられるようになっているんです。

そんななか最近、気になるデータが発表されました。

Bunting L, et al.(2013)より改変
Bunting L, et al.(2013)より改変

これは、「妊娠能力の知識」について調べた国際調査の結果です。

妊娠を望んでいるカップルに対して、妊娠しやすさに関する13項目の知識(「喫煙や肥満が妊娠のしやすさと関係している」「妊娠能力は年齢とともに下がる」など)を知っているかどうか尋ねました。

その結果、日本人のカップルは、男女ともに36%程度しか答えられませんでした。これは日本と生活レベルが同じような14か国のうちダントツで最下位であり、平均値(64.3%)から見てもかなり低いという結果でした。

この調査からは、国際的に見て多くの日本人は、妊娠について適切な知識を持っていないということが言えそうです。

もしかするとこのことが、日本における少子化のひとつの原因になっているのかもしれません。

「妊娠力」の知識を中学生から 熊本で始まった取り組み

秋月百合(熊本大学教育学部准教授)らの研究グループは、昨年度から、熊本県の中学校1年生向けに「妊娠能力」のことまで含めた性教育の授業を行う取り組みを始めています。

  • 初経があれば、閉経がある
  • 男性は毎日精子を作る機能があり、女性は新たに卵子(原始卵胞)を作る機能はない
  • 女性は加齢とともに妊娠能力が低下していく(男性も年齢とともに徐々に低下するが、個人差がある)
  • 喫煙や不適正体重は妊娠能力のリスク因子である

性教育全般をテーマにした3時間の授業を通じ、上記のような知識が学べるように工夫されています。

性に関する内容は「公の場で語るのは恥ずかしい」というイメージもまだ根強いので、〇×クイズや生徒同士の話し合いなども積極的に組み入れています。

いらすとや
いらすとや

秋月准教授は、過去に不妊治療の現場で勤務した経験や、不妊治療を受ける人のメンタル面を研究してきた経験から「いまの若い人たちが、将来欲しい時に子どもを持つことができるよう、知らなかったで後悔しない人生を送れるよう、正しい知識を持ってほしい」と、この取り組みを始めました。

「ある一時期だけ教育を行うのではなく、たとえば 中学校1年・3年・高校など生徒の成長段階に応じて繰り返し情報を提供することが大事」と話しています。

「性」「妊娠」についてオープンに話し合える社会を

文部科学省も、この問題について何も取り組んでいないわけではありません。2015 年には全高校生向けに、「健やかな生活を送るために」という啓発教材(副読本)が配布されました。

この中の「19.安心して子供を産み育てられる社会に向けて」、「20.健やかな妊娠出産のために」には、妊娠のしやすさと年齢、妊娠や出産に影響を与える因子などについて記載されています。

従来、教育現場では「性」に関する話題は避けられる傾向にあると指摘されることもありましたが、その状況も少しずつ変化してきています。

もちろん、妊娠を望むかどうかは個人の自由です。

しかし誰もがその選択を納得して出来るようにするためにも、「妊娠」や「不妊」に関する知識をもっとオープンに、もっと手軽に得られる場が必要なのではないでしょうか。

いま「少子化」は、今後の日本社会にとって大きなリスクと言われています。妊娠や不妊について「ある一部の人の問題」とするのではなく、私たち一人ひとりが世代を超えてちょっとでも興味を持つことこそが、求められているのかもしれません。

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(参考文献)

秋月百合「妊孕性と学校教育」現代性教育研究ジャーナルNo.64 (2016年7月15日発行) 

Bunting L et al. Fertility knowledge and beliefs about fertility treatment: findings from the International Fertility Decision-making Study. Hum Reprod. 2013 Feb;28(2):385-97.